Beethoven ピアノ・ソナタ第14/23/8番(フリードリヒ・グルダ)Beethoven ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」/第23番ヘ短調「熱情」/第8番ハ短調「悲愴」 フリードリヒ・グルダ(p) FIC TX-013(ANC-22 AMADEO音源の海賊盤) 1967年録音 中古二枚組420円で購入したウチの一枚 「月光物語」的お話は大好き。その昔、4歳年上の兄が「月光ソナタ」の17cmLPを持っておりまして、たしかゼルキンの演奏だった記憶有。ワタシが小学生低学年の頃から馴染んでおりました。ちなみに「悲愴ソナタ」もあって、それはバックハウスだったはず。「熱情ソナタ」を聴いたのはずっと後年でして、社会人になってからかな?FMで聴いた、リヒテルの尋常ならざる燃える鬼神の如きカーネギー・ホール・ライヴでした。そんな出会いだったのに、ワタシはBeethoven の佳き聴き手に育たなかったのです。正直、あまり好みの作品ではない。 Beeやんのピアノだったら(「エリーゼのために」を別格にすれば)「エロイカ変奏曲」とか、ソナタだったら第29/30/31/32番がいいな。1970年頃「コロムビア・ダイヤモンド1000シリーズ」ってあったでしょ?ブレンデルの最初の全集がそれで出ていて、一枚買ったものです。CD時代になって、ちゃんと買い直しました。ああ、あとFMで聴いたグールドはとても知的で良かった。ソナタ全曲は「いつのまにかぼちぼち聴いた」程度。閑話休題(それはさておき) ご近所HARD-OFFにクラシック売り場復活しまして、ハラシェヴィチのChopin と併せて二枚組420円でした。(FIC海賊盤の衣替えで、2000年以降の発売らしい。在庫処分かね)ハラシェヴィチも高貴で美しかったが、グルダが想像以上に集中力を感じさせてリリカルな味わい〜少々驚きましたね。ゼルキンもバックハウスも「激昂するピアニズム」からは縁遠いと思うが、グルダはもっとクールで抑制があって(一見)動きは少ないんです。モダーンな感じか。(油断していると、あっという間に攻め込まれるが。精神的に) 「月光」ソナタは題名通り(誰が付けた題名かは知らぬが)幻想的な作品だから、ほんわか、思わせぶりな表現も可能だと思うんです。「悲愴」(これオリジナル名ですか)だったら、デモーニッシュに重厚さを出したくなるところ。グルダは粛々と、表情もほとんど変えず、やや速めのテンポ、リキみもない〜しかし、音の密度がまったく凄い。しっとり瑞々しい集中力。美しいBeethoven 。ベーゼンドルファーでしょ?スタインウェイみたいな華やかな響きじゃないけれど、弱音がとても豊かでした。(録音は最良とは言えない〜オリジナルCDじゃないから、実体はわからないが) (ワタシ如きの好み云々はともかく)古今東西の名曲に間違いない作品を、グルダは自分の色を付けていないようだけれど、かつて馴染んだ旋律は新鮮な味わいを醸し出します。「熱情」に至っては、リヒテルの叩き付けるような、炎のような表現とは対極にある抑制で、秘めたる思いがジワジワと伝わります。これも悪くない。細部まで明快な技術だけれど、空虚さとか冷たさとは無縁のチカラ強さ。静かな部分でのリズム感の良さ。やがて終楽章は圧倒的な全速前進に至る・・・ 「悲愴」も、どよ〜んとしない。ポイントはリズムとノリです。軽快だけれど、軽量ではない。悲劇だけれど悲惨に過ぎない。第2楽章「アダージョ・カンタービレ」は名旋律だと思いますね。(歌詞を付けてポピュラーにもなっている)こんな部分でのグルダの奥床しい表現はピカイチです。たいへんな技量が必要な作品だけれど、終楽章はむしろ淡々とサラリと表現されて説得力が深い、と感じました。(2004年11月17日)
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