Ravel ボレロ/「ダフニスとクロエ」組曲第2番/ラ・ヴァルス/スペイン狂詩曲
(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団)
Ravel
ボレロ
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」組曲第2番
ラ・ヴァルス
スペイン狂詩曲
ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団
韓国SKC SKCD-L-0078(EVERESTからのライセンス) 1959年録音との説有 350円
このCDは1990年頃入手したもので、(p)1987韓国SKC製。EVERESTの正規ライセンス盤であって、2008年にEVERCD-004 として再発されているから、入手可能と思います。結論的に(以前ご教授があった通り)、バルビローリの演奏かどうか、かなり真偽怪しい音源が含まれます。HP《戴流庵》yamadaさん説によると、「ダフニスとラ・ヴァルスのみが本物、ボレロとスペイン狂詩曲は別人のもの」〜これはディスコグラフィからも、演奏個性からも類推できる説得力ある内容です。ところが・・・再発成ったEVERCD-004では、ラ・ヴァルス/スペイン狂詩曲がステレオ、ダフニス/ボレロがモノラル収録とのこと、更に1959年録音との情報も得られます。
なるほど改めてこのCDを確認するとその通り、yamadaさん説に従うと、某演奏担当「ボレロ」(モノラル)「スペイン狂詩曲」(ステレオ)、真バルビローリ「ダフニス」(モノラル)「ラ・ヴァルス」(ステレオ)ということになり、モノラル/ステレオが分かれてしまう・・・ようなことは(とくに1960年前後)けっこうありました。まだ、ステレオ録音が草創期実験段階であり、音楽愛好家にはステレオ機器が普及していなかった頃、わざわざモノラル音源に仕立て直し、それがそのまま現在に至る〜みたいなこともありました。逆に、ずっとモノラル録音だと思われていた音源が、じつはステレオ・マスターが残っていて、現代のテクノロジーにて鮮明に蘇る、みたいな記事も時々見掛けるじゃないですか。
「ボレロ」はパブリック・ドメイン音源としてネットで拾えます。だいたい録音年クレジットがないじゃないの(どうやってパブリック・ドメインを証明するのか?)。端正で几帳面な演奏、オーケストラはかなり上手くて、あきらかにバルビローリじゃない(と思われる)。音質も意外と明晰。yamadaさんは、ルネ・レイボヴィッツ説を類推されたが、NMLにて確認すると15:57、このCDでは15:41、空白カウント込みではかなりエエ感じの類似なんだけど、あちらかなり優秀なChesky録音だし(ま、音質を落とすことなど簡単だけれど/逆は不可)8分中盤に登場する、トロンボーンの大仰なる表情付けなど少々テイストが異なるようです(登場時間も少々異なる)。
続く「ダフニス」第2組曲は細部のツメというか、オーケストラの技量が少々怪しい感じ。それでも良く歌う、朗々として雄弁なる演奏であります。これはいかにもバルビローリらしい。音質(オーケストラのサウンドも)は薄手であって、少々頼りないが、合唱も入って雰囲気たっぷりでしょう。ラ・ヴァルスはステレオ収録だから、バルビローリの粘着質な雄弁がわかりやすく表現されて賑々しく、なかなかな素敵です。打楽器のメリハリなどなかなかの聴きもの。これはこのCD中の白眉でしょう。但し、残響不足で乾いておりますが。
「スペイン狂詩曲」は、端正で整ったアンサンブルが「ボレロ」と同一の演奏家を想像させます。オーケストラはしっとりとしたサウンド、厚みもあってあきらかにハレ管とは異なる充実ぶり。バルビローリらしい横流れの節回しも登場しません。ややオン・マイクで奥行き不足だけれど、音質も悪くない。いったい誰の演奏でしょうね。LP初期EVEREST音源に詳しい方にご教授願いたい。「パリのアメリカ人」の時はかなり自信を以て演奏者を類推したんだけれど・・・これは幅がありすぎてワタシの技量では不可能でした。 (2010年11月12日)
その後・・・・・の報告です。
IMG Artistsというところが、オモロイ音源を集めて2枚組シリーズを出してくれまして(2002年)、バルビローリも「復活」を中心として興味深い一組が発売されました。(7243 5 75100 2 8 2枚組1,490円)このなかにRavel 「マ・メール・ロワ」(ハレ管 1957年録音)が収録されており、下記の演奏とはかなり異なるのは事実。
ハレ管って、誠実さが取り柄の団体と思っていたけれど、こうして聴いてみると木管の繊細なニュアンスが素晴らしい。バルビローリの味付けが入念で丁寧、例の如しで少々粘着質の「泣き」も「爆発」もちゃんとあります。でも、重くならないから、聴いていて気持ちヨロシい演奏でした。
録音もこの時期として出色の水準。曲が違うが、彼らしい濃厚な味わいはたしかにあって、雰囲気が相当違います。EVEREST盤の「ラ・ヴァルス」は(鮮明だけれど)奥行きがなくて、まるで(一昔前の)日本のオーケストラのライヴみたいな音質の責任もあるのかも知れません。妙に表面的に聞こえてしょうがない。でも、旋律の末尾をホワっと仕上げるところなんか、バルビ節だと思うんだけどな。
「ダフニス」は雰囲気はあります。「流れがよい」なんて、ワケワカランことを2000年のワタシはほざいているが、これは引きずり系のバルビ節そのものであって、音質イマイチ状態を越えて美しい。でも、やっぱり「全員の踊り」は躍動感が足りんです。金管の弱さも露呈気味か。
「ボレロ」って難曲。これを楽しく聴かせるのは、なかなかたいへんなんすっよ。下の文書では厳しい評価だけれど、久々聴くと一生懸命じゃないの。誰とは言わんが、超剛力オーケストラを使ってサッパリ盛り上がらん演奏に比べると雲泥の誠実さ。「スペイン狂詩曲」は、たしかに素晴らしくてけだるい味わいをちゃんと出しているから、エラい。音質は「ラ・ヴァルス」風、奥行きなし録音ながら。
結論。やや雑然としているがやはりバルビローリの演奏ではないでしょうか。でも、ここ最近、ブーレーズの思いっきり精緻、かつ官能的な演奏ばかり聴いてきたので少々分が悪かったかも。(2002年5月10日)以下は昔のままの文章。
この録音、廉価盤ではそれなりに有名な録音で、いろいろなレーベル名で出ていました。おそらくワタシにとって、もっとも初期購入CDのひとつ。懐かしい。新宿のバッタ屋で購入。スリーヴなし。つまり不良在庫処分。音質それなりだけれど、曲によっては音量レベルが低いのが難点。
「ボレロ」〜この曲好きです。わかりやすいでしょ?オーケストラの力量はモロに出てしまって、さすがのワタシもPILZ辺りのローカル・オーケストラで聴くと相当につらい。(だからといってカラヤンのが良いとは言えないのが難しい)ここではオーケストラの響きが薄くて、誠実ではあるが、力強さと盛り上がりが足りません。スカスカのやる気なし演奏ではないが、ハレ管にこの手の色気と妙技は期待できない。嫌いな演奏ではありません。
「ダフニス」〜これは繊細で、派手ではないが、流れの良さが気持ちよい。このコンビの良いところが出ているようで、女声合唱団(クレジットなし)とオーケストラとの肌理細やかな絡み合いも出色。後半戦の「全員の踊り」は力強さに欠け、大人しい印象。リズム感もやや緩い。録音の印象かもしれません。
「ラ・ヴァルス」は、予想通りバルビローリの歌心が生かされた演奏で、出色の楽しさです。オーバー・アクションなワルツがキマっていて、カラダが思わず揺れるよう。このCD中の白眉。音質も明快。
「スペイン狂詩曲」。「夜への前奏曲」の物憂い雰囲気、「マラゲーニャ」の情熱的なリズムと暗鬱な味わいの両立(オーボエのピッチがなんとなく悪い)、「ハバネラ」の繊細な味付け、などなど聴きどころがいっぱいの演奏。「祭りの日」における喜びの爆発も楽しい。デッドな録音で、奥行きが足りませんが、悪い録音ではありません。
全体として、やや物足りない演奏でしょうか。オーケストラの厚みはともかくとして、色気、みたいなものがもっとほしいところ。それでも、「ラ・ヴァルス」だけでも一聴の価値有。オリジナルのEVEREST録音では、もっと音の状態は良いのかも知れません。(2000年12月15日更新)
その後・・・、「この演奏はバルビローリじゃない、かくたる証拠はないが」といったご意見が存在することを、メールで教えていただきました。EVERESTというレーベルは、演奏家を勝手に変更するようなことはないと思いますが、ま、なにかの間違いはありえますので、なんともいえません。詳しい情報をお持ちの方、(たとえばバルビローリの詳細なディスコグラフィーとか)ご教授下さい。(2001年1月12日)
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