アンチェル/チェコ・フィル(アスコーナ・ライヴ1958)


ERMITAGE ERM 142ADD
Smetana

歌劇「売られた花嫁」序曲

Dvora'k

交響曲第9番ホ短調 作品95 「新世界より」

Mussorgsky(Ravel 編)

組曲「展覧会の絵」

アンチェル/チェコ・フィルハーモニー

ERMITAGE ERM 142ADD 1958年10月10日 スイス・アスコーナ・ライヴ  980円(?)で購入

 現在は「AURA」とレーベル名を変えた「ERMITAGE」(隠者の住まい、の意)の代表的一枚。おそらくは、この黄金の名コンビがスイス・ツァーをしたとき、スイス・イタリア語放送局が収録したものでしょう。この三曲でも充分コンサートは成り立ちます。(p)1994となっており、正直いくらで買ったか記憶なし。1000円は出していないはず。

 モノラル録音と推察されるが、おそらく人工的に広がりが付加され(それは成功している)たいへん聴きやすい、自然な音質で収録されております。ワルシャワ条約統一軍が「プラハの春」を蹂躙し、アンチェルがカナダに亡命するちょうど10年前のこと。この人、レパートリーは狭かったみたいで、同じ曲ばかり数種CDが出ていたりします。(ワタシのサイトにも「新世界」〜VSOとの〜が)

 「売られた花嫁」における、猛烈なテンションの高さと勢いグイグイは想像通り。コレを皮切りにして、全74:59〜あっという間に聴き終わります。このスピード・切迫感が継続します。正直、ずいぶんと聴いているCDだけれど、コメントをつけるのはとても難しい。あちこちと「ああ、こんなところが!」とか「おお、なんというジミジミとした」みたいな「重箱の隅ほじほじ仕組細部探索」を楽しむべき演奏ではない。

 ライヴならではのアツさと、驚異的なアンサンブルの水準も同時に楽しめます。これが1958年のライヴとは信じられない。

 「新世界」交響曲って、一種特有の親しさ懐かしさ、とか、胸ハズむ希望を感じませんか。いえいえ、このアンチェルの演奏が「ノスタルジーもなにもない」なんて言っているんじゃないんです。もっと自然というか、演奏者にとって当たり前の約束事というか、委細かまわず(ほんまはたいへんにかまっているはずだけれど)一生懸命やったら、こんなアツい演奏になりました、みたいな印象。

 第2楽章「ラルゴ」〜いえいえ「家路」でいいじゃないですか。たまにね、しっかりと「間」をとって切々、という演奏もあるでしょ。そのほうが似合う曲調かも知れません。ここでもスルリ・サッパリと、そして流れよく、快く進みました。やはり勢いがある。オケがね、柔らこうて、ええ感じ。チェコ・フィルってやっぱり、アンチェル時代が全盛期だったんでしょ。

 スケルツォ楽章のティンパニのド迫力。バチさばきに腰入ってます。終楽章〜コレ、次の「展覧会」でもはっきり気付くけど、この金管の切迫するヴィヴラートはなに?音色が泣き叫んでますよ。いわゆる金属的・無機的な金管じゃなくて、人の声が押し寄せるような錯覚がある。いえね、売り物の弦の暖かさ、木管の素朴さになんの文句があろうか?状態は言うまでもなし。

 いわゆるトスカニーニ方面演奏だけど、もっと「一筋」的自信に満ち溢れて、強引さとか、もちろん鈍重さとは無縁のカッコいい「新世界」でしたね。ぼやっと聴き流しちゃいけないよ。はっきり言って、VSOの録音〜なんやら遠慮気味で盛り上がりに欠ける〜とは大違い。


 「展覧会の絵」〜まったく同傾向(当たり前か)の演奏でした。早めのテンポで、テンション高く、さぁ、バンバン行きまっせぇ、的演奏。トランペット?この切迫感にはドキドキさせられますね。チェリビダッケの録音聴いたことあります?微速前進、どのパートももうとことん細部まで徹底濃厚味付け演奏。あの世界とは正反対か。

 こういう曲はカラヤンが上手いんです。これとも路線が違う。表現的にはもちろんだけれど、オケの個性の生かし方じゃないのかな。もっと誠実で、甘さがなくて「端麗辛口」。どちらがカッコよいと感じるかはお好みだけれど、シンプルでトラディショナルなスーツ。オトコに化粧もアクセサリーも必要ないですよ。大切なのは清潔感。(反省します)

 ワタシはアンセルメの語り口の上手い、華やかな演奏が好きだけど、こういう誠実一路な演奏にも胸打たれますね。繰り返すが、とくに〜とくにですよ〜金管が良い味出してますね。トランペットにはなんども(ラストまで惚れ惚れする)触れたけれど、「ビドロ」のチューバのヴィヴラートだってかつて聴いたことのない色気の固まり。「リモージュの市場」における快速テンポ〜それを楽々とこなす金管群の超絶技巧。

 「カタコンブ」〜「ババ・ヤーガ」〜「キエフの大門」〜このクライマックスは金管の魅力爆発。凄く迫力と奥行きを感じるが、空虚なやかましさを感じさせない。アンチェルはいつも知的なんです。そして暖かい。いえいえ存分にアツい。清潔なリズム感もある。一枚聴くとたいへんなる満足感が残って、まさに一夜の演奏会を聴き終えた気分。会場の拍手も暖かい。(2003年8月1日)


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written by wabisuke hayashi