Dvora'k 交響曲第1番ハ短調「ズロニツェの鐘」
(コシュラー/スロヴァキア・フィルハーモニック)



BRILLIANT 99569   Dvora'k

交響曲第1番ハ短調「ズロニツェの鐘」
交響詩「野鳩」作品110

ズデニェク・コシュラー/スロヴァキア・フィルハーモニック

BRILLIANT 99569 1970年台録音  7枚組(99565)2,690円で購入したうちの一枚

 この全集7枚組は、なぜか著名なる第8/9番が別演奏で収録される少々”とほほ”ものであります。チェコ・Opus原盤ならば、名手コシュラーの第8/9番(再発望む)はもちろん「わが祖国」辺りもサービスして欲しかった・・・全集は1973年〜80年に掛けて録音されたものだけれど、個別の詳細情報がありません。BRILLIANTの全集自体は廃盤のようで、「Dvora'k40枚組」に含まれるようです。(いくら安くても、そう簡単には買えない枚数か)

 交響曲第1番ハ短調「ズロニツェの鐘」は23歳で作曲、1961年にようやく出版されたという不遇なる経緯の作品(と、いうことはLP時代所有のノイマン/プラハ響のモノラル録音は楽譜正式出版前だったのか/初演は1935年)。作品/演奏/録音とも立派な、”習作”として済ませられない魅力を感じました。全46分堂々とした、勇壮な曲想充ちて楽しく、スケールが大きい。カッコ良い第1楽章、弦とオーボエ・ソロがじみじみ静かで牧歌的な第2楽章「アダージョ」。スケルツォである第3楽章は厳しく、もの哀しいリズムを刻み・・・終楽章の性格が(作品的に)よく定まらない。

 ちょうどBrucknerの初期交響曲を聴いているような連想があって、あちこち馴染みの懐かしいエピソードに出会いながら、未整理で雑然とした印象がつきまといました。ありがちな大団円的終結狙いか・・・でも、凡百の作品水準じゃないですよ。

 我がトランジスタ・アンプとの相性か、最終楽章が喧しく感じないでもない。「泥臭い響きは録音のせいだけではないでしょ」(「音楽日誌」2007年5月)とのログが残っている通り、草の香りがするような素朴なオーケストラの響きには、むしろ懐かしさが漂います。後期の著名な作品なら、古今東西優秀なオーケストラが艶やかなる演奏を残して下さっているが、初期作品にはこんな親密なる味わいが相応しい。金管が鋭すぎない。アンサンブルの集中や技量に問題はなく、威圧的な馬力はないけれど、オーケストラの”鳴り”にそう不足はない。

   交響詩「野鳩」だったら作品的にずっと完成度が高く洗練され、暗鬱なる世界を絶妙繊細に、静謐に表現して下さいました。

夫を毒殺した若く美しい未亡人が、やがて魅力的な青年から求婚を受ける。亡き夫の墓標のうえに樫の木が育ち、枝にとまった野鳩が哀しげに、彼女を責めるように啼き、自らの罪深さを自覚する。鳩の啼き声に身も心も張り裂けんばかりとなった彼女は、やがて自らの命を絶つ・・・(勝手にネット検索引用ご容赦/二時間ドラマのような筋書きだ)
 スロヴァキア・フィルの木管/金管は特筆すべき味わい深い有。華やかではないが。こちら残響かなりたっぷり(ありすぎ)でした。