Bach 管弦楽組曲全曲(コレギウム・アウレウム1969年)


BVCD-8803/4 2枚組中古1,155円

Bach

管弦楽組曲 第1番ハ長調BWV1066
ヘルムート・フッケ、クリスチャン・シュナイダー(ob)/ヴェルナー・マウルシャット(fg)

第2番ロ短調BWV1067
ハンス・マルティン・リンデ(ft)

第3番ニ長調BWV1068/第4番ニ長調BWV1069
ロベルト・ボーデンローダー、ピエール・マティス、エドワード・タール(tp)/ラルフ・ペインコーファー(tp)

コレギウム・アウレウム/フランツ・ヨゼフ・マイヤー(v)

BVCD-8803/4 2枚組 1969年録音

 これはブランデンブルク協奏曲と一緒に中古にて入手したもの(2006年)、各々43分ほどという贅沢収録。これほど著名でありながら、ブランデンブルクほどに人気はない(実演でも接する機会は少ない)不思議な作品であります。代表的録音はカール・リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団か(1961年)、LP時代より拝聴してきて、あまりに謹厳実直立派過ぎる集中力に、とてもだけれど、CDを棚中より取り出す勇気はありません。数少ない某生演奏のレビューをネットにて拝見したことがあるけれど、演奏至難との噂。この作品との出会いはおそらく12歳くらい?カラヤン、またはマゼール、もしかして第2番はカザルスかも。やがて衝撃の古楽器時代がやってまいりました。もちろん現在の基準はこちらだけど、先日Bach 組曲(Mahler 編)〜ペーター・ルジツカ/ベルリン放送交響楽団(旧西)(1975年)巨魁なる演奏に仰け反って、Bach 受容の歴史をしみじみと考えさせられたものです。

 スッキリ小編成溌剌リズムの演奏って、意外と最近なんですよ(概ねディジタル時代以降主流に)。コレギウム・アウレウムは1962年から活躍して人気もあった古楽器団体。学術的には折衷的(だそう)、楽器復元も中途半端、編成も意外と大きく、リズムはやや旧態にマイルド・・・って、それは専門筋の方の評価であって、我ら音楽愛好家は瑞々しい残響と、典雅な雰囲気を素直に楽しんだらよろしいのでしょう。録音用の団体だったらしく、やがて古楽器考証研究実践が進み、先鋭的な新録音が出現すると消えていった・・・と記憶します。1980年台初頭か。

 第1番 ハ長調BWV1066の編成は オーボエ2本とファゴット(通奏低音兼任)+弦楽4部。4曲とも緩急緩のフランス風序曲が冒頭に配置されます。最近は「緩」の部分も弾むような快速「急」との対比が比較的少ないものも多いけれど、耳あたり良い瑞々しくも分厚い響き、堂々たるテンポにて開始。逆に「急」部分は焦らず対比は極端に非ず。オーボエは朗々と歌い、ファゴットは低弦と抱き合わせて悠々としたリズムを続けます。クーラントも典雅な雰囲気にテンポはゆったりめ、続くガヴォットも雰囲気は変わらない、現代の耳ではあまりにノンビリなほど優雅、変化を強調しません。

 フォルラーヌに至って、ようやくリズムは(やや)跳躍します。メヌエットのノンビリ具合は作品ぴたり!であり、ブーレの(やや)テンポ・アップとの対比は効果的。ラスト「パスピエ」もなんて落ち着いた風情なんだ・・・オーボエの(やや)粗野な音色に痺れました。

 著名な第2番ロ短調 BWV1067は、名手ハンス・マルティン・リンデによるフルート協奏曲であります。フランス風序曲は現代の古楽器風表現に接近しており、「緩」はかなり快速+付点リズムを強調しております。「急」部分は馴染みのテンポ+自然なノリ、ま、なんといってもリンデのフラウト・トラヴェルソが軽快なる技巧+深い音色であって、フランツ・ヨゼフ・マイヤーのヴァイオリン(ソロ的扱い)と絡み合って聴きものであります。ロンドも通常テンポによる悠々とした余裕、サラバンドも(古楽としては)憂愁なテイストがあり、ブーレに咳いた印象はない。あくまで優雅。ポロネーズもかつて聴いた現代楽器系と変わらぬ歩みであり、中間部のフルート・ソロも余裕です。メヌエットも雰囲気は変わらない。終曲「バディヌリー」も速さを競うのではない、リンデのしっとりとした音色を堪能すべきもの。

 この作品って、あまりに立派に演奏するとすごく深刻に重く、暗くなるんですよね。ここでは適度なバランスと、力みがないところがよろしい。

 一番人気第3番ニ長調 BWV1068。ここでの序曲はスケール感、テンポ設定は現代楽器系と変わりません。壮麗にスケール大きく、但し、サウンドは古楽器系柔らかいもの。保守的といえば保守的、旧態といえば旧態、しかし威圧感がないのがよろしい。アリアの雰囲気も懐かしい「G線上のアリア」風安寧であって、低弦はピツィカートに非ず(譜面はどーなっておるのでしょうか)。この辺り、トレヴァー・ピノック旧録音を拝聴した時には、あまりの変貌ぶり(先入観ぶり破り、装飾音一杯)に仰け反ったものです。現代楽器を渋く抑制したような美しいサウンド・旋律堪能いたしました。

 ガヴォットも旧来の雰囲気と変わらない。ブーレは全曲との違和感ないテンポ・アップ有。賑々しい「ジーグ」もスケール充分。全体として、旧来からのスタイルから一歩も外にでていなくて、そのまま柔らかいサウンドに仕上げた印象です。

 第4番ニ長調BWV1069って、第3番と楽器編成同じなんですね。作品の雰囲気もクリソツ、但し第2/3番聴き過ぎたせいか、第1/4番のほうが好ましく拝聴しております。言及し漏れたけれど、トランペットが上手いんですよ、名手揃いなんだから当たり前といえば当たり前。でも、古楽器ってもっと粗野で苦しそうなイメージ(そのほうが味がある)ありました。フランス風序曲の保守的テンポ設定(リズム感に不足はない)も前曲と同じ、全体として、瑞々しい豊かな残響を安心して楽しめる・・・

 ・・・音楽に対する真摯な姿勢を失いつつあって、大Bach 管弦楽組曲まとめて(しかも【♪ KechiKechi Classics ♪】掲載するのに数度繰り返して!)拝聴というのも久々。第2番の序曲を除いて、ほぼ旧来の表現であり、古楽器のザラリとしたテイストを味わい深く堪能いたしました。音質極上。

written by wabisuke hayashi