Mussorgsky 組曲「展覧会の絵」
(エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団)
Mussorgsky
組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)
交響詩「禿山の一夜」
歌劇「ホヴァーンシチナ」前奏曲
エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団
(輸入元エコー・インダストリー)CC1056 1959年録音(DECCA音源) 250円で購入
原曲のほうはリヒテルの1958年ソフィア・ライヴに限ります。LPで2回購入、その後FMエア・チェックでDATへ、更にこのたび全曲収めたCD(PHILIPS PHCP-9597)を680円で購入しました。うわさによるとホロヴィツのが凄い、とのことだけれど残念ながら聴いておりません。いろいろ聴いてみるが、あの音質の悪いリヒテルに帰ってしまう。壮絶な演奏。
この曲、こどもの頃から馴染みだし、好きな曲なんです。でも、リヒテルの演奏が念頭にあって、どれを聴いても満足できた試しがない。チェリビダッケの日本でのライヴ(これはカセットに有)も、ゲルギエフ(これも日本での放送をエア・チェック)も、テンションの高さでは文句なし。CDではライナー/CSOで文句あるか、というくらいオーケストラの力量にドキドキはするんです。カラヤンのだって悪くない。
ま、どんなんでもいいや、というのがラヴェル編曲版に対する正直な気持ち。岡山交響楽団で聴いたナマ演奏は別格の感動でしたが。でも、以前から気になっていた(なんどか聴く機会があった)アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団を、中古250円で手に入れて驚愕。これ、オーマンディ盤なんかと並んでかつて(1960年代?)は「定番」と評価されたものです。
誰でも気付くのは明快な音質でしょう。(ここからコメント始めるのは、ワタシのサイトでは少々掟破りか)音質というのは、オーディオ的な評価とは一致しなくて、戦前(第2次世界大戦ですよ)のライヴなんかでも、充分熱意が伝わることがあるからよくわからない。でも、60年代のDECCA録音はひとつの個性であり、やや不自然なくらい艶とか奥行き、広がりがあって、それはこの海賊盤でもちゃんとわかります。
クールで鮮やかな色彩。どこをとっても色気を感じさせる各パート。極上の鮮明な録音だから、それだけでゾクゾクきますね。「展覧会の絵」は、どの方向にもっていくか?原曲のロシア・コテコテ濃厚方面か、それとも「オーケストラの腕の見せどころ」とばかり朗々と雄弁に表現していただくか、それともフランス・ラヴェル・色彩・粋方面か。(どれも興味深い)
これ、言うまでもなく「フランス方面」でして、冒頭、ちょいとヴィヴラート掛かったトランペットから、明るくてカルい。旋律の歌わせ方〜とくに末尾があっさりとしていて、独墺系の息の深い(というかしつこい)世界とは全然違います。アンサンブルは優秀だけれど(録音のときだけ、というウワサもあった)、縦線が息詰まるような足並み揃い、とは少々異なっていて、もっとノビノビした印象もあります。
ときどき管の音程が怪しくなっている(悪い意味じゃありません)のは、他でも聴かれる現象。大音量で爆発する部分にも抑制があって、「オーケストラの圧倒的威力にて怒涛の快進撃」みたいになりません。これは「粋」の線を崩さないからです。もしかして、オーケストラの響きはもともと薄くてBBB(独欧の三大交響曲作曲家)なんかには向かないのかもしれません。
これ、お勧めです。中古屋さんへ行けばいくらでも安く売っているから買いましょう。「禿げ山」も妙に新鮮、「ホヴァーンシチナ」にはもっと引き締まった表情が欲しかったところ。でも、フィル・アップ的に配慮ある組み合わせだと思います。気持ちのよい、さわやかな演奏でした。(2002年2月8日)
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