Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
(エミー・ヴェルヘイ(v)フォンク/ユトレヒト交響楽団)


BRILLIANT 99102 Beethoven

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61

フォンク/ユトレヒト交響楽団

ロマンス ヘ長調 作品50

フォンク/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

ロマンス ト長調 作品40

マルトウレット/ブラバント管弦楽団

エミー・ヴェルヘイ(v)

BRILLIANT 99102  録音年不明   300円で購入(10年前の店頭販売では激安であった)

 ワタシが(珍しく)Beethoven ではお気に入りの、この静謐なる名曲を楽しむなら、やはり”BRILLIANTの名歌”ヴェルヘイが相応しいでしょう。オーケストラがまた渋い(著名なるロイヤル・フィルともかく)じゃないですか、いずれもオランダのオーケストラらしい。エミー・ヴェルヘイ(v)は知名度低いが、録音も膨大でいずれ(聴いた範囲では)親密で、微笑みを浮かべたような音色が素敵な演奏でした。(Mozart 協奏曲全集Beethoven のソナタ集Sibelius は更新済み)

 やや(かなり?)潤いを欠く管弦楽であり、録音でもある(音質状態は3曲バラバラ)けれど、まずは鑑賞に問題ない水準、ということにしておきましょう。

切れ味が鋭すぎたり、神経質になったりしない、しっとりとした暖かい音色が出色。線は細すぎず、豊満になりすぎず、ちょうどのところ。テクニック的な破綻はありませんが、技術を意識させない自然なフレージング。ヴィヴラートが適度で、爽やかなんです。
・・・これはMozart での(かなり以前の)感想だけれど、この印象に近いでしょうか。Sibelius や、Beethoven ソナタ集のライヴではもっとセクシーな精気を感じたものだけれど、乾き気味の音質の印象が反映しているのかも知れません。基本、上記の通りの素敵なソロであること、それに付け加えることはありません。

 ほのかに震えるヴィヴラートがあくまで静謐なる第1楽章は、粛々と進めて清潔そのもののヴァイオリン・ソロ。技術が先に立たず、時に微妙な揺れが奥床しい表現であります。ここだけで26分弱だから、それなりに入念なるテンポ設定と言えるでしょうか。この傾向は第2楽章「ラルゲット」に於いても変わらず、端正な表情を維持したまま、詠嘆の表情をいっそう強めて歌いました。

 弱音高音での旋律は出色の繊細であって、この楽章こそ白眉か。

 終楽章は、逆に中低音が豊かに、しっかり、ゆったり響いて楽しげでしたね。「切れ味が鋭すぎたり、神経質になったりしない」〜そう、楽しげであって、カラダを自然と揺らせるような大きなリズムを感じるヴァイオリン。テンポは中庸適正であって、技術を誇示して徒に走ることはない。アッチェランドは存在せず、ルバートも最低限。時に断固とした強靱な運弓にも音色が濁らず、細部は雑にならない。いつも微笑みを失わない。

 フォンクのバックも第2楽章以降では、そう悪くないサポートぶりでしょう。歴史的に稀代の名演奏勢揃いの作品だけれど、その中にひとつの存在を誇っても良い演奏でしょう。

 2曲のロマンスは、ヴァイオリン協奏曲よりいっそう個人的お気に入り、安寧に充ちた懐かしい作品であります。ヘ長調のチェロ・パートには参加した経験も(遙か太古の昔だけれど)ないでもなくて、懐かしく思い出されました。こちらはかなりのオン・マイク録音であって、表情も豊かであります。ト長調のほうは、しっとりバランスが良く、抑制された表現が作品に似合っておりました。

 毎度のことながら、演奏家、レーベルとも知名度だけで判断するにはもったいない、価値ある一枚。

(2006年8月18日)


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