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Wagnerの「リング」より「夜明けとラインへの旅立ち」


 趣味のHPを開いていると、同好の志からメールをいただき、ありがたいものです。みなさん、自分の好みがあるので、「ロシアものに冷淡じゃないか」「ワーグナーが足りません」「そろそろハイドンを深めて欲しい」など、助言もいただきます。なにせ「安い」一点で共通項をくくっているコレクションだし、思いつくまま日常聴いている範囲でのHPなので、偏りは多いと思います。もうしわけない。(と、口先のみ反省するふりをする)

 で、ワーグナーなんですが、全曲聴くと長い。長すぎる。ドイツ語がようわからん。筋立ては知らないわけでもないが、欧州の歴史的伝統的背景が理解できるほどの教養に欠けている。「歌」にたいしてどうの、といえるほどの経験もない、といった条件はありつつも、そう嫌いじゃありません。

 リングの「夜明けとラインへの旅立ち」〜これが一番好きですねぇ。大河流るる大自然と、若人の力強い希望が感じられます。手元にもたくさんCDがある・・・・はずだけれど、思いつかない。あれ?という感じ。最近、記憶力の減退が激しいし、安いCDをバカみたいにたくさん手に入れて、買っただけで満足してしまうこともあるんですよ。とにかく、記憶を頼りに手持ちのCD在庫棚卸しをすることにしました。


 まず「リング」全曲。これは15枚組だし、場所をとるから即発見できる。クレメンス・クラウスの1953年バイロイト・ライヴ(ANF -7〜10)〜歌い手は最高との評価で、たしかCDを買い始めた頃12,000円で手に入れたもの。(これでも10年前は安かった)スワロフスキーの1968年録音(WELTBILD CLASSICS 703769 14枚組)、これはちゃんとしたステレオで7,490円。全曲だから当然「旅立ち」は入っている。どんな演奏なんだ、と訊かれれば、買ってからのべ一回くらいしか聴いていないので、記憶がない、としか言いようがない。

 フルトヴェングラー/スカラ座の「リング」はLP時代、怪しげ超詰め込みLP(たしか12,000円位。音質最悪)で持っていたけれど、CDでは「黄昏」のみ所有。(VIRTUOSO 2699112 これ、きっと4,800円ほどで買っている。大損)音質はLP時代より改善されてはいるが、怪しいことに変わりなし。しかし、この燃えるような演奏は好きで、10回くらいは聴いているはず。(じつは、さらにノイホルト/バーデン歌劇場の全曲〜BRILLIANTを注文してしまった。塀の外でも懲りないワタシ)

 「全曲は聴くのがたいへんだ」ということで、ヤノフスキの一枚一夜の抜粋盤も買いました。(ドイツ・シャルプラッテンDS・329270〜329273)これは@600。これ録音も新しいし、ヤノフスキも、ドレスデンの音も気に入っています。歌手もなかなかよろしいではないか(と、思う)。渋い弦も金管もたまらない魅力で、これは「劇場の日常定番的演奏」として価値が高い。ワタシは大好きだけれど、地味すぎると言う人もいるでしょう。

 抜粋と言えばショルティ/ウィーン・フィルの有名な録音がありました。(FIC ANC-75の海賊盤@667)これ、録音も良い(いかにも作り物めいて、効果的)し、歌手も有名どころ、ウィーン・フィルも美しい。が、「旅立ち」は、ショルティの表現が当たり前すぎておもしろくない。これは、この演奏を初めて聴いた子供時代から変わらぬ感想です。完成度の高さは認めましょう。(な〜んてエラそうに)

 そうえば御大トスカニーニの演奏(1941年録音)は既にHP掲載済みでした。テンション高く、よく歌う演奏で文句なし。トスカニーニと言えば、フルトヴェングラーもPILZの5枚組はHPに掲載。ベルリン国立歌劇場管弦楽団との1940年ライヴで、劣悪な音質から立ち上る魔術に翻弄されます。

 フルトヴェングラーといえばへんなCDがあって、1952年6月6日のタリン・ライヴ。RAIオーケストラとの表記だけれど、調べてみるとトリノの放送管だそう。ウワサほどの劣悪な音質でもなく、演奏のテンションも高くてけっこうアツさが伝わります。一部カットがある版で残念。(悪魔のレーベルNOTA BLU 93.51347/8 10枚組3,650円で購入)同じライヴで「オランダ人」序曲。ベルリン・フィルとの管弦楽曲も同時収録。

 こんなもんかな、ちゃんとしたステレオ録音は持っていないかな、と思って棚をひっくり返したら、出て来るもんですねぇ。ライナー/CSOの1959年録音(RCA 09026-61792-2 おそらく800円)は、テンポが遅くて、なにやらもの凄い威圧感に溢れて、超重量級、金管の音が異常に金属的迫力(ロシア的ではない)有。ドキドキする演奏。おそらく最近の録音で、シモノフ/フィルハーモニア管(BRILLIANT 99493 $5.97 COLINS CLASSICS原盤)は、繊細で抑制の利いた美しい演奏。やや作為的ではあるが、盛り上げ方も効果的で上手い。録音もよろしい。が、少々貫禄不足なのは若さとオーケストラ故か。

 もう、ないでしょ?・・・と思ったらセル/クリーヴランド管という真打ちが控えておりました。(CULTURE CCD-1011 800円、もちろんCBS録音)速いテンポで、細部まで明快、アンサンブルのテンションが並じゃない充実ぶり。これですよ、ワタシが子供時代から馴染んできた演奏は。録音に少々不満があったはずが、久々に聴くとすべてが吹っ飛びました。最高。

 めでたく終了、はい、さようなら、と思ったらクナッパーツブッシュ(1957年録音 LONDON KICC9231 国内盤1,000円?買った記憶がないなぁ、中古かも)のがひょいと出現。でも、この演奏はもの凄く記憶にある。おなじウィーン・フィルでもショルティとは全く違っていて、もっと味付けが濃くて、粗削り、素朴、自然、天然。重量感があるが、ライナー盤とは質が違ってもっと浪漫的であり、古風でもあります。(これも少々カットがある)


 おそらくカセットには、まだ別な演奏があるはず。(マリナー?)ある日、別なCDが出現するかも。さて、上記の演奏の中で個人的にベスト3を選ぶと

1) セル〜別格。完璧。絶対。
2) ヤノフスキ〜地味渋すぎるところがたまらない。
3) ライナー〜威圧感に負けそう。でも、負けてもよいくらいの魅力。
3) クナッパーツブッシュ〜この重量感は貴重です。同率3位で

ま、あんまり古い録音は検討除外しています。

なんか「贅沢三昧〜Wagner編」になってしまいました。このHPを読まれた方々のお薦めを教えて下さい。(2000年11月10日)


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written by wabisuke hayashi