Bartok 弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽/
Stravinsky バレエ組曲「火の鳥」(1910年版)
(ピエール・ブーレーズ/BBC交響楽団)


CBS/SONY FDCA554 購入価格失念500円くらい? Bartok

弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽

Stravinsky

バレエ組曲「火の鳥」(1911年版)

ピエール・ブーレーズ/BBC交響楽団

CBS/SONY FDCA554 1967年録音

 久々の再聴。このCD(c)1988、ロゴもCBSマーク、年季入って保ちもよろしいもの。人生順番交代、Pierre Boulezもとうとう亡くなりました(1925ー2016)。BachMozartBeethovenBrahmsTchaikovsky辺り(著名な浪漫派も)全然レパートリーに入らぬ異形の巨匠でした。そりゃメジャーオーケストラのシェフは務まりまへんで。それでもニューヨーク・フィルハーモニック(1971-1977)BBC交響楽団(1971-1975)に就任したのは、アンサンブルを洗練させる天才だったからか。この録音はコリン・デイヴィス時代かな?Bartokは再録音有(1994年シカゴ交響楽団)、Stravinskyは1910年全曲録音が別途二種(1975年ニューヨーク・フィルハーモニック/1992年シカゴ交響楽団)有。

 Bartokを久々に聴くと・・・なんとなく音がくすんで古めかしい。半世紀前ですもんね、当時ブーレーズ42歳ほど、ギラギラするような革新的、眩しい存在でした。第1楽章 「Andante tranquillo」〜第2楽章「Allegro」静謐怪しい響きから始まって、緊張感漂う集中力に打楽器他の色彩が絡み合う・・・ド・シロウトの手応えはいつも通り”旋律がない”、厳しいリズム(のみ)と色彩は打楽器が担当していると感じます。コリン・デイヴィス辺りで馴染んだ、やや牧歌的なオーケストラの響きは吹っ飛んで、ブーレーズの叱責が効いております。それでも上手いオーケストラとは思わないけど。

 第3楽章 「Adagio」。これも”旋律がない”「夜の歌」なんだそう。ほとんど日本の拍子木みたいな即興感(木琴とのこと)を始めとして、暗く静謐不安な弦に打楽器群が自在に楔を打ち込んで、光り輝き躍動します。第4楽章 「Allegro molto」切迫感溢れるリズムに弦と打楽器が呼応する合奏協奏曲風。風情は東欧風、後年のブーレーズを思い出せばここの熱狂疾走は凄い緊張感でしょう。記憶では似たような時期のライヴ音源を聴いたことがあって、それはかなり危ういアンサンブルでした。セッション録音でもそれは理解できるほど。

 珍しい「火の鳥」(1911年版)採用。「導入部」「カスチェイの魔法の庭園」「イワンに追われた火の鳥の出現」「火の鳥の踊り」「火の鳥の嘆願」「金のリンゴと戯れる王女たち」「王女たちのロンド」そして「カスチェイ一党の凶悪な踊り」にて終了。著名な「子守唄」「フィナーレ」を欠いて全曲21分ほど、さっぱりしたもんでっせ。これは作品がメルヘンに華やかなものだし、BBC交響楽団もぐっと上出来でしょう。リズム感とノリの良さ、しっとりとした歌にBartokほどの強面を感じさせません。デリケートかつ繊細なアンサンブル、個人的な嗜好は1910年版たっぷり全曲、この短縮版はほとんど唯一無二のブーレーズの立派な遺産と思います。

(2017年9月2日)

 

・・・いつ入手したのかも価格も記憶なし、どこのBOOK・OFFでも@250にて見掛ける”歴史的名盤”也。これがLP収録のオリジナルであって、その時代からのお付き合いの一枚。しばらく、もしかして10年くらい聴いていなかったか?「弦打チェレ」は、こんなアツい演奏だった?的感触があって、記憶では怜悧冷静精緻といった方向だったのが、切迫と緊張に溢れて少々驚き。今朝の”ちょろ聴き”では全面的な共感に至りません〜というか、期待が”怜悧冷静精緻”だったから。・・・珍しい1911年版「火の鳥」(「カスチェイ王の手下による凶暴な踊り」にて終了する)だけれど、これは記憶通りの正確かつセクシーなもので、BBC交響楽団の極上のアンサンブルやら、色彩的な響きが期待通り。序曲が、これほど的確なリズムに刻まれる演奏は意外とないんです。ジョージ・セルくらいかな?
とは「2008年9月音楽日誌」からの引用です。ロゴが未だCBSとなっている(c)1988年のCD也(名曲全集的なものの一枚でしょう)。もう20年以上でっせ。CDの長命はありがたい・・・希に不良品が存在したとしても。

 BBC交響楽団は歴史と伝統ある実力派オーケストラだけれど、ロンドンに犇(ひし)めく著名オーケストラの中では地味な存在でしょう。ブーレーズ時代(1971-1975年)は短かったが、初代エイドリアン・ボウルトが20年間主席を務めた他は、皆こんなものです。やや響きにコシを欠いて、ユルいサウンドのイメージがあるけれど、指揮者(ブーレーズ)によっては驚くべき集中力を生み出す〜のは、トスカニーニ以来の指揮者個性の反映伝統でしょう。もの凄く官能的、エエ音で鳴っております。

 Bartokはシカゴ交響楽団との新録音を聴く機会を得ず、これはブーレーズ42歳壮年の体力意欲溢れる時期の録音となります。上記”ちょろ聴き”コメントにあるように切迫と緊張に溢れて少々驚き!期待が”怜悧冷静精緻”とはいったい誰をイメージしていたんだろうか?不思議です。比べる対象がマズいが、ストコフスキーとは天と地ほど差がある緻密な集中力であります。(←ブーレーズ盤への言及ありますね)

 「弦チェレ」はいかにも民族的な旋律、個性あるリズム(第3楽章「アダージョ」に於ける木琴?のリズムはまるで日本の拍子木だ)だけれど、洗練され、研ぎ澄まされ、集中力ある演奏に仕上げております。細部まで明快、正確、そして結果的に切迫と緊張に溢れて冷たい炎が燃えている!媚びない、厳しい官能が溢れ出る演奏。オーケストラの線は少々細いが、作品のニュアンスに似合っていると思います。

 おそらくは新録音では、いっそう感情移入少なく、切迫感と緊張は自然体の演奏へと移行しているのではないか?けっこう”アツい”Bartokでした。

 これが、「火の鳥」だといっそうわかりやすい。珍しい1910年版というのが一興(録音は少ない/他ではロジェストヴェンスキーくらいか)だけれど、正確なリズム、アンサンブル、クールで明晰な官能が希有な成果を上げております。金管が少々ヤワで切れ味も爆発も足りない感じだけれど、指揮者の統率力はそれ補って余りある集中力であります。

 「カスチェイ王の手下による凶暴な踊り」にて終了というのは隔靴掻痒状態で、子守歌〜終曲がないとどーも物足りない。というか、1910年全曲版以外、最近聴く気がおきません。たっぷり大編成で、細部全部味わいたい名曲故。

(2009年6月19日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi