Ravel ボレロ/スペイン狂詩曲/
高雅で感傷的なワルツ/マ・メール・ロワ
(小澤征爾/ボストン交響楽団)
Ravel
ボレロ
スペイン狂詩曲
高雅で感傷的なワルツ
バレエ音楽「マ・メール・ロワ」
小澤征爾/ボストン交響楽団
DG 437 392-2 1974-75年録音
小澤征爾40歳頃の記録。1973年にボストン交響楽団の音楽監督に就任、その直後の録音であります。頑迷な国粋主義者ではないので特別に彼を応援していないけど、Ravel2枚分はLP時代より所有して聴いておりました。遠い記憶では細部きっちり生真面目に過ぎて、味わいが足りない?FMで聴いたアルミン・ジョルダン/スイス・ロマンド管弦楽団(在任1985ー1997)雰囲気豊かな演奏と比べて、なんやオモロないなぁ、なんて勝手な印象を得ておりました。やがて幾星霜、おそらくは20年以上ぶりの拝聴也。
浮き立つように若々しい、テンションの高い「ボレロ」。やや速めのテンポ、軽快にアツい演奏はゴージャスに分厚い響きとか、師匠筋のミュンシュみたいに”掟破り興奮のアッチェレランド”に非ず、細部明快、清潔に歯切れのよい明るい響きに充たされます。軽量といえばその通り、しかしこのアツく若い盛り上がり、爆発を好ましく感じます。オーケストラも文句なく上手いですね。
「スペイン狂詩曲」も同様、清潔にテンションの高いもの。第1曲「Prelude a la nuit(夜への前奏曲)」には物憂い湿度がもっと欲しいところだけれど、曖昧さを許さぬのが若き小澤、第2曲「Malaguena(マラゲーニャ)」以降はテンポも頻繁に走ってアツくオーケストラを煽って燃えております。ここのテンポも心持ち速めを維持して、輝かしいオーケストラをみごとにコントロールしてしているでしょう。
「ワルツ」は冒頭「Modere」を無骨無遠慮四角四面に演るほど、あとのメルヘンな優しい部分との対比が際立つもの。ここではわざと”無骨無遠慮四角四面”じゃなく、小澤の生真面目細部しっかり描き込む姿勢がそのまま音楽になった感じでしょうか。全体に脂粉漂うようなセクシーな色気より、少々腰の軽い、清潔繊細清涼な世界が続いて、あとは聴き手の嗜好問題でしょう。
若い頃ワタシはユーモアと深み+「間」が足りん!と感じておりました。現在ならこんなデリケートな表現も好ましく受け止められるように。フルートの深いヴィヴラートはドリオ・ドワイヤーですか?ステキですね。
「マ・メール・ロワ」こそメルヘン。”ユーモアと深み+「間」”とはクリュイタンスの刷り込み?たしかに先日聴いた1962年録音は最高でしたよ。こちら正確精緻几帳面なアンサンブルはデリケートの極み、長い方のバレエ音楽を取り上げてくださったのもありがたいこと。例の際立って味わい深いフルートとか、ため息が出るようなヴァイオリン・ソロ(シルヴァーステインか)名手揃ってますね。例えば「親指小僧(Petit Poucet)」の浮き立つような色彩的軽妙な味わいが漂います。ラスト「妖精の園(Le jardin feerique)」は名残惜しく、華やかに大団円を迎えました。最高。 (2017年5月28日)
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