Chopin ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11/
ポーランド民謡による幻想曲 イ長調 作品13/
アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ 作品22(イディル・ビレット)
Chopin
ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11
ポーランド民謡による幻想曲 イ長調 作品13
アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ 作品22
イディル・ビレット(p)/スタンコフスキー/スロヴァキア国立フィルハーモニー(コシツェ)
NAXOS 8.550368 1990/91年録音 880円
もう一枚(8.550369)と併せてChopin の管弦楽伴奏付き協奏的作品がすべて揃います。(演奏会用アレグロ 作品43は含まれない)このCDは1990年代初頭「有名作品は一通りCDで揃えたいな」と、当時は出色の安価であったNAXOSで集めたもの。トルコ出身の女流イディル・ビレットはChopin の全集を録音しておりました。久々、再聴のキッカケは「中村さんのアンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズの管弦楽伴奏盤が入手できないよ」との記事を拝見したことによります。
ワタシは無伴奏のほうが好みではあるけれど、伴奏付きなんて珍しくないでしょ?手持ち三種くらいのCDを確認したものです。ビレットのChopin 作品集は数枚集めていたけれど、やや硬質で冷たい表情が好みではなくて、マガロフ全集入手を機会に処分済み。でも、協奏的作品(協奏曲以外)は、手許にこれしかないので生き残り。(余談だけれど・・・ジャケット絵のセンスがよろしくない)
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全体として、ややオフ・マイクでかなり残響豊か。これはコシツェ「芸術の家」という会場のホール・トーンでしょうか。なかなかエエ感じ(おそらく優秀録音)です。で、まず「アンダンテ・スピアナート」から。曖昧さを許さない硬質、細部きっちり、ひとつの音も忽(ゆるが)せにしないピアノ。ゆったり、夢見るように囁く旋律を、ていねいに、クールで美しいタッチで表現します。
立派な演奏に間違いはないが、細部神経質になる余り、流れというか、味わいやや飛んじゃってませんか。後半、ポロネーズのまったりしたリズムも自然体の歌ではなく、あくまで表現として意欲的なテイストでしょうか。技術的にぼろぼろの弾き流しながら雰囲気はたっぷり・・・というのも困りものだけれど、やや”つくりものの美”的正確な味わい有。端正な美人(表現的に)だけれど、少々余所余所しい。
スタンコフスキーは伴奏に徹していてクセのないものだけれど、嗚呼、伴奏付きも悪くないもんだな、と思いました。豊かな残響に包まれ、高貴な雰囲気が溢れます。「つまらない伴奏」との専門家筋評価だけれど、ラストのホルン・ソロなどシンプルな音形だけれど遠く奥行きあって、エエ味わい。
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ちょっと難クセ付けたが、協奏曲は(省略されることが多い)前奏もちゃんと全部演って下さるし、涼やかな音色、雄弁な表情のソロは見事でございます。切れ味ある緻密なピアノ+茫洋と残響豊かなバック。ようはするに「アンダンテ・スピアナート」と同じスタイルか。感興溢れ、揺れる即興的リズム・・・とは少々縁遠いが、あとは好みの問題でしょう。これはこれで支持者はいるはず。
おそらくワタシとこの作品の出会いは、サンソン・フランソワだったはず(バックはフレモー)。それが仮にビレット盤であったとしても、作品の価値・印象を損なうことはないでしょう。第2楽章「ロマンツァ」の繊細清涼(冷涼?怜悧?)な味わいも、爽やかであることに間違いなし。でも、懐かしさ、みたいなものに欠けている。(やはり、少々ヴィヴラートの掛かったホルンが印象的)終楽章「ロンド」のリズム感には、やはり”ノリ”の悪さ(”キレ”はある)を感じましたが。オーケストラのアンサンブルは優秀です。
「ポーランド民謡による幻想曲」は聴かれる機会も少ないし、懐かしい、美しい作品にコメントなど付ける必要性を感じません。CDそのものが多くないし。全体として、磨き上げられた演奏だけれど、聴いているウチに妖しくココロが揺さぶられる・・・という演奏ではないかも。美しく(演奏的には上記と同じ印象)優秀な録音と演奏、適切な価格のCDで聴かせて下さることを、ひたすら感謝しましょう。収録作品故、貴重な価値を持つ一枚。