Brahms 交響曲第4番ホ短調
(クリスティアン・マンデール/”ジョルジュ・エネスコ”・ブカレスト・フィル)


ARTE NOVA 74321 46493 2 (BVCC-6060) Brahms

交響曲第4番ホ短調
ハンガリー舞曲集 第1/3/5/6/7/10番

クリスティアン・マンデール/”ジョルジュ・エネスコ”・ブカレスト・フィルハーモニー

ARTE NOVA 74321 46493 2 (BVCC-6060) 1996年録音

 2018-19年正月休みはひとり引き隠って(女房殿は大阪の老母のもとへ)主にBrahms辺りの音源在庫の点検整理をしておりました。クリスチャン・マンデール(1946−)は現代ルーマニアを代表する指揮者らしいけれど、日本では知名度ほとんど皆無、以前のコメントはなんと!13年前、月並みだけど光陰矢の如し、数年前には交響曲第2番ニ長調へ言及しておりました。こども時代〜若い頃から”安いレコードCDしか買え”なかったから知名度二の次、果ては”無名なほど興味ソソる”フェチ性癖に至ったワタシ。今更カラヤンやヴァントじゃないでしょ・・・と云いつつ、じつはBrahmsの交響曲はギュンター・ヴァント/NDRの旧録音が好き。

 以下昔のコメントを読んでみると、当時交響曲全集+ピアノ協奏曲ボックスをBOOK・OFFにて処分したらしい。マンデールがチェリビダッケの弟子筋と知ったのはずっと後のこと、久々の拝聴はテンポの遅さ、”間”の重視、スケールの大きさ、師匠譲りの表現を感じさせるし、オケの技量にほとんど問題もありません。そういえば先頃Bruckner交響曲全集が出ていたっけ(未聴)。昨年末にこの作品を生体験して、楽器編成の小さいことに驚いた”大きな”作品です。

 第1楽章「Allegro non troppo」は冒頭から詠嘆の深い溜息が延々と・・・いくらでも煽れる表現可能なところ、テンポ控えめにそっとていねいな出足はチェリビダッケを連想します(十数年前チェリビダッケのCDは高かったから聴いていない)。但し、”ジョルジュ・エネスコ”フィルは鳴りっぷりや、色彩感に少々不足するのも事実でしょう。慌てず悠然とした歩みは着実にスケール大きく、激高せずあくまでクール、メリハリしっかり仕上げは丁重です。(13:33)

 第2楽章 「Andante moderato」。生体験するとBrahmsサウンドのキモはホルンとチェロだと視覚的にも理解できました。冒頭なんの情感も変哲もないホルン旋律が、受け継がれる木管によって魔法のように変容されるマジック、ここも神妙にていねい仕上げ。但し、技術的云々じゃなくて管楽器の音色に色気不足を感じるのはベルリン・フィルとか北ドイツとかその辺りを多く聴いてきたせいでしょう。やがてヴァイオリンが冒頭動機を思いっきり美しく歌って、やや遅めのテンポ設定はやはりクール表現でした。(11:32)

 第3楽章 「Allegro giocoso」これぞ賑々しくも明るいスケルツォ。「大学祝典序曲」やら弟子筋であるDvora'kの「新世界」第3楽章「Scherzo. Molto vivace」を連想しませんか。ここでのマンデールは特異な遅いテンポということでもなく推進力たっぷり、展開部はしっかりテンポを落として優しく、対比メリハリはお見事。但し、贅沢言えばやはりオケは鳴りっぷりにちょっぴり不足するかも。(6:20)

 第4楽章 「Allegro energico e passionato」。古めかしい「シャコンヌ」(変奏曲)を用いたのが温故知新、Brahmsの新基軸だったのでしょう。物々しい雰囲気の主題提示から各変奏曲の丁寧入念な描き分け、ゆったりとしたテンポに悠然たる歩み、充分な”間”、呼吸の深さが際立つ表現であります。Bachもそうだけど、こんな小さな編成から大きな音楽が生まれることに驚かされます。第12変奏でフルートが孤高のソロを歌うでしょ?それが各種木管に引き継がれるけれど、ノーミソに木霊するのは1960年台のベルリン・フィル、ちょいと色気が足りなくて生真面目一本かな?と。続く鬱蒼としたホルン合奏も同様。

 最終盤に向けて盛り上がる情感・・・もうちょっとオケは鳴ってくれ!というのも贅沢な希望。テンポを動かして+充分な”間”を称賛いたしましょう。(11:09)

 ハンガリー舞曲はお気に入り作品。ここでは有名どころ含んで6曲の収録。CD一枚分ならもっと入るでしょうに・・・とケチ臭い考えもよぎりましたよ。特別にテンポ云々ということでもなく、リズミカルに各舞曲の性格分けを描いておりました。著名な第5番ト短調のスピードに乗った推進力もおみごと。第6番はテンポの動き変幻自在に雄弁な表現。オケの響きはジミですね。

(2019年1月6日)

 最初に余計な話を・・・この作品は、子供時代ベイヌム/コンセルトヘボウのLP(グロリア・シリーズ900円也)で出会った(馴染んだ)作品であり、ワタシはCDでの格安入手を狙っていて未だにその機会を得ません。また、マンデールをはじめとする「ARTE NOVA」のBrahms 録音集成のボックスはかなり以前より購入し、そして数年前ご近所BOOK・OFFにて処分いたしました。(この文書執筆時点、未だ買い手が付いていない)で、つい先日、出張先・広島のBOOK・OFFにて再会入手した一枚であります。これも何かの縁か、それとも単なるアホか。(後者の可能性が強い)

 「音楽日誌」では

オケのサウンドとして深みは少々足りないかも知れない(録音の個性もあるのか)が、良く歌って美しい、鳴りっぷりも充分な演奏として推奨できます。悠々と、やや遅めのテンポでのびのびとした旋律表現がお見事。ルーマニアの知名度低いオケをバカにしちゃいけないよ。
とのことだけれど、これはポータブルCDプレーヤー+イヤホンでの聴取結果であって、部屋のコンポだともう少々印象も異なります。それにしても、Brahms の交響曲聴取はずいぶんとお久しぶり。

 たしか、クリスティアン・マンデールはチェリビダッケの弟子筋のはずで、たしかに表現に相通ずるものがありますね。悠然と、息の長い、しつこいくらいの節回し、タメ・・・細部の彫琢。「ルーマニアの知名度低いオケをバカにしちゃいけないよ」〜とはその通りだけれど、オケそのものの素の魅力、会場音響を楽しみたい(ハイティンク/コンセルトヘボウが代表例)ワタシとしては、バカにはしていないが、必ずしも”魅力あるサウンド”とは断言しがたい。技術的な不備とか、アンサンブルのテンションに問題はない(おそらくはマンデールの努力賞)けれど。そんな贅沢言っちゃうと罰当たりますか。

 第1楽章の詠嘆は、息深く、悠然として急かない。テンポはどんどん遅くなるようであって、間も存分にとって、旋律表現の味付けの濃さは尋常ではない水準。「鳴りっぷりも充分」というのは言い過ぎで、マンデールの入念なる細部配慮で、オケは叱咤激励されているでしょう。響きそのものはとてもジミであって、それはこの場合あまり誉め言葉とはなりません。色彩に欠ける。と言うべきか。

 ホルンの無機的な旋律が、やがて無限の変化を経て美しい幻想に至る第2楽章「アンダンテ・モデラート」。抑制され、静かなテイストのまま、弦の雄弁かつ繊細なる歌に至りました。この辺りの盛り上げは上手いもんですね。ホルンには、もう少し”味”が欲しいところ。スケルツォである第3楽章は中庸のテンポで元気良く、表情も明るくテンションを維持しております。響きには、いまひとつ”芯”が欲しいところ。

 終楽章は、第1楽章同様、ゆったりとしたテンポでものものしく、足取りしっかり、たっぷり歌われます。その、個性的な表現の徹底には少々驚かせられました。微妙なテンポの揺れ、ニュアンスの徹底指示、時に止まりそうになるくらい溜息。ワタシは全曲を通して、立派な、個性的な演奏と感じました。但し、あまりに著名なる作品、そして歴代名演奏を聴いてきた耳には、最終楽章に向かって少しずつ、サウンドの洗練度合いが気になりだしたものです。こんなのは贅沢なる戯れ言なんだろうが。

 ハンガリー舞曲6曲分収録は、配慮あるフィル・アップだと思います。なかなか快調ですよ。意外と正統派でして、もっとうんとクサく、滅茶苦茶テンポをいじって欲しかったけれど。

(2006年11月3日)


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written by wabisuke hayashi