Shostakovich 交響曲第5番ニ短調/
交響曲第9番ホ長調
(ローマン・コフマン/ボン・ベートーヴェン管弦楽団)


33712022 Shostakovich

交響曲第5番ニ短調
交響曲第9番ホ長調

ローマン・コフマン/ボン・ベートーヴェン管弦楽団

MD&G 33712022 2003年録音

 先に第8番ハ短調を聴いておりました。2013-14年辺りRoman Kofman(1936ー烏克蘭)による全集録音を連続聴きして、当初は収録音量レベルの低さから理解に苦しんだもの。当時はShostakovich開眼前に四苦八苦状態、やがてこれは優秀な音質であることを認識いたしました。ことし2024年1月に同作品をヴァシリー・ペトレンコで聴いておりました。

 ニ短調交響曲はあまりに有名になった「苦難との戦いにやがて勝利」風少々食傷気味の作品。三管編成に種々打楽器は多様+ピアノ・チェレスタが入ります。前向き勇壮に戦う1960年代型「革命」に非ず、パワーには少々足らぬけれどアンサンブルも整って繊細、知的クールな印象はそのままにバランス感覚溢れて馴染みの旋律も新鮮、というか異形な演奏かも。必ずしも”鳴らないオーケストラ”とは感じません。第1楽章「Moderato - Allegro non troppo」はMozart アダージョとフーガ ハ短調 K.546にクリソツな始まり。ごりごりと威圧感のない、詠嘆に走らぬ、ていねいに抑制されデリケートな悲劇の始まり。やがて来たるべき疾走もスタイリッシュ、クライマックスも大仰な泥臭さを感じさせぬもの。ホルンやフルートの音色はちょっと面白くない。(15:30)第2楽章「Allegretto」はスケルツォ楽章。ここも軽妙にやや生真面目な集中力を感じさせました。ゴリゴリとした低弦とか低音管楽器の爆発、大仰なリズムの強調、ヴァイオリン・ソロのユーモラスな表情はもっと欲しいところ。(5:26)第3楽章「Largo」の楚々として途方に暮れた悲しみは控えめに清潔、静謐な集中力は絶品でしょう。(14:51)第4楽章「Allegro ma non troppo」も苦難に打ち勝った!風シンプルな盛り上げに非ず、静かに苦いテイストが漂って、けっこう辛口な迫力に締め括りました。(11:26)

 変ホ長調交響曲は2管編成、全交響曲中異形にこぶりな存在。「第9番」という重圧を避けて、当局からは肩透かしを酷評されたとか。けっこう好きですよ、こんな軽快ユーモラスな作品は。第1楽章「Allegro」はなんとなく始まってやがてノリノリの躍動、無遠慮なホルンの合いの手もエエ感じ。楽しいような?やる気ない無表情のような、不思議な始まり。(5:44)クラリネット・ソロが虚無な風情漂わせる第2楽章「Moerato」。やがてほかの木管も絡み合って、ここも無感情のような?諦めの風情が漂います。(7:31)第3楽章「Presto」はユーモラスな木管の激しい疾走に始まって、やがて微妙に勇壮に怒りを感じさせるところ。(3:13)金管が大仰なファンファーレ第4楽章「Largo」は妙にワザとらしい。(3:42)第5楽章「Allegretto」はファゴットがユーモラスに足取り重く始まって、感情の読み取れぬ軽快な旋律がやがて自棄っぱちな爆発フィナーレに盛り上がります。(6:10)オーケストラは弱さを感じさせぬ、かっちりとしたアンサンブルでした。

(2024年3月23日)

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written by wabisuke hayashi