Grieg 名曲集「北欧の叙情」
(ジョージ・ウェルドン/フィルハーモニア管/ロイヤル・フィル)
Grieg
組曲「ホルベアの時代から」作品40
「二つの悲しき旋律」作品34「胸の痛手」「過ぎた春」
フィルハーモニア管弦楽団
「ノルウェー舞曲」作品35
「抒情組曲」作品54
ロイヤル・フィルハーモニー
ジョージ・ウェルドン
FIC(EMI録音) ANC113 1960/61年録音 900円で購入。
この音源はLP時代からお気に入りでした。正規廉価盤(既に廃盤)、それらの中古盤、いくらでも、何回も見掛けたものです。ワタシにとっては、あたりまえの、フツウの身近に存在する愛聴盤なんです。でも、ネット検索しても(【♪ KechiKechi Classics ♪】+安田さんのサイトが出て来るばかりで)ほとんど入手は難しいらしい。(もう一枚分録音が存在します。バッカウアーのピアノ協奏曲は入手済み)この駅売海賊盤を「なんとかそのCDを譲って下さらぬか」というメールをいただいたことがあって「どこにでもあるでしょう」(図書館でも目撃したし)と、すげない返事をしてしまったことを反省しております。(かと言って、譲るわけには参らぬ)
ウェルドンの録音自体、ほとんど忘れ去られていて、フィルハーモニア管弦楽団創立当初の協奏曲伴奏はともかく、ステレオではHandel 「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」の録音が存在するらしいが、CD化は(おそらく)されていないでしょう。ネット検索の結果(勝手に引用しちゃってごめんなさい)某サイトにて
ホルベアの時代から〜これが音がよくない。テンポ感は悪くないんだけど、とにかく演奏そのものまでガサツに聞こえちゃって なんて悲しくなるような酷評もありました。人それぞれです。「これ、LPから音をとったんじゃないか?」という。LPから音をとると、針がトレースする音その他もろもろの「雑音」を消すために高周波の音をカットしてしまうそうな(デジタル録音の限界もあるらしい)。で、響きが悪くなる。フォルテがつぶれて聞こえるのもそのあたりが原因か
これはそうかも知れない。ま、デジタル録音ではなくて「ディジタル音源化」のことだろうけど。それに「板起こし」でも立派な音質も時にあります。
しかし、(記憶では)LP時代からお気に入りだったんじゃないか。EMIの録音らしい低音不足、奥行き不足、潤い不足(すべてじゃないけど)そんな感じで、久々の確認では”むしろマシ”〜まぁまぁの音(やや高音の強奏にやや濁り有)だと思います。ましてや”演奏そのものまでガサツ”!とは。躍動とニュアンス、シミジミとした懐かしい歌が溢れる良い演奏でございます。間違いない。「サラバンド」の詠嘆(とくにチェロ)には、んもう!ウットリしますよね。そして「アリア」にそっと涙したい。擬バロック・スタイルによる、ユーモラスなリズム感もあちこち楽しめます。
「胸の痛手」「過ぎた春」〜エエ題名だなぁ、旋律もストレートにその意を具現化していて、これほど胸を締め付ける旋律はほかに見当たらない。泣けます。青春の痛みそのもの。二度と帰ってこない若き日を回想するかのような、ひたすら甘美な世界・・・録音はもう少し上質であったら、と思わないでもないが。フィルハーモニア管弦楽団の弦の清涼なる響きを堪能いたしました。
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後半の担当はロイヤル・フィルとなります。管楽器も加わります。「ノルウェー舞曲」は、なかなか元気良くユーモラス(しかし短調で始まる)な作品であって、リズミカルですね。ウェルドンという人、もしかしてリズム感が生き生きとした音楽づくりなのか。イメージとしては「スラヴ舞曲」でして、第2曲「アレグロ・トランクィロ」なんてまさにそんな感じ。中間部に哀切のメロディを配置するところなど、どれもニクい出来上がりでした。ロイヤル・フィルの金管の爆発は、いつもお見事であります。
「叙情組曲」は、再び「胸の痛手」「過ぎた春」系の音楽であって、美しく可憐な旋律が沸き出る「叙情小曲集」の管弦楽編曲版であります。ハープが入って、弦楽合奏に彩りを添えます。(「羊飼いの少年」)「ノルウェー農民の行進曲」はわずか2分弱の作品だけれど、その着実な歩みと木管〜金管に受け渡される爽快な迫力、「夜想曲」はあくまで甘く、「こびとの行進」は怪しげで忙しなく「こびと(Dwarfs)」という特別な意味(地元の人にしか理解できない)があるのかも知れません。それとて、ちゃんと中間部に優しい囁きが入りました。
ああ、これはほんまに楽しい!一枚。 (2005年12月16日)
ウェルドンは1963年に亡くなっています。地味な存在だったので、知っている人は少ないはず。「セラフィム1000シリーズ」のLPは愛聴盤でした。CD時代になっていろいろ聴いてみたのですが、どれもイマイチ、と思っていたところに再会したのがこのCD。出張先の鹿児島で入手。
「ホルベア」は冒頭から、すこぶるいきいきとしたリズム感、清涼感と喜びが爆発したような演奏。けっこうロマンティックな濃い演奏で、ルバートも上手く使って効果的。サラバンドのしみじみとした情感〜まるで深呼吸のような〜も云うことなし。アンサンブルは信じられないくらい優秀。練り上げられた弦の絡み合いは、極上の味わい。
元気が出ます。すがすがしい気持ちにさせてくれます。
「二つの悲しき旋律」は、「胸の痛手」「過ぎた春」という題名だけでジーンときますね。「余命幾ばくもない、薄幸の美少女の物語」みたいな情景が浮かびますね。(マンガの見過ぎ?)題名そのまま、この曲を聴くと「過ぎた春」(この曲、ほんとうにその情景が見える)に「胸の痛手」を感じます。(ワタシの春はもう戻ってこない)弦のみによる、珠玉の美しい旋律。
ていねいに、細部まで思いを込めたアンサンブルの集中力。
「ノルウェー舞曲」における、迫力あるリズム。のびのびとした、爽やかな歌。1961年といえばビーチャムが亡くなった頃のRPOでしょう、POに負けません。ちょっとユーモアも感じさせます。
「叙情組曲」は、ピアノによる叙情小曲集からの編曲。「悲しき旋律」に負けない旋律の魅力。「羊飼いの少年」(弦とハープ)「ノルウェー農民の行進曲」(牧歌的で、澄んで冷えた空気を感じさせる)「夜想曲」(いかにも、想像通りの甘さ)「こびとの行進」(激しさと静けさの対比)の4曲からなっていて、派手さはないがピアノとはひと味違って楽しめます。
グリーグと云えば「ペール・ギュント」とか「ピアノ協奏曲」ばかりでなく、この辺りも注目してほしいですね。なぜか、イギリスには北欧の音楽に造詣の深い指揮者が多くて不思議です。
録音は旧くなって、ちょっと落ちます。少々音も濁ります。もしかしたら、正規盤ではちゃんとした音で鳴っているのかもしれません。でも、もう中古でしか手に入りません。
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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