Beethoven ヴァイオリン・ソナタ 作品12-1/2/3
(ヴェルヘイ(v)/ムールダイク(p))
Beethoven
ヴァイオリン・ソナタ
ニ長調 作品12-1
イ長調 作品12-2
変ホ長調 作品12-3
エミー・ヴェルヘイ(v)/カルロス・ムールダイク(p)
BRILLIANT 99113 (4枚1,200円で購入)
”Beeやんは苦手系”という悪しき先入観が前提にあるので、レパートリーを広げようという意欲も失せがち。ヴァイオリン・ソナタも千年一日の如く(こどもの頃から)「春」「クロイツェル」ばかりじゃいけないと反省し、このCDを購入し既に10年経過(ちゃんと聴け!って)。装丁を変えて未だ現役(←但し40枚組)だと思います。録音情報不明だけれど、素晴らしくリアルなライヴ録音(拍手有)。
Emmy Verheyは、メジャーでの録音が少なかったので知名度的には低いが、膨大なる録音を誇るオランダの実力者であります。艶やかな美音ではなく、質実・しっかりとした芯を感じさせ、そこはかとない華やかさもあるヴァイオリン。才気走った技巧が前面に出ないけれど、しっかりとした手応えある表現にいつも感嘆させられます。
Beethoven 28歳・青春の希望に溢れたヴァイオリン・ソナタ第1・2・3番〜これはMozart も連想させて、屈託ない、明るい旋律が時に暗転して陰りを見せる妙。こんな晴れやかで、繊細含羞な表情のBeethoven もいるんですね。いつもながら微笑んだようなヴェルヘイの、清潔かつセクシーな音色を堪能すべき作品群。
第1番ニ長調は、明朗闊達かつ決然とした旋律が躍動してやはり”柔軟なるBeethoven ”に間違いはない。ほのぼのシンプルな旋律が、優しく姿を変えていく優しい第2楽章変奏曲(ピアノが主体になることも多い)、そして”Mozart 風”に屈託ない終楽章ロンドのハズむような希望。
第2番イ長調はちょっと急いだような、おしゃべりのような味わいで開始されました。(ここも”Mozart 風”)一気に暗転する第2楽章の深刻さは後年の姿を連想させ、ゆったりと目覚めるような懐かしい終楽章の暖かさにほっとします。第3番 変ホ長調は、ピアノの優雅な歌主体に、ヴァイオリンが寄り添うように音楽は進みます。なんと優しく、明るいBeethoven !第2楽章「アダージョ」も手動はあくまでピアノであり、やがてヴァイオリンが纏綿と息の長い旋律を引き受けました。時に暗転もある静謐可憐な旋律。着実な歩みは、春の野山を散歩するかのような軽快さを感じさせる終楽章へ。
やがて耳疾から深遠(晦渋?)なる作風へと成熟していく(そして、ワタシは苦手度を深めていく)以前の、若者の音楽であります。拍手から想像すると、あまり大きくない会場での収録であり、勢いとか熱気を感じさせる演奏に仕上がっております。ヴェルヘイについては冒頭触れたとおりだけれど、長くコンビを組んでいるカルロス・ムールダイクの充実ぶりも特筆されるべきでしょう。(全集買っておいて良かった!)
(2006年3月10日)