Bach 管弦楽組曲第2番ロ短調/第3番ニ長調/
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調
(トレヴァー・ピノック/イングリッシュ・コンサート)
Bach
管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV1067
管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068(1978年)
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調 BWV1060a(1984年)
トレヴァー・ピノック/イングリッシュ・コンサート/スティーヴン・プレストン(トラヴェルソ)/サイモン・スタンデイジ(v)/デイヴィッド・ライヒィンバーグ(ob)
DG GCP-1012 @250
この管弦楽組曲は旧録音のほう。こどもの頃よりカラヤン、マゼールにて馴染んでいたお気に入り作品となります。今更、といった話題だけれど、ここ数十年のバロック音楽の演奏スタイルは大変貌いたしました。21世紀は古楽器による溌剌リズムに溢れ、しかも技術的には飛躍的に洗練された演奏ばかり。現代楽器による演奏は稀少となって、逆に大昔の演奏(カザルスとかクレンペラー)が、妙に新鮮に感じられる今日この頃であります。
このピノック盤を聴いて仰け反りました。第2/3番とも第1楽章は緩急緩のフランス風序曲でしょ。これがかつてのイメージでは、物凄く荘厳に、立派に、巨大に、浪々と表現するのが当たり前でした。残りは短い舞曲の連続だけれど、これもけっこうハードに演ってましたね。Syuzo師匠がカール・リヒターを絶賛していたけれど、ワタシもLP時代しっかり聴いていて、”物凄く荘厳に、立派に、巨大に、朗々”スタイルが怖くてCDにて再聴できておりません。
組曲第2番ロ短調はフルート協奏曲だけれど、”荘厳、立派”であるはずのフランス風序曲冒頭”緩”開始から、快速テンポにてスタッカート、急いて落ち着かない、素っ気ない〜”急”部分は颯爽と流れが良くてノリノリ、プレストンは上手いですね。現代楽器でもそうとうの難曲だけれど、古楽器を流麗に扱って技巧の冴えは鮮やか。繰り返しなし。ロンド/サラバンドは意外とウェットな表現であり、続くブーレもオーソドックス。ポロネーズ(例のChopin を思い出せ)はリズムをしっかり刻んで落ち着いた味わい、メヌエットも同様。ラスト、バディネリもあわてず騒がず、じっくりと細部を描きこんで違和感はない。
結局、序曲のリズムの刻みが耳慣れぬ(当時/現在ではこちらのほうが馴染み)だけで、ほかはしっとりと洗練された古楽器の響きとリズムということです。これは次の組曲第3番ニ長調でも同様。フランス風序曲に於ける”緩”部分がリズミカルで快速なんです。”急”部分の流麗なノリとトランペット、オーボエ(+スタンデイジのヴァイオリン)の洗練もお見事。ここはトランペット+ティンパニだから、現代楽器だったら物凄く立派に、大柄に表現してしまうところ。こんな親密な表現のほうがずっと素敵だと思います。ここでも繰り返しなし。
ワタシは硬派”繰り返し推奨”主義者だけれど、全体バランスから考えて、ここではこれで良いかな、とも思います。当時のチェロは(たしか)名手ヤープ・テル・リンデンであって、縁の下の力持ちとして自在な技巧を駆使していることが理解可能です。ファゴットで強化された通奏低音も効果的。
問題は次、Bach 最大のヒット・メロディ「アリア」であって、低弦はピツィカートではない(いったい楽譜はどーなっておるのか)。むしろリズムを強調せず、ソロ・ヴァイオリン(というか、第1ヴァイオリンが一人なんでしょう)の自由な装飾音前面の素敵な楽章に仕上がっておりました。ガヴォット/ブーレのリズムのキレは期待通り、ラスト・ジーグは落ち着いてしっかりとした足取りで、しかも重過ぎない。響きは先鋭に過ぎない。
1978年の録音だから、一世代回りました。初耳時には仰け反ったが、現在ではこれが当たり前になりました。かつてのスタイルから考えたらほとんど別の作品に思えます。
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オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調 BWV1060a〜これも凄い名曲であって、LP時代はヴィンシャーマンでお馴染みでした。2台のチェンバロのための協奏曲 第1番 ハ短調(BWV1060)から復元されたものであって、これはエキセントリックな表現は微塵もない、しっとりとした英国穏健派古楽器のスタイル。ライヒェンバーグのオーボエも素朴粗野を強調しない。スタンデイジのヴァイオリンも美しい、個性ある音色として響きます。両端楽章の緊張感を強調せず、アダージョは淡々として落ち着いた味わいでした。 (2010年8月20日)
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