Brahms 、Dvora'k、Tchaikovsky、Sibelius
ヴァイオリン協奏曲集
Brahms
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
メニューイン/ケンペ/ベルリン・フィルハーモニー(1957年)
Dvora'k
ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品53
クレバース/カーシェス/アムステルダム・フィルハーモニー(1970年代)
Tchaikovsky
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品53
スピヴァコフ/小澤/フィルハーモニア管弦楽団(1982年)
Sibelius
ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47
ヴェルヘイ/フォンク/オランダ放送フィルハーモニー(1970年代)
Disky Communicatin(D Classics) DCL 705742 2枚組890円
スピヴァコフ
のTchaikovskyは「SEIJI OZAWA THE EMI RECORDINGS」7枚組でダブったなぁ・・・なんて考えつつ購入〜帰宅して確認すると勘違いでした。メニュイーンの録音はLP時代所有していたし、それにしても寄せ集めバラバラの、しかも気になるヴァイオリニストばかり!「聴き比べ」の醍醐味有。たっぷり楽しめましたよ。選曲の配慮もちゃんとある。
メニューインのBrahms はLP時代、聴いていてつらい演奏でしたね。技術的にヨレヨレ、ボウイングに問題あるみたいで音が盛大に濁るんです。時にソロのテンションが著しく落ちるときも有。41歳の演奏とは思えない〜でもね、ワタシ、久々(おそらく十数年ぶり)に聴いてみて、ああ、意外と悪くないな、晩年のシゲティに一脈通じるかも(ちょっとだけ)、と。
まずケンペのバックがいいね。自然体で包み込むような奥行きがある。後年カラヤン時代の艶出し系甘さも存在しません。地味で虚飾がないが、これぞBrahms といった味わいが深い。これだけでも価値充分!でも、ま、ヴァイオリン協奏曲ですから。ソロに詠嘆の表情がある。線が細くて、精力も衰えているけど”泣き”があります。
やや危なっかしいヴァイオリンをそっと包み込むような、安定したバックに支えられて音楽は進みます。カデンツァになるとかなり厳しい(響きが薄い)が、豊かなバックに支えられ、静かに歌う旋律にはソロも味わいも深い。第2楽章のオーボエは誰ですか?名手コッホは1957年よりベルリン・フィルの主席を務めていたけれど、この録音に間に合ったのか?(2003年逝去とのこと。合掌)明るく微笑みに充ちた彼の音色からすると、同傾向だけれどやや地味?録音の加減か。
この第2楽章が一番安心して聴けましたね。終楽章はチカラ尽き・・・という感じか。これもケンペを聴くべきもので、ま、メニューインも脊椎の手術したあとで調子悪かったらしいし、こんなこともありまっせ。期せずして(この曲に対する)威圧感からは解放されました。
Brahms のあとに、縁のDvora'kの協奏曲(選曲が良い)〜ワタシはあまりこの曲を聴き込んでいないせいか、親しみを感じておりません。ああ、でもこうして”熱血演奏”と出会って目覚めていくんだね。クレバースは1923年生まれのオランダの名手で、ながくコンセルトヘボウのコンマスを務めた方。1943年には既にメンゲルベルクの指揮でBrahms を録音しているが、その録音は膨大なはず。
知名度云々ではなく、この録音は上記Brahms と正反対のテイストでしょうか。クレバースの腕が鳴るような情熱的なテクニックに対して、バック(指揮者の呼び名いい加減)のオランダ・フィルに魂のこもりかたが足りません。一生懸命ソロに合わせているようだけれど、どことなく勝手に演奏しているようでもあり、例えばホルンの響きも安易な雰囲気で奥行きがもっと欲しいところ。
そんなに古い録音じゃないのにソロ中心の音録りで、バックは「いかにも伴奏」風か。(奥行きが浅い)そのソロが最高なんです。音色にコクがあります。第1楽章からのびのび朗々と歌って、自信にあふれた歌い口。但し、それはクサい表現ではない。知的で凛としたものを感じさせます。第2楽章の叙情性も期待通り。コンドラシンの「シェヘラザード」では、やや線の細さを感じさせた(録音の責任?それともわざと、か)が、ここではしっかりとした音の芯があります。
ああ、終楽章がすごい。いままで抑えていたものが爆発したように速いテンポで疾走します。例の如しの単純フレーズ繰り返しが効果的でわかりやすい。これがもうノリノリでどうにも止まらないよ!的熱気に満ち溢れて、この作品の魅力を前面に露出させました。アツい演奏。
いまでは指揮者として活躍している、スピヴァコフ初期の録音が登場。いつもいつもで恐縮だけれど、ワタシTchaikovskyは苦手です。旋律が気恥ずかしい。この曲は最初にハイフェッツ盤で馴染んだのも悪かったかな?(クサみはほとんどないが。但し、別な作品に聞こえる)ワタシにとっては、いつもあまり感心しない小澤の指揮だし・・・。
で、結論的にとても気持ちよく聴けましたね。この収録中一番新しい録音で、音質も良好。クレバースの技量もたいしたものだけれど、スピヴァコフの意味合いは違いますね。細部までクールで完璧、ターミネイターのようなヴァイオリン。じゃ、ハイフェッツ方面?というと全然違っていて、もっともっとクサみが完全に抜けている、完全消毒!といった味わいか。
小澤の指揮ぶりがこの方向にピタリと合っちゃう。非常に、繊細で、仕上げが丁寧で、正直気持ちヨロシ。「Tchaikovskyはクサい。”泣き”を狙いすぎ」みたいな先入観をみごとにうち破って、ほぉ、ようでけた曲やのう、と感心するばかり。曲の本質が不純物なく表現された感じか。コレ、ライヴやったらもっと感動すると思います。
Tchaikovskyのあとには、初期に彼の影響を受けたSibelius を。ヴェルヘイさんはオランダEMIにも録音していたんですね。(BRILLIANTばかりかと思っていた)この人、日本ではまったく知名度はない(検索するとワタシのサイト登場!情けない)が相当の実力者なんです。正直、このSibelius 〜それなりに聴いてきたつもりだけど、最高の経験でした。
中低音が幅広くて、しかも音色がセクシーだからたまらない。妖しい美しさ。聴いていてクラクラするくらい魅力的。高音が鋭くならないで、やや渋めのコクがある。ポルタメント・・・って、大昔の時代錯誤的怪しさはないけれど、それに近い表現はかなり出ていて、ドキドキするくらい決まっている・・・
スケールがとてつもなく大きくて、表現は濃厚だけれど上滑りしない。旋律は深呼吸をし、瞑想します。そんな滅茶苦茶なテンポの揺れはないはずなのに、この”ゆったりとした揺れ”はなんでしょう。細部の味付けも文句なし。時にそっとチカラを抜かれる(耳元で口説かれているみたい)と、聴き手(ワタシのこと)はヘロヘロにダウンしちゃうんです。
フォンク(この方、病気で休まれているとか)のバックも劇的で万全のサポートぶり。オランダ放送フィルは、ここで聴く限り厚みも充分で豊かな残響も効果的でした。
ワタシ、この手練手管に籠絡されました。足りないのは〜というか、もう求め得ないの〜初々しさだけでしょう。この完璧なる化粧衣装身のこなし教養話術配慮を嫌う人もいますか?「オレはスッピンが好きだよ」〜なんていう口説き文句は21世紀にまだ生きていますか。(2003年12月12日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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