Stravinsky バレエ音楽「春の祭典」
(ジョージ・ショルティ/シカゴ交響楽団)


ジャケット紛失済。Lily   ELD15(英DECCA/RCAの海賊盤) Stravinsky

バレエ音楽「春の祭典」(1974年録音)

ジョージ・ショルティ/シカゴ交響楽団

Rachmaninov

パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

アーサー・フィードラー/ボストン・ポップス管弦楽団/アール・ワイルド(p)*

Lily ELD15(英DECCA/RCAムリムリな駅売海賊盤コンピレーション) いくらだったかなぁ・・・800円くらい?

LP RCA LM-2678*入手ほぼ20年後〜このCDは棚中現役です。演奏内容印象への再コメントさておき、この「パガニーニ変奏曲」はアール・ワイルドではなく、レナード・ペナリオじゃないか、と思います。フィードラー/ワイルド(p)の録音はネット調査にて発見できず、レナード・ペナリオ(p)(1963年乃至それ以前)とのLPを発見いたしました。実際に聴いていないけれど、そう聴いてみるといかにも・・・な感じ。タイミングもほぼ一致。

(2013年10月9日)

 この駅売海賊盤(非ライセンス盤)を購入して十数年経過。21世紀にはCD価格大暴落!1990年代前半だったら一枚2,000〜3,000円が当たり前だったんじゃないか(1980年代だったらもっと高い)。駅売海賊盤に限らず、ここ数年CDを大量処分いたしました。このCDはスリーブを失っているし、ずっと手許に置いておくしかないんです。ちゃんと再生できますし。2009年夏、ショルティ/シカゴ交響楽団によるMahler 交響曲全集を(偶然に中古格安にて)入手いたしました。当たり前の常識だろうが、やはり正規盤は音が違う・・・駅売海賊盤の”ほぼ全集”はとっくに処分済

 7年ぶりの再聴を前にネット検索にて、あちこち評価を拝見いたしました。これが保留なしの大絶賛ばかり、ほんまかぁ?駅売海賊盤で恐縮だけれど、自分の耳で再確認しなくては。おそらくLP板起こしだろうから、オリジナルからは少々音質は異なるのかも。でも、鮮明なる音質であることは充分理解可能。

 コンピュター制御の蒸気機関車?いえいえ、最新型の新幹線か。お気に入り作品なんで、いろいろ聴いているが、ここ最近エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1950年)を愛聴しておりまして、それに比べるとなんと!オーケストラが上手い。ほとんどイン・テンポでどんな難所も軽々とクリアして、難儀の痕跡を残さない。颯爽と風を切って線路は続くよ、どこまでも。各パートのバランス、技量、最高。縦線も驚異的に合っている・・・

 これでヴェリ・ベスト?そう問われると、息もつかせぬ緊張感に絶賛を惜しまぬが、何かが足りない。あまりに各パートがスムースに、バランスよく仕上がって、夾雑物とか、怪しい乱れとか、とんでもない不協和音、変拍子によるアンサンブルの乱れ、雑音が存在しません。それでエエのか?「春の祭典」って、もっと原始のバーバリズムとか、根源的な危うい熱気みたいな作品じゃないでしょうか。ピエール・ブーレーズの新旧録音もそうとう洗練されているんだけれど、あの方向とは違ってもっと体育会系というか、知性をあまり(ほとんど)感じない。強制されたマス・ゲームみたいな整い方。

 なんかうそ寒い、愛嬌のない冷酷美人みたいな感じ。不純物を取り除きすぎた蒸留水みたい。アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1950年)との演奏技量、音質の違いは歴然だけれど、音楽とはそれだけで済まされぬ”味わい”ってあるでしょうが。音楽は嗜好品だから、世評とか人様の好みを云々するつもりはありません。Mahler の交響曲第6番イ短調も”ショルティが最高、文句なし”という論評を見掛けましたもの。

 ワタシには信じられない・・・が、その嗜好方向については理解できて、こんな”春の祭典”も有、なのかな、と。

(2010年8月13日)

 2003年再聴。20世紀中ではショルティ/シカゴ響というのは「ブランド」だったので、数年前のワタシには正直反発がありました。いまや、そういった先入観もなく虚心になって音楽を聴ける時代に。ワタシも日々ますますこだわりを捨て、自由なる気持ちで「春の祭典」を聴くようになりました。

 2003年9月にオーディオを配置している部屋の模様替えをした結果、コンポの音が変わりましたね。(もともとたいした音質じゃないが)1974年アナログ最盛期の英DECCA録音は極上で、こんな細部まで明快に〜各パートの旋律のお尻が跳ね上がったりするところまで〜聞こえた、というか、知ったのは初めてで新鮮でした。オーケストラがとにかく上手い。

 どんな細部も忽(ゆるが)せにせず、明快に、きっちり、しかも余裕を持って演奏されていて、Stravinskyならこれは効果的です。ま、モントゥーやらアンセルメなんかの”味わい系”も好きですよ。(アンサンブルがかなりアバウト)あらゆる旋律が理論的知的に構成されるブーレーズ(3種有)こそワタシのお気に入りだけれど、ショルティ盤はそれと似て、じつはまったく異なります。

 「立派すぎて、決まりすぎて、スリルがない」〜数年前のワタシの感想です。いや楽譜にはこう書いてある、その通りひとつの音も曖昧さなく、おそらくは世界最高水準の技量で表現していただけば、ちゃんと音楽の本質は表現される。そんな証明を見ているようで、素直に快感でした。みなさんの一流のワザ、とくと拝見しましたよ。

 シカゴ響は金管ですね。金管らしい金管。独墺系のマイルドな金管ではない、かといってロシアの強烈なる泥臭い金管とは異なって、都会的かつパワフルな煌びやかな金管。位置関係やら、響きの違いが明快に聴き分けられる打楽器群。マルケヴィッチの1959年録音が有名でしょ?フィルハーモニア管だって一流で、彼の激しい叩き付けるようなリズムは魅力的だったが、シカゴ響にはまだまだ余力がある。(録音の問題もある)

 後半に行けば行くほど、脂がのってテンションに磨きが掛かります。知的ではない〜なんていう批判が当たっているかどうか別にして、あまりむずかしいことを考えずに「音の快感」に浸るのも悪くない演奏でしょう。堪能しました。

 「パガニーニ変奏曲」とのカップリングはムリムリで「海賊盤」ならでは。いまとなっては、ワイルド(1915-2001)の珍しい録音に価値が出てしまいましたね。Chesky録音の全集とは別録音。もしかしたらCDはコレしかないかも。(このCDだってもうよほどじゃないと探せないはず)期せずして、上記ショルティの演奏に一脈通じるものを感じました。

 再聴は、以下5年前と寸部変わらず。ペナリオ(1924〜)の雰囲気にも似て、明るい希望に満ちて、さ、バンバンいきまっせぇ、的演奏。いえいえこの曲にはもっと憂愁の味わいが・・・なんてぶつくさ言っている間にも曲の勢い止まりません。ああ、上手いね。その上手さがクール過ぎたり、強面いっぽうだったりしない。そのままエンターティメントの快感となります。

 これが本場(なんの?)の演奏なんです。(2003年10月11日)


 能力開発音楽鑑賞法(15)「ストレス解消」だそうですから、かなりのシリーズで出ていた海賊盤。一時よく見かけました。大学教授風のウサン臭いおじさんが、妙齢の女性の脳波をとっている曰くありげな写真付き。

 これはおそらく1990年代前半に購入した一枚。この豪華で珍妙な曲、演奏家の組み合わせ。ショルティはDECCA、フィードラーはRCAの録音。フィードラーは懐かしいけど、ショルティはレギュラー盤でまず買う気はしない。

 ショルティは70〜80年代のメジャー中のメジャーだったこともあって、正規のCDはほとんど所有していません。この録音は「誘惑の遊戯」で第3トランペットが吹き損ねていて、マニアには有名だそうです。ワタシはマニアではないので、その辺りにはなんの興味もなし。

 こういう曲は上質なオーケストラで聴くに限ります。シカゴは巧い。おそらくいままで聴いた「春祭」のなかでは、一番のオーケストラの力量。もう完璧の迫力とアンサンブル。

 出てくる管楽器はすべて完璧に鳴りきって美しい。激しい打楽器の迫力と、全体のバランスも最高の決まり方。全曲で30分切っているんですが、「早い」印象はありませんね。細部まできっちりと表現されていて、豪華でありながら緻密で引き締まって、勢いもあって、スタンダードとして価値ある演奏。

 ワタシの先入観と思いますが、立派すぎて、決まりすぎて、スリルがないなぁ。ブーレーズの知的な演奏とは対極にある肉体派(体育会系)の演奏、とでも云えましょうか。ある意味都会的で、原始の粗野なエネルギーから縁遠い。(ブーレーズもそうですけど)小澤の旧盤(同じCSO)に比べると、貫禄とかあちこちのキメ方とか、断然格は上です。でも感心はするが、感動はしない。(ワタシがすれっからしだから?)聴いていて爽快なのはたしか。

 もっと虚心になって、充実しきった音のみに集中すべきなんでしょう。第2部の後半なんか、ほんとうに凄い迫力なんですが。最後の最後までパワーは落ちません。音質最高。

 「パガニーニ変奏曲」とのカップリングはなんとも云えませんね。おそらく1960年頃の録音ですが、音質はまぁまぁの水準。

 いつものようにロマンティックで濃厚な旋律が楽しめる名曲ですが、ワイルドのピアノは「バリバリ」といった感じの勢い勝負のノリ。精密さ、とか、しみじみとした情感、とはかなり縁遠くて、荒削りながら迫力もテクニックも充分。いかにも一昔前のアメリカのヴィルティオーゾ、といった味わいが楽しめますね。早いところでのスウィング感も最高。

 フィードラーの演奏はいつもオーソドックスで、しっかりとした厚みもあって満足できます。ボストン・ポップスの主たるメンバーはボストン響から参加しているのでしょうが、上手いもんですね。シカゴとはまた味わいが違っていて、暖かくてもうすこしソフト。合わせものでも完成度高し。

 聴きどころの第20変奏曲は、いかにも往年のハリウッドの恋愛映画風で(安易で)最高です。ウットリしちゃいます。好きです。(1998年)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi