Bach ブランデンブルク協奏曲第3/4/5番
(カレル・ブラズダ/スラヴォニア・フィルハーモニー)


デ・アゴスティーニ CC010。いわゆるPILZ音源。100円 Bach

トッカータとフーガ ニ短調

オットー・ヴィンター(or)

「G線上のアリア」

イーゴル・ゴーゴリ/マズリア室内管弦楽団

ブランデンブルク協奏曲第3/4/5番

カレル・ブラズダ/スラヴォニア・フィルハーモニー

デ・アゴスティーニ CC010。いわゆるPILZ音源。録音年不明  中古100円にて購入 (p)1998 Point

 いまでも時々、中古屋激安処分で見掛けるシリーズの一枚。21世紀を数年過ぎ去って、残念なことにクラシック音楽界に「ばんばんCD売れまっせ」的新しいスターも登場していないみたいだから、かつての定番(または隠れた)巨匠音源が激安セットでつぎつぎ登場しております。で、さすがにこのようなCD(知名度ともかく、匿名変名怪しげ音源)の存在感は薄れつつあります。(おそらく”イーゴル・ゴーゴリ(?)”、”カレル・ブラズダ/スラヴォニア・フィルハーモニー”も仮名、というか実在しない団体個人。オットー・ヴィンターもPILZ音源でしか出会えず、ミクローシュ・シュパーニとの標記も存在する場合も有、とのこと)

 でもね、「100円CDの愉悦」って、音楽を楽しむ上での原点だと思います。カバーもない古本文庫本50円だって、ココロゆたかに楽しませて下さることがありますよね。それと同じ。音楽の価値は知名度やら、ましてや価格じゃないでしょ。ワタシは2年ぶりにこのCDを取り出して、すっかりシアワセな気持ちになりました。訳知り顔の蘊蓄知識や先入観抜きに「嗚呼、Bach って素敵だ」と思わせて下さるCD。ワタシは合成樹脂(CDの材質)や、ディジタル信号のコレクターではなく、”音楽”を楽しんでいる、という自明の理であります。

 選曲が素晴らしい。ブランデンブルク協奏曲第3/4/5番がきっちり全曲収録され、良く知られた「トッカータとフーガ ニ短調」「G線上のアリア」がおまけ〜ありがちな初心者入門CDが、あちこち中途半端な抜粋収録しているのとは姿勢が異なりますね。ちゃんと聴き応えある品揃え。オットー・ウィンターのオルガンは、速めのテンポ、しかも緊張感溢れるもの。音質も良好で驚くべき程革新的なこの作品の魅力を、余すところなく引き出して下さっておりました。

 「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068第2楽章)は、現代楽器によるオーソドックスな演奏(最近の古楽器系リズムを強調したものではない)でして、少々ザラリとした触感の弦が充分敬虔静謐であって、通奏低音の自由な動きも魅力的でした。(余談だけれど”マズリア”とはポーランドの湖沼地帯らしい。PILZ系音源ではBeethoven の交響曲第6番「田園」も有〜マズリア・フィル名義の音源もあります。”マズリア・フィルハーモニックは、クラクフやダンツィヒ等の都市の優れた奏者を集め1988年に設立されたポーランドのオーケストラ。交響曲から古典、ロマン派、オペラなど幅広いレパートリーを持ち、現在は世界中のインターナショナル・フェスティバルに参加するツアーを続けている”との情報有

 ブランデンブルク協奏曲も現代楽器による、室内管サイズとなります。録音水準は並。”Bach の魅力表出は、あらゆるスタイルを問わない”という真理を証明するような演奏です。特別に”この演奏でなくては!”ということでもないが、シミジミ感動いたしました。(使用楽器演奏スタイルさえ感動の質に影響はない。ポープル/ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団盤と同様の感想ですね。いえいえティトフ/サクト・ペテルブルグ「クラシック音楽スタジオ」管弦楽団だって同じこと)

 躍動控えめな第3番ト長調、の典雅でジミな響き(第2楽章に即興付加などは存在せず、さっぱりとしたもの)。あくまで優しく、ふっくらとした味わいの第4番ト長調(フルートの響きだって、けっして場違いではない)のヴァイオリン・ソロは少々弱い。第5番はスケールは大きくなく、長大なるチェンバロ・ソロの見せ場で音色の魅力に不足する(おとなしいが金属的響き)・・・が、なんのその。

 ”湯水の如く廉価盤を購(あがな)った挙げ句、ちゃんと集中して聴いてあげない”というワタシに天罰が下って、敬愛するBach のCDがすべて盗難される・・・残ったのはこの一枚のみ。そんな事件が仮に発生しても、ワタシの乾きはこの一枚でかなり癒されることでしょう。もっと謙虚に音楽に対峙しなければ。音質はそこそこの水準であります。  

(2006年2月8日)


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written by wabisuke hayashi