Sibelius ヴァイオリン協奏曲ニ短調/他
(ドン=スク・カン(v)/エイドリアン・リーパー/スロヴァキア放送交響楽団)
Sibelius
ヴァイオリン協奏曲ニ短調
Svendsen
ロマンス
Halvorsen
ノルウェイ舞曲
Sinding
伝説
Halvorsen
ノルウェイの情景
ドン=スク・カン(v)/エイドリアン・リーパー/スロヴァキア放送交響楽団
NAXOS 8.550329 1989年録音
ヴァイオリン協奏曲は1904年(初稿)1905年(改訂版=通常演奏されるのはこちら)の初演。濃厚な浪漫を湛えた魅惑の作品であります。出会いはLP時代クリスチャン・フェラス(v)/カラヤン、抑制された情熱と官能を感じさせて、瑞々しいテクニック、そしてベルリン・フィル圧巻の厚みが刷り込みだけど、もう17年前に聴いたきりだから記憶に自信はありません。こちらヴァイオリンは技術的にはキレはあってもやや線は細いかも、オーケストラは迫力と厚みにやや足らぬけれど、作品の清涼な作品風情によく似合っております。
Dong-Suk Kang(1954-韓国)はBISにヴァイオリン作品も録音しておりました。NAXOS初期にかなりのレパートリーを担当したのは(先週も拝聴した)エリドリアン・リーパーと同様。ここではスロヴァキア・フィルに非ず放送局のオーケストラ担当、当時の表記はCSR交響楽団となっていたはず。音質は自然、良好です。
二管編成、ヴァイオリンは難しい技巧を要求される難曲だそう。
第1楽章「Allegro moderato - Allegro molto - Moderato assai - Allegro moderato - Allegro molto vivace」。弱音器付きのヴァイオリンが細かい和声にしっとりクールな第1主題を刻むヴァイオリン、地味目の音色も味わいがあって、ここは「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」とは作曲者の意向だそう(Wikiより)。情熱的に切々と歌う第2主題、ゴリゴリとした管弦楽による第3主題はカッコよい推進力、重厚な響きと濃密ラプソディックなカデンツァの対比は緊張感に充ちて、最終盤への追い込みもお見事。このコンビは濃厚な力技に非ず、怜悧な風情にバランスのよろしい演奏でしょう。ソロの技巧に疑念なし、金管の泥臭いヴィヴラート最高。(15:53)
第2楽章「Adagio di molto」は落ち着いた緩徐楽章。 ここが一番演奏者の個性に似合って、たっぷり歌って、深く落ち着いた風情がクサい詠嘆に至らぬ上品さ。ドン=スク・カンのヴァイオリンは中低音に個性があって、それはエルガー拝聴時に気付いたもの。パワフルではないけれど、爽快清涼そのもの。ソロと掛け合うホルンの甘いヴィヴラートは魅惑です。情熱的な中間部もオーケストラとソロの息はぴたりと合う。(7:53)
第3楽章「Allegro ma non troppo」はティンパニと低弦が舞曲風リズムを刻んで開始する常動的ロンドとのこと。ソロはそうとうに難物な技巧を要求されそうです。冒頭はオーケストラもソロも抑制した開始、情熱的自在にラプソディックな旋律がアツいところ。やがてリズムは熱を帯びて盛り上がってもていねいな仕上げは変わらない。クールな風情を維持していっそうの爆発を求めたくなりました。(7:25)
この時期、NAXOSは他ではあまり聴けなかった、珍しい、美しい作品を組み合わせるという意欲的な姿勢、Svendsen(1840ー1911諾威)Halvorsen(1864ー1935諾威)Sinding(1856ー1941諾威)比較的知名度の薄い北欧の作品を紹介しておりました。ドン=スク・カンは(エイドリアン・リーパーも)こうした小品のほうが親密、彼の個性に似合っているかも。哀しくちょっぴり劇的に懐かしく、Dvora'kの旋律を連想させるSvendsen、Harvolsenの舞曲は熱気を込めた躍動、いかにも高い技巧を要求されそう、ノンビリとした中間部との対比もステキでした。Sindingはヴァイオリンの低音をたっぷり響かせて、しっとりと情感高まる懐かしいバラード、ラスト「ノルウェイの情景」は牧歌的情景も漂う、哀しい絶品旋律でした。(7:03-4:35-7:32-7:32) (2022年9月24日)
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