フルトヴェングラーのWagner寄せ集め


PILZ/ACANTA  44 1060-2  かなり劣悪な録音なのですが、物珍しさで買ってしまいました。「録音は気にしない」といっても限度はあって、ちょっと限度を越えた音質。なにせ5枚で2,340円ですから。嗚呼、へそくりがまた減っていく。ワタシはオペラ方面の知識は暗いので、歌手名なんかいい加減に読みとっています。悪しからず。

Wagner

歌劇「タンホイザー」序曲
フルトヴェングラー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1940年ベルリン録音

 このシリーズすべてそうですが、No NOISEシステムで、針音や雑音は飛んでしまっています。うるささはないが、迫力もなし。貧しい音の中から、オーケストラの美しさはたしかに理解できるでしょう。ホルンの圧倒的迫力、弦の渋い響きは現在にもたしかに引き継がれています。ここでのフルトヴェングラーはすこし抑えた感じで、アンサンブルも整っていますが、中盤からの高揚感はさすが。(+1936年録音ウィーン国立歌劇場での2分ほどの場面を併録。こちらはそうとうに熱い)

楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」(抜粋)
フルトヴェングラー/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

ブッケルマン(br)マノヴァルダ(b)ベルガー(b)ハン(b)フックス(br)レムニッツ(s)ベルグルンド(a)
1938年ニュルンベルク・ライヴ録音

 明らかにSP復刻で相当にノイズ有。9月5日の公演から3曲17分ほどの録音。趣味の世界の音の水準ながら、熱気は充分。(あとで調べてみると全国ナチ党大会での演奏、とのこと。別にだからといって特別な価値が生まれるわけではないけれど、感慨はある)

歌劇「ローエングリン」抜粋
フルトヴェングラー/バイロイト音楽祭管弦楽団・合唱団(1931年録音)

マノヴァルダ(b)フォルカー(t)ミュラー(s)クローゼ(a)
以上 PILZ/ACANTA 441056-2

 年代を考えれば出色の音質でしょう。ちゃんと音が聴こえるほうでしょうか。第3幕への前奏曲や、有名な「結婚行進曲」をはじめとして30分くらい収録。戦前のバイロイトの貴重な録音でしょう。音の濃霧の中から荘厳な雰囲気が感じられます。

楽劇「ヴァルキューレ」第3幕
フルトヴェングラー/コヴェントガーデン歌劇場管弦楽団・合唱団

ボケルマン(br)フラグスタート(s)ほか
PILZ/ACANTA 441057-2 1937年ロンドン・ライヴ録音

 木管とヴァイオリンばかり聴こえるへんな録音バランス。有名な「ヴァルキューレの騎行」から始まります。熱気のこもった演奏ながら、管楽器があまり聴こえないのでへんなかんじ。フルトヴェングラーと、イギリスのオペラハウスによる戦前の貴重な録音であり、うねるような熱い、勢いのある演奏ぶりは感じとれます。のち、ショルティの「指環」にも登場したフラグスタートがこんなところにも。1時間ほど収録。

楽劇「ジークフリート」より第3幕への前奏曲(?)
楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートのラインへの旅立ち」
フルトヴェングラー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団 1940年ライヴ

楽劇「神々の黄昏」第2幕より
フルトヴェングラー/コヴェントガーデン歌劇場管弦楽団 1936年ライヴ

楽劇「神々の黄昏」第3幕より
フルトヴェングラー/ロンドン・オペラハウス管弦楽団
 フラグスタート(s)ほか 1937年ライヴ

以上 PILZ/ACANTA 441058-2

 どれも古いラジカセ的な音質、しかも細切ればかりですが、集中して聴くとフルトヴェングラーの魔術のような陶酔に引き込まれる思い。ラストに、ワタシでも知っている「ラインの岸に薪の山を積み上げよ」が18分に渡って収録されていて、しかもフラグスタートの名唱。太く、奥行きのある声でワーグナーの世界を堪能させてくれます。

舞台神聖祭典劇「パルシファル」より第1幕前奏曲
フルトヴェングラー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団 1940年ライヴ

楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕前奏曲
フルトヴェングラー/バイロイト音楽祭管弦楽団 1931年ライヴ

「同上」第2幕抜粋
以上 PILZ/ACANTA 441059-2

楽劇「トリスタンとイゾルデ」第3幕抜粋
フルトヴェングラー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団 シュタウス(t)シュルタ(s)

1947年アドミラルス・パラスト・ライヴ

楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「愛の死」
フルトヴェングラー/ストックホルムKonsertforenings管弦楽団 1942年ライヴ

以上 PILZ/ACANTA 44 1060-2

 ここまでまとめていて気付いたのですが、1940年のベルリン国立歌劇場管弦楽団の演奏は、きっと同じ演奏会ですね。音の状態は、まあまあでどれもオーケストラの音色は(よ〜く聴くと)なかなか深い。

 「トリスタン」は一連のこのBOXの中で一番新しい録音(唯一戦後)で、わりと聴きやすい音。トリスタン役のテノールが、素晴らしい緊張感で引き込まれます。音の分離も良くて、オーケストラのアンサンブルの優秀さがよくわかる録音。
 ストックホルムのオーケストラはストックホルム・フィルのこと?音の状態はイマイチで、そのせいかオーケストラの響きは薄く感じます。いつもの熱狂的なテンポの揺れる表現は変わりませんが。

 ・・・疲れました。耳が旧い音にマヒしてきて、なんでも来い、ってかんじ。最後の方の「トリスタン」なんか冷静に聴いたら、かなりの劣悪な音なのに「わりと聴きやすい」と感じますからね。恐ろしいですね。やっぱり、ワーグナーはすっきりとした音で聴かなくちゃ。でも、全部集中して聴いている訳じゃなくて「摘み聴き」なんですけどね。


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written by wabisuke hayashi