Beethoven ピアノ・ソナタ第27〜32番
(アルフレッド・ブレンデル(p)/1960年代録音)
Beethoven
ピアノ・ソナタ第27〜32番
アルフレッド・ブレンデル(p)
VOXBOX CDX5028 1960年頃録音 2枚組中古で1,000円ほどで購入
Beethoven の作品は、良くできた学術的な本を読むような趣がありますね。知的好奇心を満足させるような感じ。ワタシはBeethoven の佳き聴き手ではなくて、例えば弦楽四重奏曲なんかいまだに親しみが湧きません。(ズスケSQでCDを所有)ピアノ・ソナタも、LP時代にバックハウスによる全集を持っていましたし、ずいぶん長いつき合いになるのですが、やはりちょっと敷居が高い。でも、昔から好きな曲もありますよ。このブレンデルが若い頃に録音した第30〜32番、とくに32番が最高ですね。このCDは、後期の作品6曲タップリ入ったお徳用盤。
「ハンマークラヴィーア」は大曲中の大曲。ここでも43分掛かって、昔はLP一枚分でした。演奏にもよるのでしょうが、この曲は聴く度に感動を呼んで飽きさせません。(聴くのはこれとグルダ)Beethovenの強固な構成が、無駄なく表現されてグイグイ引きつけられる名曲。ブレンデルは知的で、よく考えられた演奏。輝かしい音色を強調したり、大げさな表現はどこにもなくて、必要にして充分な技術と集中力有。
第32番ハ短調がフィル・アップされて、これが凄い。
Beethoven 最後のピアノ・ソナタは、劇的な短い主題が全体を支配して、それが自在に変容されていく名曲。同じ調性のハ短調交響曲が「タタタ・タ〜ン」の主題だったのが「タ・タ〜ン」に変わっている。(第9交響曲と同じ?)緩急・明暗の対比が頻出します。あらゆる無駄が削ぎ落とされてしまって、本筋だけが残ったような厳しい音楽。Bach に近いと思います。
緊張感の持続。アダージョの貴重な静謐さ。少しずつ音数が増え、リズムが高揚して、すべてが和解していく喜びの表現。
2枚目のCDには、28番イ長調→30番ホ長調→31番 変イ長調→27番ホ短調の順番に収録されています。
第28番における、牧歌的で軽快、楽しげで弾むような演奏ぶり。粒の揃った美しい音色。
第30番は、明るい旋律(ちょっと陰がある)から始まって、第2楽章プレスティッシモにおける悲しさの対比、最終楽章の諦観に満ちた変奏曲の高揚とやすらぎ。ちょっと硬質で、明快な音色の魅力。
第31番は細かい音形が語るような、やさしい旋律で始まります。アダージョの途方に暮れたように落ち込んだ雰囲気、フィナーレは、シンプルな旋律が堂々たる構築物に成長するフーガ(これもBach の世界)。明暗の劇的な対比。
第27番は、13分ほどの短い曲。ちょっと暗い旋律で始まりますが、安らかで暖かく、静かに曲を終えます。繊細なピアノです。力んで大叩きするようなことはなくて、知的でリリカルな味わいがありました。
音の状態はまあまあ、VOXにしては良心的。曲によってばらつきがあります。(第32番がもっとも音の状態は落ちる)
ブレンデルのソナタを、全部VOXで揃えようと思っていた矢先、NIMBUSでロバーツの全集を格安で発見(11枚組 3,390円)その誘惑に負けてしまいました。ところが一度もプレーヤーに乗せていない。ちょっと失敗だったかな、と後悔しています。
新しい録音のBeethoven は聴いたことはありません。 (1999年頃執筆?)
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