Ravel ピアノ協奏曲/左手のためのピアノ協奏曲/ソナチネ/
Hindemith ピアノ、金管と2台のハープのための演奏会用音楽
(モニク・アース(p))


DG 439 666-2 Ravel

ピアノ協奏曲ト長調/左手のためのピアノ協奏曲ニ長調

ポール・パレー/フランス国立放送管弦楽団(1965年)

ソナチネ 嬰ヘ短調(1955年)

Hindemith

ピアノ、金管と2台のハープのための演奏会用音楽

パウル・ヒンデミット/ベルリン・フィル(1957年)

モニク・アース(p) Monique Haas(1909ー1987仏蘭西)

DG 4776201(ドイツ・グラモフォン録音全集より)

 Ravelの協奏曲は18年ぶりの再聴。高齢だったPaul Paray(1886ー1979仏蘭西)晩年の記録、そのヴィヴィッドな勢い、細かいニュアンスになんの陰りもありません。音質も良好。ピアノ協奏曲ト長調は編成の小さな伴奏に多種多様な打楽器とハープが加わる、小粋に愉しい作品。力任せ剛力な演奏とは無縁のデリカシーが求められる名曲でしょう。 第1楽章「Allegramente(明るく、楽しげに)」は鞭のピシャリとした音に始まって、ジャズやブルースの影響を受けてノリノリのとのころ。(7:45)第2楽章「Adagio assai」は物憂げに懐かしい緩徐楽章。これが3/4拍子とはド・シロウトには俄に理解できないフクザツなリズムであります。この呟くように美しいピアノに木管が天空を浮遊して絡み合って、天国的に美しいところ。(8:47)第3楽章「Presto」はペトルーシュカ風ウキウキ遊園地の喧騒を彷彿とさせて(Wikiより)ゴジラ風情のテーマもユーモラス。ここで鞭が再びの登場。ピアノの細かいタッチが軽妙に光りました。明晰な技術ですよ。こんな愉しい作品にはめったに出会えない。(4:05) 

 左手のためのピアノ協奏曲ニ長調は同時期の作品なのに、堂々たる雄弁なピアノ、重厚な風情がずいぶんと趣を変えたもの。こちら三管編成だからかなり大きな伴奏による単一楽章作品(緩ー急ー緩)となります。多種多様な打楽器+鞭は必須なのですね。左手だけとは思えぬソロの情感豊かな表情、低音蠢(うごめ)く重苦しく始まって勇壮に盛り上がる「緩」を経、リズミカルな「急」はジャズ風の行進曲、ここはまるでおもちゃの行進を連想させるところ。力強くもユーモラスな推進力を感じさせるところ。ラスト「急」は最初の雄弁が回帰して、左手による、雄弁かつ肌理細かいカデンツァが延々と続きます。ここはピアニスト泣かせやろなぁ、モニク・アースにその辺りの不安はありません。(17:51)ポール・パレー率いる管弦楽の色彩豊かなこと!

 ソナチネ 嬰ヘ短調も音質は悪くない。これも小粋な風情の極北作品でしょう。可憐に切ない旋律が名残惜しく散りばめられた「Modere」(4:20)。「Mouvt de Menuet」は懐かしい風情がもの哀しく、寂しく淡々と歌って(2:57)「Anime(生き生きと)」華やかな花火のようなきらきらとした儚さ、不安定な和音や変拍子が魔法のような締め括りとなりました。(3:57)

 Hindemithは初耳作品だったと思います。モノラルだけど音質は良好。かつてはその辛気臭い旋律は苦手系作品の代表だったけれど、やがて知的クールな旋律をここ最近好ましく受け止めるようになりました。これは特異な編成によるマニアックな協奏曲、(1) Ruhig gehende Viertel/Lebhaft (2) Sehr ruhig, Variationen (3) Massig schnell, kraftvollの作品構成。第1楽章は暗く重苦しく静かな管楽器の始まり、ピアノはそっと無機的に参入いたします。情感を排したようなピアノ旋律は繊細なタッチ(5:22)。Lebhaftとは生き生きと活気に充ちてとの指定、これも乾いた風情にウェットさ皆無に淡々としたソロと、決然とした管楽器の対話が続きました。これは正確無比な技巧が要求されそうなところ。(5:17)第2楽章は管楽器はお休み。途方にくれたようなピアノと、デリケートなハープの低音が神秘的に絡み合う。これは変奏曲なんですね。ここも喜怒哀楽が読み取れない。(6:49)第3楽章はカッコ良い金管が炸裂して、不協和音に違和感はありません。そこに知的なピアノが参入して、大きくスウィングするような掛け合いとなりました。(7:00)これはなかなか大衆受けせんやろと予想される作品でした。

(2023年5月13日)

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written by wabisuke hayashi