Mussorgsky 組曲「展覧会の絵」(アンセルメ/ロンドン交響楽団1947年)
Lalo スペイン交響曲(ティボー(v)1941年ライヴ)


CENTURIONCLASSICS IECC10006-4
Mussorgsky/Ravel編

組曲「展覧会の絵」

エルネスト・アンセルメ/ロンドン交響楽団(1947年)

Lalo

スペイン交響曲

ジャック・ティボー(v)/アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1941年ライヴ)

CENTURIONCLASSICS IECC10006-4 10枚組1,990円のウチの一枚

 1959年スイス・ロマンド管弦楽団との録音は爽快でした。「クールで鮮やかな色彩。どこをとっても色気を感じさせる各パート」 〜なるほど。アンセルメの録音歴は長いし、ステレオ時代まで膨大なる録音が存在するから、ムリして旧録音を聴く必要もないでしょうが、いえいえけっこう楽しめるもんです。価格も安かったし、スリムな紙パック収納も好ましい。但し、録音情報は少々不親切でした。調べればわかるけれど。

 「展覧会の絵」は音質極めて良好。ここでのロンドン交響楽団は、ややヘタクソっぽい。けど、のびのびとした明るい雰囲気に充ちて、さっぱり軽快なる語り口に好感は持てます。「アンセルメのバランス感覚はジョージ・セルに匹敵する」との記事を拝見したことがあるが、ほんまでしょうか。アンサンブルの集中力というか、”一糸乱れぬ”的サウンドではないような、微妙な緩さも有。だから”ヘロ演奏”という結論にはならないけれど。

 このRavel 編のキモはトランペットでしょう。冒頭「プロムナード」から大活躍!・・・だけれど、これがあまり上手くない。あちこちややピッチ怪しく、「サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュイレ」に於けるトランペット・ソロは相当に苦しい、というかたどたどしい感じ。(だからダメ演奏ということに非ず)全体として旋律を雄弁に煽らない、中庸なテンポを維持して晴れやか、すとんと素っ気ない表現は、作品によってはぴたり!と似合うんです。この作品も代表例か。

 ラスト「キーウの大門」で、拍子を倍にとって(つまりテンポを倍に落として)壮大なるクライマックスを作り上げるアンセルメ。ここでもアンサンブルが乱れ気味で、逆にそんな人間臭い感じがエエじゃないですか。剛直とか、威圧感とか、そういうものとは無縁な”楽しい”演奏でした。

 スペイン交響曲は時代故か、「間奏曲」抜きの4楽章版となります。音質は「展覧会の絵」より少々落ちるものの、そう悪いものとも言えません。著名なる作品であり、ワタシも良く知った旋律だけれど、馴染み(お気に入り)とは言い難い・・・というか、これといった演奏に(偶然に)出会っていないだけと思います。ジャック・ティボーのMozart は、もの凄くカッコ良かった記憶があります。もともとの音源状況がわからないからなんとも言い難いが、(伴奏に関しては)ノイズと一緒に大切なものも失った・・・的感想です。ソロは明快(そういう音録り)だし、ワリと聴きやすい音質でしょう。

 当時61歳、魔術のような濃厚な節回しや音色は健在であって、第1楽章から、こんな濃密骨太なる味わいのヴァイオリンは最近聴いたことはありません。第2楽章「スケンルツァンド」は、鼻歌でも歌うかのように小粋だけれど、細部弾き崩しているわけでない。(「間奏曲」収録されず)第4楽章「アンダンテ」は、悲劇的表情が纏綿延々と歌われ、スケール大きく旋律が朗唱されました。(「ツィゴイネルワイゼン」の第2部に一脈通じる味わい有/こちらのほうが多彩だけれど)ポルタメントがたまらぬエッチな味わい。

 終楽章も小粋で軽快な味わいですね。それにしても、なんと腰のしっかりとした、コクのある美音なんだろう。技巧的な不安はありませんね。たっぷり歌い込んで、聴き手を夢見心地に誘いました。最高です。盛大なる聴衆の拍手有。

(2007年2月9日)

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written by wabisuke hayashi