Stravinsky バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)/バレエ組曲「プルチネルラ」/
バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)(作曲者/コロムビア交響楽団)


SONY 88697103112/CD7 Stravinsky

バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版*/1960年録音)
バレエ組曲「プルチネルラ」(1924/1947年改定版/1965年録音)
バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)(1967年)

作曲者/コロムビア交響楽団(ハリウッド)

SONY 88697103112/CD7 *1911年版との表記?

 貴重な作曲者自演22枚ボックスは現役です。ワタシは2007年に大枚6,228円(マイナス割引更にポイント駆使)にて入手したが、その一年後くらいにはamazonでも激安出現(3,000円弱)を目撃して悔しがっておりました。ま、仕方がない。よほど売れなかったのか。とにかく、たっぷり、ちゃんと愉しめれば金額の多寡はさしたる本質問題に非ず、ということにしておきましょう。音質もよろしいし、オーケストラもけっこう上手い。作曲者自身の指揮もなかなか味わい深いものです。

 バレエ音楽「ペトルーシュカ」の件。これに限らず、Stravinskyは現代の人なので、意外と自在に改変やら編曲を繰り返しております。編成が大きすぎれば演奏機会は減るし、改訂版を作れば著作権は延長できる・・・戦時中で大きな編成が使えない時には「兵士の物語」みたいな小編成の作品も作っちゃう。プロですから。Mozart だって、レクイエムの楽器編成は依頼された範囲内で作ったでしょ?4管編成の1911年版に比べて、1947年版は3管編成。それに止まらず、ここでは様々なカットをして録音しております。ロバート・クラフトの1997年録音だと全部収録されております。

第1部:謝肉祭の市 Fete populaire de semaine grasse
△導入 - 群集 Debut - Les foules
△人形使いの見世物小屋 La baraque du charlatan △ロシアの踊り Danse russe

第2部:ペトルーシュカの部屋
△ペトルーシュカの部屋 Chez Petrouchka

第3部:ムーア人の部屋 Chez le Maure
ムーア人の部屋 Chez le Maure
バレリーナの踊り Danse de la Ballerine
ワルツ(バレリーナとムーア人の踊り) Valse: La Ballerine et le Maure

第4部:謝肉祭の市(夕景) Fete populaire de semaine grasse (vers le soir)
△乳母の踊り Danse de nournous
△熊を連れた農夫の踊り Danse du paysan et de l'ours
△行商人と二人のジプシー娘 Un marchand fetard avec deux tziganes
△馭者と馬丁たちの踊り Danse des cochers et des palefreniers
△仮装した人々 Les deguises
格闘(ペトルーシュカとムーア人の喧嘩) La rixe: Le Maure et Petrouchka
終景:ペトルーシュカの死 ― Fin : La mort de Petrouchka -
警官と人形使い ― La police et le chartatan
ペトルーシュカの亡霊 Apparition du double de Petrouchka

 △以外が略されているところ。第3部はまるまるカット。各場面転換に出てくる太鼓連打は健在です。「仮装した人々 Les deguises」にて、いきなり集結させる荒業、というか本家作曲家が演っているんだから、これも有なんでしょう。演奏はすこぶるヴィヴィッド、各旋律明晰、バランスとか調和とか、そんなことをあまり考慮しない素朴、かつ明るく明晰な雰囲気満載でエエ感じです。プロの指揮者じゃないから、時にリズムが少々もたつくのも味わいのうち。上手すぎてさらり上滑りする演奏よりずっとよろしい。

 ワタシ個人の嗜好としては1911年版4管編成がゴージャスでお気に入り。それはCD2で拝聴可能。なんと全曲/組曲同時に録音しております。そういえば凄いテクニックを要求するピアノ版もありましたね。

 「プルチネルラ」成立の経緯をみると、20世紀前半パリ文化百花繚乱をみるような凄い顔ぶれに驚きます。バレエ・リュッス(ロシア・バレエ団)の舞台美術と衣裳担当はパブロ・ピカソだったんですね。Pegolesiを中心とするイタリア・バロックの素材をバレエ音楽に仕上げていて、小編成のオーケストラ+声楽ソロがオリジナル。ワタシはかなり以前(LP時代)よりこの作品を愛聴していて、おそらくはサイモン・ラトル/ノーザン・シンフォニア(1977/78年)だったっけ?その後、FMで声楽が入らないコンパクトな版(これがそれ)があることに驚き、更にはグレゴール・ピアティゴルスキー(vc)による「イタリア組曲」(5曲)を知りました。Stravinskyはほんまに”使い回し”が上手い。(他にヴァイオリン版6曲もあるそうな)

Ouverture: Allegro moderato○(Sinfonia)
Serenata: Larghetto ○
Scherzino: Allegro ○
Ancora poco meno
Allegro assai
Allegro (alla breve)
Andante
Presto
Allegro alla breve
Tarantella ○
Andantino
Allegro ○(Toccata)
Gavotta con due variazioni: Allegro moderato; ○
Variazione Ia: Allegretto; ○
Variazione IIa: Allegro piu tosto mod.○
Vivo ○
Tempo di Minuetto: Molto moderato ○
Allegro assai ○(Finale)

 ○が組曲版に含まれ、声楽抜きで楽器編成は同じ。CD6に声楽入り全曲録音が含まれるが(1965年これも同時録音だ)トラック分けがラフでいただけません(5つしかない)。全曲版は棚中在庫これしかないと思うんだけれど・・・(1965年アンセルメ盤がありました)演奏はペトルーシュカ同様すこぶるオーケストラは上手く(弦も管もソロ的所作が多くて力量一目瞭然)、素朴(ややノンビリ)な味わいながらヴィヴィッド、イタリア・バロックの軽妙ユーモラスな愉悦を堪能させて下さいます。音質も極上。たしかロバート・クラフトの演奏が頗る緊張感があって、引き締まった記憶だったはずだけれど・・・再聴いたしましょう。

 バレエ音楽「火の鳥」はかつて、1919年組曲版が録音の主流(例えばバーンスタイン)だったが、CD時代を迎え、ほぼ1910年全曲録音が当たり前の時代に至りました。他、いかにも中途半端な印象の1911年版(ブーレーズ/BBC響ロジェストヴェンスキーの録音がある/「カスチェイの凶暴な踊り」で終了)、そしてこの1945年組曲となります。終曲の讃歌の主題が途切れ途切れになっていることばかり言及されるが、むしろ1919年版では、あちこち素敵な旋律が省略されてしまったことへの反省ではないか、と思います。

1 導入部 ○△□
2 カスチェイの魔法の庭園 ○
3 イワンに追われた火の鳥の出現 ○
4 火の鳥の踊り ○△□
5 イワンに捕らえられた火の鳥
6 火の鳥の嘆願 ○□
7 魔法にかけられた13人の王女たちの出現
8 金のリンゴと戯れる王女たち ○□
9 イワン王子の突然の出現
10 王女たちのロンド ○△□ 11 夜明け
12 魔法のカリヨン、カスチェイの番兵の怪物たちの登場、イワンの捕獲□
13 不死の魔王カスチェイの登場
14 カスチェイとイワンの対話
15 王女たちのとりなし
16 火の鳥の出現
17 火の鳥の魔法にかかったカスチェイの手下たちの踊り
18 カスチェイ一党の凶悪な踊り ○△□
19 火の鳥の子守歌△ □
20 カスチェイの目覚め
21 カスチェイの死、深い闇
22 カスチェイの城と魔法の消滅、石にされていた騎士たちの復活、大団円 △□

 ○が1911年版。楽器編成はオリジナル1910年版と同じ4管編成。△は1919年版であって2管編成。但し、接続部など録音によって微妙に異なります。(例えばジョージ・セル)、□が1945年版〜というのは相当怪しくて、各表題は「パントマイム」とか「パ・ド・ドゥ」に変わっていて、曖昧なる記憶でテキトーに印を付けたのみ、ご勘弁(ちゃんと譜面を見た人、修正ご教授願う)。ちなみに作曲者は1919年版は録音しておりません。

 1971年迄存命だった作曲者晩年1967年の録音だけれど、音質、演奏の質といい前2作品とほとんど変わりません。(ちなみにこのボックス全部そうだと言い切っても間違いではない)ちゃんとメルヘンに溢れ、”新古典主義の乾いたテイストに影響された”といった表現ではないでしょう。オーケストラの色気、技量は充分。但し、プロの指揮者としての個性表出とかスムース流麗な演奏に非ず。目隠しで聴けば、演奏音質とも現役の立派な演奏と感じること請け合い。ワタシはやはり全曲で聴きたいな、と思います。

(2011年7月3日)


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written by wabisuke hayashi