MUSICA ESPANOLA(アルヘンタ/アンセルメ)


LONDON 422 911-2 Chabrier

狂詩曲「スペイン」

アルヘンタ/ロンドン交響楽団(1957年)

Debussy

管弦楽のための映像〜「イベリア」

アルヘンタ/スイス・ロマンド管弦楽団(1957年)

Ravel

スペイン狂詩曲(1957年?1960年?)
逝ける女王のためのパヴァーヌ(1961年)
道化師朝の歌(1957年?1960年?)
ボレロ(1963年)

アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

LONDON 422 911-2 2枚組のウチの2枚目 $1.98で個人輸入

 バルセロナ・オリンピック(1992年)を記念して編集された2枚組らしく、一枚目にはGlinka、Moszkowski(1854-1925)、Laloとややマニアックな選曲になっているのに対して、2枚目は著名どころが揃っておりました。問題は演奏陣でして、「英DECCAの定番」アンセルメはともかく、アタウルフォ・アルヘンタ(1913-1958)の録音は、LP時代からお気に入りでした。(現役

 誰でも大好き狂詩曲「スペイン」・・・焦らず慌てず、余裕のリズムがウキウキと楽しげで、カタのチカラ抜けてます。天性のリズム感が、聴き手のカラダを自然と揺らせる魅力に溢れております。オーケストラは優秀ですね。(このあとの「イベリア」含め、やや埃っぽいが)音質もそう悪いものではない。「イベリア」は「映像」全曲聴きたいですね。スイス・ロマンド管との組み合わせとはちょっと珍しいと思います。

 カスタネット大活躍「いかにもスペイン!」風の作品であり、アンセルメ(1961年)より直裁な表現でリズムのキレ、アンサンブルの集中力は上かも知れません。(アンセルメが劣る、ということではなく個性の違い)スイス・ロマンド管の淡い水彩画のような響きが、爽やかでした。暑苦しかったり、脂っこかったり、そんな味わいとは無縁の味わい、これはこれで存分に楽しませていただきました。

 ここ最近、”Ravel 再発見!”状態続いてます。クリュイタンスをリファレンス(参照の基準)としつつ、ポール・パレー、モントゥー、ミュンシュ、そして御大ブーレーズと楽しんできたが、最近の成果は(やや当たり前過ぎるが)シャルル・デュトワ(1980年代)の驚くべき完成度か。その師匠筋であるエルネスト・アンセルメとはずいぶん長いつきあい・・・

Ravel 「ボレロ」〜ワタシの原点は17cmLPで聴いたアンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1963年)。当時(小学生の時)は、途中で裏返したもんですよ。懐かしい。

ワタシは、彼のBeethoven やらBrahms を特別に称揚するつもりもないが(Brahms はまったく未聴)、少なくとも定評あるフランスもの、ロシアものにはココロ惹かれるものがありますね。コシのない薄っぺらいサウンド、クールでありながら妙に明るくてユルいアンサンブル・・・この「ボレロ」も、ミュンシュ(新旧録音とも)の昂揚感とは別種の、涼やかなブルー系の味わい深いものでした。基本、イン・テンポなんですけどね。(「音楽日誌」より)

 サイト内検索すると「ダフニスとクロエ」全曲(1957年)「マ・メール・ロワ」(1964年)について「涼しげに線が細くて、妙に神経質そうにいい加減な演奏がたまらない」・・・とのコメントも見えます。ワタシはこんなアンセルメ・サウンドを愛します。

 気怠くも頼りない「スペイン狂詩曲」〜「夜への前奏曲」の妖しい官能は(いつもの)薄っぺらい木管、そして金管でこそ映えます。「マラゲーニャ」のリズム(カスタネット登場)も微妙に緩い・・・「ハバネラ」の囁くような静謐も、ゆらゆらとエエ加減なる雰囲気(アンサンブル)だからこその魅力か。「祭り」は、酩酊が徐々に醒めていくような感慨があって、祭りのウキウキする情感がやがて爆発しました。でも、あくまでコシがカルいサウンド・・・楽しい作品ですね。

 「パヴァーヌ」は粛々淡々としていて、こんな透明な作品には、過剰なる情感を込めない方が良いに決まっているんです。「道化師」は、ちょっと切ないつぶやきから、いやもうこの際、言いたいこと言いまっせ!的大騒ぎに至って(やはりカスタネット大活躍!そしてタンバリンの一撃有)、細かい音形が次々と色彩を変えつつ様々な楽器に引き継がれて、やがて道化師のノンビリとした歌が・・・サラリと粋で繊細ですねぇ。おフランスしてますね。

 ラスト、件の「ボレロ」であります。既に上記に語って付け加えるべき言葉もありません。例えばコンピューターで正確に「クレッシェンド」を計算する・・・それが、この作品の趣旨ではないでしょう。ミュンシュに於ける”掟破り”的アッチェランド(大興奮!)やら、マゼールの”一癖二癖”的突然停止(これはいただけない)でもない、あちこち景色を楽しむような、それも必ずしも美しい大自然だけではない、少々荒廃した街並みを散歩するかのような、得も言われぬ”味わい系”演奏であります。

 ラスト、充分手応えありまっせ。独墺系重厚オーケストラでは出せない味はちゃんとあります。

(2006年4月28日)

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written by wabisuke hayashi