Beethoven 交響曲第9番ニ短調「合唱付き」
(ヘルマン・シェルヘン/スイス・イタリア語放送管弦楽団)


YAMANO MUSIC YMCD-1013 Beethoven

交響曲第9番ニ短調「合唱付き」

ヘルマン・シェルヘン/スイス・イタリア語放送管弦楽団/合唱団(ルガノ)/マグダ・ラースロ(s)/リュシエンヌ・デヴァリエ(a)/ペトル・ムンテアヌ(t)/ラファエル・アリエ(b)

YAMANO MUSIC YMCD-1013 1965年ライヴ

 2022年にお仕事引退以来、ヲタク趣味であるクラシック音楽の音源ファイルの点検整理廃棄を進めております。既にCDは(引退前に)まとめて処分済、Beethovenの交響曲全集はネットに見掛けたら入手するように心掛けて、ずいぶんと貯まりました。もちろん半分も聴けていないのは本末転倒、内容確認しつつ廃棄も進行中。

 Hermann Scherchen(1891ー1966独逸)はWestminsterとの1950年代セッション録音に意外とオーソドックスに好印象を得て、一時話題になった瑞西ルガノでのライヴはCD処分以来、10年以上?あちこちネット上を探し求めて、とうとう入手できたもの。写真は昔馴染みをネットより借りたけれど、今回入手した音源はマスタリング済?とか、記憶よりかなり残響と奥行きが加わって聴き易い、まずまずなものでした。かつての薄っぺらい響き、エキセントリックなイメージはやや薄まりました。

 以前、第2番/第7番を聴いたのはもう20年以上前(恥ずかしい駅売海賊盤)第5番/第6番を聴いたのも似たような昔。すっかり記憶も褪せておりました。素っ気ない速めのテンポ設定、かなりアツい、粗っぽいアンサンブルもライヴならではの勢いを感じさせるもの。あちこちシェルヘン(当時76歳)気合の掛け声一発!が聴かれます。馴染みすぎた名曲は思いっきり新鮮に響きます。

 宇宙の果から未知なる神秘が降ってくる第1楽章「Allgro ma non troppo」は叩き付けるような激しいリズム、速めのテンポに前のめりな熱血演奏。オーケストラの響きに魅力や深みは少々足りないけれど(あまり上手いオーケストラに非ず)それを補って余りある根性入った勢いは充分にラスト迄一気呵成、息も付かせぬほど。細部乱れがちのアンサンブルに、こんな手に汗握る情熱的な表現は最近見掛けないでしょう。(14:22)

 ティンパニ大活躍な第2楽章「Molt vivace」は快速テンポ前のめりに疾走して、これぞスケルツォ! 尋常ならざる根性入った緊張と熱狂は続きます。繰り返し有(これ必須要望)。一糸乱れぬアンサンブルを求めるなら、細部の粗さは隠すべくもない各パートの細かいミスタッチ、リズムのズレあちこち、それでも粗野なホルン先頭に金管のド迫力は聴きものでしょう。(10:50)

 ホルンが深遠な広がりを感じさせる第3楽章「Adagio molt e Cantable」は緩徐楽章。相変わらず速めのテンポ、これは最近の古楽器系演奏並み。さらさらと素っ気なく流れて、木管と弦楽器の静かな絡み合いは浮き立つように、揺れるようにリズミカルにヴィヴィッド。深淵神妙さとは無縁に例の掛け声もダメ押し。5:40辺りからぐっとテンポを落として悠々と歌うところも効果的、パワフルなホルンはかなりの技量と思います。熱と勢いを加えていく緩徐楽章というのも一興でしょう。(12:05)

 取ってつけたような独立したカンタータである第4楽章「Presto-Allegro assai」は、いっそう力一杯叩き付けるようにヤケクソ的ヒステリックな開始、テンポはもちろんかなり速め。「喜びの歌」主題はテンポは落とし気味に深淵神妙な開始、ファゴットとの絡みも美しく、抑制と起伏、メリハリが効いて気分は高まります。"O Freunde"のバスはかなり強面に大仰な表情、合唱も力入ってますよ。テンポは中庸に声楽各ソロ+合唱のバランスはよろしい感じ。オーケストラも合唱もやや響きは薄いけれど、スケールやら落ち着きより、前のめりな熱が続きます。"Alla marcia"は土耳古風打楽器入り、テナーも呼応する合唱も根性入って、オーケストラのフーガもカッコ良いところ。「歓喜」の全合唱はリズミカルに弾んでおりました。ラストは突っ走ってちょっと上滑りな感じも、一期一会なライヴの魅力を感じたものです。(5:45-19:26熱狂的な拍手入り)

(2023年6月17日)

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written by wabisuke hayashi