Berg ヴァイオリン協奏曲/Hindemith ヴァイオリン協奏曲ニ長調/
Stravinsky ヴァイオリン協奏曲ニ長調(イヴリー・ギトリス(v))


VOX 7818 Berg

ヴァイオリン協奏曲(1935年)
ウィリアム・ストリックランド/プロムジカ管弦楽団(1953年)

Hindemith

ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1940年)
フーベルト・ライヒェルト/ヴェストファーレン交響楽団(1962年)

Stravinsky

ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1931年)
ハロルド・バーンズ/コンセール・コロンヌ管弦楽団(1955年)

イヴリー・ギトリス(v)

VOX 7818

 ぼちぼち白寿、Ivry Gitlis(1922-以色列)は未だご存命らしい。(後述;2020年末逝去とのこと)米VOXにまとまった協奏曲録音があって、Stravinskyには別途8年ほど前に言及しておりました。20世紀硬派なヴァイオリン協奏曲揃えて血気盛んな30歳代の録音、Hindemithはステレオ、他のモノラル録音も想像以上に音質状態は良好でした。ソロ・伴奏のバランスもよろしい、バックを務める面々がマニアックに興味をそそるもの。

 Bergは最後の作品にしてもっとも演奏機会の多いヴァイオリン協奏曲は、透明清廉静謐を湛えた名曲。William Strickland(1924ー1991亜米利加)は日本初演をした人(1959年)とのこと。作品には自信を持っていたことでしょう。オーケストラの実態は不明、VOX録音の場合いくつかはウィーン交響楽団でした。立派なアンサンブルですよ。一般には難解晦渋なるドデカフォニー(十二音技法)作品、第1楽章「Andante-Alegeretto」は神々しくも透明なデリカシーに充ちた出足、たっぷりヴィヴラートを効かせてギトリスは濃密に歌って表情豊か、高まる情感、素直に作品旋律の美しさを堪能。民謡の引用があるとか?(11:06)第2楽章「Allegro-Adagio」は破壊的激しさと嘆き増量、カデンツァ風と呼ばれるヴァイオリン・ソロは超絶、腕の見せ所でしょう。これはマノン・グロピウスの闘病を表現しているとか、やがて嵐は過ぎ去って穏やかな風情にソロは蠱惑な音色に変化、これは昇天と浄化を意味しているんだそう。(13:00)

 Hindemithの魅力に目覚めたのはごく最近のこと、ヴァイオリン協奏曲ニ長調は初耳ではないと思うけれど、旋律に馴染みはありません。指揮者もオーケストラも情報不明、VOX録音には協奏曲伴奏に時々見掛けておりました。これもオーケストラの技量に疑念を感じさせぬ充実した演奏。第1楽章「Massig bewegter Halbe」は作曲者馴染みのリリカル・クールな旋律風情が躍動して金管活躍!賑々しい盛り上がり。(7:45)第2楽章「Langsam」は木管アンサンブルに導かれて、ヴァイオリンは淡々と静謐明朗に歌います。上記Bergに比べるとぐっと大衆的にわかりやすい音楽。(7:57)第3楽章「Labft」絵に描いたように快活な明るいフィナーレ、ソロと木管の剽軽な掛け合いも愉しく、金管の明朗な響きも爽快です。(8:57)ギトリスは豊かな美音を駆使して、切れ味もよろしい。

 Stravinsyはお気に入り。有名な作品でしょう。同時代音楽の紹介に尽力があったらしいHarold Byrns(1903ー1977独逸)がパリのオーケストラを指揮して、これも不満はありません。第1楽章「Toccata」は叫ぶようなソロの破壊的な響きから、一転淡々とリズミカルな旋律を刻んで、ギトリスの音色は変幻自在な表現変化が見事なもの。タイヘンな技巧を要求されそうな作品だけど、楽勝でしょう。(5:44)第2楽章「Aria 1」は第1楽章冒頭と似たような出足から、哀愁の旋律を足早に歌います。ラプソディっクな風情はギトリスに似合ったもの。(4:31)第3楽章「Aria 2」は哀愁風情はいっそう強まって、ソロは纏綿と歌ってたっぷりとした表情付け。(4:59)第4楽章「Carriccio」は明るく躍動疾走して、楽しげな雰囲気満載、ギトリスの技巧は余裕の美しさ。(6:13)

(2020年10月17日)

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written by wabisuke hayashi