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バルビローリのRavel 管弦楽曲集に関連して

お手紙ありがとう


 先日「バルビローリのRavel 管弦楽曲集」を再聴しましたが、以前から「この音源には疑問がある」旨、メールが寄せられておりました。ま、ワタシの耳も知識もかなりアバウトなので、こういうご指摘は勉強になります。以下、原文に手を加えず掲載します。


ご無沙汰しております。HP《戴流庵》の管理人のyamadaです。

バルビローリのラヴェルについての話題が挙がっておりましたので、私の手元の データと若干の推測をお伝えしたく思い、メールいたしました。

件のバルビローリ/ハレ管と称するラヴェル・アルバムですが、私の手元にも、 別系統の廉価盤であります。私の所有するものはFAT BOYというイギリスの会 社からCD化されたもので、ライセンスはTKOという会社にあると表記されていま す。このTKOについては寡聞にして存じ上げないのですが、FAT BOYの一連 の廉価盤シリーズのラインナップをみると、一見してEVEREST系の音源であると いうことが判ります(例:グーセンスのストラヴィンスキー、ザグレブ室内管のヴィヴ ァルディ、クリップスのベートーヴェン全集)。

当然収録曲もhayashiさん所有盤と 同一のボレロ、ダフニス、ラ・ヴァルス、スペイン狂詩曲となっております。購入時 期は明確には覚えておりませんが、(P)(C)ともに1994年となっておりますので、 おそらくその頃のことだと思います。

さて、この音源が果たしてバルビローリのものかどうか・・・ですが、私はダフニスと ラ・ヴァルスのみが本物、ボレロとスペイン狂詩曲は別人のもの、と推測しておりま す。手元のHUNT氏のディスコグラフィーに載ってないから・・・では少々身も蓋も ないのですが、その辺のデーターを下に、どうしてこんなことになったのか、そして それでは誰の指揮によるものか、私なりの推測をしてみました。

HUNT氏のディスコグラフィーに乗せられているバルビローリのラヴェル録音は、 ダフニスとラ・ヴァルスのほかには先般IMGからもCD化されたマ・メール・ロワがある だけです。録音年は前2曲が1959.9、ロアが1957.5となっております。そしてそれ ぞれの発売履歴ですが、前2曲は常にカップリングされて、Pye→Vanguard→ Reader'sDigest(以上LP)、そしてEMI(CD)となっています。

おそらく前2曲がPyeから発売された当初は25cm盤の両面に一曲ずつカップリング されていたのでしょう。それがVanguardとReader'sDigestにライセンス供与され、 特にVanguard社が30cmのLPとして発売する際に、自社で所有していた音源と 組み合わせて60分超の長時間録音として発売したのではないでしょうか。

そしてこのVanguard盤を基にして(LPの板起こしではないでしょうが、おそらくオリ ジナル・マスターではなく、プレス・マスター)CD化が為された際に、一応名の通っ ているバルビローリの名前だけが残され、追加された2曲の演奏者についての データーが欠落したのではないでしょうか(意図的かどうかは判りませんが)。

んで、ではこの2曲は誰のものか・・・ですが、Vanguard/Everest、あるいは Reader'sDigestのアーティストでしょうから、可能性として挙げられるのはサージェント ・グーセンス・レイボウィッツ・ゴルシュマン・アブラヴァネル・・・といったところで しょうか?このうち、サージェントについては、同じくHUNT氏のディスコグラフィの 記載から、候補から外すことが出来ます。

残された可能性ですが、私はレイボウィッツ8、 グーセンス3くらいの可能性かな?と考えています。なぜレイボウィッツの可能性 のほうが高いのかというと、hayashiさんも指摘されている通り、ハレ管と考えてもお かしくないほどヘナチョコな部分のあるオーケストラ、グーセンスならロンドン響でしょうから 一寸考えにくい。それに引き換え、レイボウィッツならパリ演奏家協会管という名義 のパリのどこかのオーケストラだと思うのでまぁ、このくらいのことはあるかな・・・と(笑)。

問題はレイヴォウィッツだとすると、Everestより、Reader'sDigestの録音の方がしっ くり来るということです。混乱の経緯からするとEverestのアーティストの方が妥当なの ですが・・・まだ検討の余地がありそうです。

音質ですが、私の手元のCDではラ・ヴァルスとダフニスは明らかに録音のクオリティーが 悪いです。レンジが全体的に狭く、テープヒスもあります。如何にも丁寧なマスタリン グを経ていないPyeの録音といった感じです。一方ボレロとスペイン狂詩曲の方は、 比較的透明感のある録音で、EverestまたはReader'sDigestの録音ならなるほど、と 思える程度のクオリティーです。

この点からも、私の手元のCDでは一聴して音源が 違いそうだと思わせます。ちなみに同じPye録音でもマ・メール・ロワは丁寧なマスタ リングが施されているようで、えらく綺麗に響きます。

まぁ、この音源・LPに関わってきたレーベルはいずれも諸事情の多いところで、様々 な混乱があって当然な感じですから、この程度のことはあたりまえなのかも知れませ んが、それなりに数のいるバルビローリ初心者(私もですが)には迷惑な話ですね。

以上長々と当て推量ばかりですが、手元にある乏しいデータから導き出した結論です。 ご参考になれば幸甚です。

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yamada , satoshi


(それに対してのワタシの返答の趣旨)〜メール・データ偶然に紛失のため

・ 「ボレロ」と「スペイン狂詩曲」には、やや「バルビ節」が不足し、調子が悪かったのか、と思ったこと。
・ EVERESTもReader'sDigestも、もともと相当の優秀録音であったはず
・ パリ演奏家協会管とは、けっして怪しげな演奏団体でもなく、パリ音楽院辺りの変名の可能性もあること。(ま、それにレイボヴィッツって、けっこうテクニシャンでしたよね)

〜で、ワタシのサイトに掲載しましょう。とのお誘いをしました。


バルビローリのラベルの件、前回のメールで不十分だった所を補足しながら もう一度整理してみます。

まずHUNT氏のディスコグラフィからの整理です。

ダフニスとラ・ヴァルスともに(というかA/B面で)初出LPはPyeからで、 GGC4010/GSGC14010で出ています。以下

Pye : GSGC15013/gsgc2011
Vanguard : SRV177/SRV177SD
Reader's Digest : RDS8012

とLPで都合4度のリリースがあったようです。

CDはHUNT氏のディスコグラフィでは

EMI : CDM7637632

が載せられているのみです。これはPye/Nixaの音源がEMIに移行した後 にEMIのPHOENIXAシリーズとしてCD化された一連のCDに含まれていた ものと思われます(手元のPHOENIXAシリーズと型番が近いです)。

国内でのCD化はテイチクから一連のバルビローリ録音がリリースされた際のCD のオビにはラヴェルのラの字も見えないので、多分外されていたんだと思 います。

また、バルビローリの録音契約も1959年時点ではまだPyeとの専属時期で すからこの点からも、オリジナル音源はPye音源で問題ないと思います。

次にバルビローリのPye音源が他レーベルに流れた例をHUNT氏のディス コグラフィから拾ってみると、これが結構な量になる・・・というか、ほとんどの Pye音源がVanguard名義でLP化されていたようです。

ここからは推測にな りますが、NixaからPyeへ名義が移行する前はWestminsterがその任に当たっ ていたように、おそらくイギリスの会社であるPye/Nixaはアメリカでの販売を 一時期Vanguardに委託していたのではないでしょうか?

ちなみにボウルトの Pye録音もWestminsterやVanguard名義で発売されたものがそれなりにある ようです(もっともボウルトの場合、両レーベルへのオリジナル録音もあるため に少々複雑な状況になっていますが)。このあたりのことはどこかに詳しい人 がいそうですが・・・。

次に音質の話ですが、私の音響環境に限界があることを承知で、あえて自分 の耳で聞いた印象で語りますと、ボレロについてはオリジナルは結構クリアな 音質であったろうと思わせる節が多々あります。あまりホール・トーンのような残 響は採らずに、個々の楽器の音を丁寧に拾っている印象があります。

ただ、 左右の分離は悪くないのに、あまり広がらないという印象も残ります。ダフニス とラ・ヴァルスについては元々レンジが狭かったのでは?と思わせる音質で、 Fでかなり潰れ気味になっており、ボレロと同一の録音条件とはちょっと考えに くい感じです。続けて聴いてしまうと、どうしても両者の音質差は耳につきます。 これは私の手元の盤(Fat Boy盤)のみの特徴なのかもしれません。

ちょっと、この辺りの音質差からVanguardやReder's Digestを想像してしまった のですが、上記のような整理をしてみたら、ボレロ、スペイン狂詩曲については 必ずしもVanguard音源である必要もないか・・・と思い直しました。Vanguardの 音って、もう少し、悪く言えばドギツイところがありますから・・・(笑)。

で、ありそう なのは、Pye音源の誰か別人のもの・・・あたりの可能性もあるのでは、と。 ぱっと考えて思い当たる人もいないのですが、どうでしょうか?フランスもの・・・ あまりマジメに追いかけていないのでピンと来るものがないので、候補者はとり あえず未定にしておきますわ(笑)。これからは少し気をつけて見たいと思います。

ということで、前回のメールの補足+新らしい推測でした。もとより不十分なもの ですが、こういった怪しい音源の話って結構面白いですよね(笑)。

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yamada , satoshi

(2002年5月17日)


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written by wabisuke hayashi