Brahms 交響曲第1番ハ短調、他(ジョン・エリオット・ガーディナー/
レヴォリューショナル・エ・ロマンティーク管弦楽団)


Soli Deo Gloria SDG 702 Brahms

混声合唱、管楽とティンパニのための「埋葬の歌」 作品13

Mendelssohn 

3つの教会音楽 作品23より第3曲「われら、人生のただ中にありて」

Brahms

運命の歌 作品54
交響曲第1番ハ短調

ジョン・エリオット・ガーディナー/レヴォリューショナル・エ・ロマンティーク(革命的浪漫的)管弦楽団/モンテヴェルディ合唱団

Soli Deo Gloria SDG 702 2007年録音

・・・おお、これはライヴなのだね。「運命の歌」以外の声楽作品は初耳、先のBach 同様声楽の深遠さ、洗練の説得力に目眩がするほどの感銘有。ワタシは不信心罰当たり無神論者だが、宗教的敬虔はたしかに受容可能であります。とくに「埋葬の歌」に於けるトロンボーンとティンパニは声楽を際立たせる説得力抜群。

交響曲は、小編成かつ素朴な味わいを想像していたが、なんのことはない、荘厳壮麗なるスケールを誇って、独墺的伝統がっちり継承して驚かされました。各パートは現代楽器ではないだろうが、Bach 時代のものではない、近代に向かう変遷なのでしょう。近現代高性能オケのキレとはもちろん異なるが、古臭さ皆無。個性あるサウンド(ナチュラル・ホルン最高)として”現役”であります。技術的洗練はここまで極まった!的感想であります。鮮度抜群。 (「音楽日誌」2010年5月)

 Brahmsの交響曲はなんや大仰に眉間に皺、尊大な感じがして、若い頃はあまり好みではありませんでした。やがて中高年のうら寂しい後ろ姿を連想させるピアノ作品、室内楽を好んで聴くようになって幾星霜、恥ずかしい昔の記録を読むと愕然と時の流れを感じます。時代はやがて古楽器系スッキリとしたサウンド、表現も出現して嗜好はそちらに、やがてクレンペラーとかエイドリアン・ボウルト、チェリビダッケなど往年の大家の記録も素直に愉しめる年齢に至った今日此頃・・・

 音源は種々安価に入手できる時代がやってきて、唯一無二自分の贔屓を主張せずとも、あちこち自由に”違い、個性”を味わえる時代がやってきました。先人に敬意を評しつつ、現役の新しい試みをしっかり聴きましょう。ありきたりなフィル・アップに非ず、Brahms自身の珍しい声楽作品やら、影響を受けたであろう先人の作品を組み合わせるのがガーディナーの意欲でしょう。

 「埋葬の歌」作品13を求めて聴く人はほとんどいないはず。偶然BrillinatのBrahms全集(60CD)を入手していたからミシェル・プラッソン/ドレスデン・フィル/合唱団/エルンスト・ゼンフ合唱団(1999年/CD35)を聴いていたけど印象やら記憶ほとんど0。男性合唱+管楽器のみ荘厳にスタート、やがてティンパニ+女声も参入して激しく、優しく、魂の救済を歌う8分ほど。音楽的には交響曲第1番とどんな連関があるのでしょうか?こちらド・シロウト、ウカツなことは云えぬけれど、重心の低い暗さ+ティンパニって雰囲気は似ている感じかも。言語滑舌明瞭な声楽陣、トロンボーン(先頭に管楽器すべて)の朗々とした深みはプラッソンより遥かに効果的であります。(音質問題も有)

 Mendelssohn「われら、人生のただ中にありて」は更にマニアック。いくら珍しモン好きでも、この辺り声楽作品には出会う機会はなかった。これは混声によるアカペラであって、コラール風の開始(滝廉太郎「荒城の月」旋律似)から、やがて思いっきり激情に充ちた男女合唱の(かなりフクザツ劇的な)掛け合いとなります。これも交響曲の旋律に影響を与えてますか?モンテヴェルディ合唱団のテンションの高さに打ちのめされましたよ。8分半ほどの作品。

 「運命の歌」 作品54はあちこち音源入手は可能だけど、やはりあまり人気のないジミな作品でしょう。心洗われるような混声合唱と管弦楽の作品の開始です。モンテヴェルディ合唱団は端正、オケは素朴なテイストを活かしてていねいな仕上げ。名曲やなぁ、優しく静かな天国の情景を描く第1部「Langsam und sehnsuchtsvoll(ゆっくりと、極めて憧れをもって)」。第2部は一転激情に走って「Allegro(快活に、速く)」まるでVerdiのレクイエムのような激しいリズムも登場します。やがて静謐に収束して声楽はフーガへ、そして最初の激情に戻って・・・ちゃんと集中して聴いたのは初めてかも、これも名曲やなぁ。

 さて、交響曲第1番ハ短調 作品68始まりました。BrahmsがBeeやんの衣鉢を継ぐべく21年掛けて完成させた入魂の作品とか。もの凄く立派に聴こえるけれど、これって古典的二管編成なんですね。第1楽章 「Un poco sostenuto - Allegro」は速めのテンポ、潔いストレート系表現にぐいぐいとした推進力が力強い。ベルグルントのような人数の少なさ、響きの薄さを感じさせません。オケのサウンドに素朴さを感じさせても牧歌的に非ず、劇的な昂揚、緊張感集中力に不足なし。テンポのタメ、揺れも自然な表現の幅となって”特異な古楽器系”を意識させぬ堂々たるスケールであります。

 第2楽章 「Andante sostenuto」。ここは3/4拍子のリズム拍節感をしっかり意識させる、軽快デリケートな演奏であります。ここもテンポ速め、彼(か)の重厚な響き(テンポ)は近現代の楽器改変、会場の大型化によって意識されたものでしょうか。濃厚な詠嘆に非ず(例のヴァイオリン・ソロも素っ気ないほど)さっぱりとして淡々とした風情漂う味わい深い表現であります。第3楽章「Un poco allegretto e grazioso」ここは本来スケルツォ楽章を配置させるところ、牧歌的な優しい”間奏曲”であります。ここもさらりとした出足、中間部の優雅な(grazioso)旋律は素敵ですね。オケの素朴なサウンドを活かして流したようなテイスト、終楽章クライマックスへ向けてのみごとな息抜きでしょう。

 第4楽章 「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」。物々しいはずの序奏も抑制が効いて重苦しさを感じさせない、立派過ぎない(ここも)速めのテンポであります。ホルンによる朗々たるコラールの音色はかつて聴いたことのない”平べったい”音色、トロンボーンファゴットの呼応も随分とジミ。この辺りは新鮮に感じます。そして「喜びの歌」旋律登場、古楽器の練り上げられた弦、ポルタメントもちょっぴり入ってますか?きりりと引き締まって勢いたっぷり、しかしサウンドはあくまでマイルド、威圧感はありません。この響きの”薄さ”を嫌う人もいるやろな、きっと。

 考え抜かれた作品配置、軽快な推進力、そして素朴なテイストのBrahms。新鮮に受け止めました。

(2017年4月9日)

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written by wabisuke hayashi