外伝へ

則(のり)を超えず


  自分を棚に上げて・・・状態かも知れないので少々心苦しいが、拝見していて不快なる音楽へのコメント(サイト上)を散見することがあります。どうしてだろう。当該の演奏をかなり痛烈に批判する・・・それだけではないはず。例えば、こんの氏が、ベームのBrucknerを痛烈クソミソに言っておるが別に「不快」ではない。(もう慣れました・・・涙)思想信条、政治的立場、宗教、人種、国籍、性的嗜好、職業、学歴、収入の多寡、容姿、ココロの病、ましてや門地を以て差別的言辞を弄(ろう)するなど論外だけれど、意外と(使っている本人は)悪意なく(旧態依然とした)先入観に凝り固まっているだけ、というパターンはよく拝見いたします。

 安直”言葉狩り”じゃないですよ、あれは”差別”の裏返しですから。「思考停止」でもある。(筒井康隆の短編を読んでいただきたい)”嗜好の違い”という意識が大切なんです。例えば、ワタシは一般にEMIの薄っぺらく低音の甘い、奥行きのない録音を嫌うが、もちろんすべての録音がそうであるわけはなし、ましてや「ワタシはそういう音が好きです!」という方の嗜好を否定することは(一切)なし。いえいえ、今朝、ネット検索していて気になったのは、上記”差別的云々”というような、そんな高尚な話題じゃないんです。

 アレッサンドロ・アリゴーニ/トリノ・イタリア・フィルハーモニー TIM  203301-205〜20310-205アレッサンドロ・アリゴーニ/イタリア・フィルによる「Mozart 交響曲全集」(但し第32番抜)が、1,680円ほどで入手可能(スリム仕様/2005年現在)でして、じつはコレ数回目の再発〜ワタシは3年ほど前(2002年)に購入(数百円高めで)しております。ワタシはまったりゆったり(テンポ遅め)、少々ユルいワン・パターンを楽しみました。先の毒舌こんの氏は、(いち早く)クソミソに評していて、それを承知で(ワザと)購入したもの。(人の評価など一切関知しない!・・・こともないが。ウヒヒ)こんなに経済的ハードル低く、無条件幸福ヴォルフガングの交響曲(ほぼ)全曲楽しめるなんて!

 じつは「アレッサンドロ・アリゴーニ」を検索して、某サイトの論評に行き当たりました。(そのまま勝手に引用すると失礼に当たるので、少々改変して趣旨だけ残します)

テンポがとっても遅い。プレーヤーが壊れたのかと心配になる。この演奏なら小林秀雄も「疾走する悲しみ」という名文句は残せなかったでしょうね。技術的には悪くないし、響きも美しいのだけれど、それだけにいっそう「色物」という雰囲気が濃厚に・・・変な演奏。

最終楽章・・・しまりのないテンポと表情。オーケストラもよくこんな解釈を許しましたね。ユニークなMozart が聴きたい!とか、Mozart なら何でも!という人以外にはお薦めできず。

・・・前後があるのでは?と思わせるでしょ。ないんです。これは常軌を逸した激遅テンポの「色物」であって、(滅茶苦茶)解釈を許したオーケストラもオーケストラである、「Mozart なら何でも」という人(=林 侘助。)以外聴くべきではない、といった趣旨か。いやぁ、もうクソミソ。ポイントは”しまりのないテンポと表情”かな?人、それぞれに嗜好があり、基準が存在します。「ワタシの基準は云々」だから、これはワタシの世界からは遠い・・・みたいな表現にならなかったのか。だいたい「色物」とはどういうことか。小林秀雄はどんな演奏を聴いて「疾走する悲しみ」を見出したのか、ちゃんと読み込み、分析した結果か。貴方は小林秀雄の友人ですか?

 ワタシは基本”なんでも楽しもう”という姿勢でございます。(それでも”好みからは外れちゃう”のはありますよ。最近だと小澤/サンフランシスコ響の「新世界」とか)上記、執筆氏は一般に「文句タレ」っぽい感じがあって、「否定することがアイデンティティ」風情が感じられました。「否定」ではなく「共感」でいきましょうよ。

 先日既に書いたけれど、●エミール・タバコフ/ソフィア・フィル(CAPRICCIO 79043 15枚組 2,817円)エミール・タバコフ/ソフィア・フィル(CAPRICCIO 79043 15枚組 2,817円)によるMahler 交響曲全集の件。購入のキッカケというか、最終決断は、HMVのクソミソ・ユーザー・レヴューだったんです。ま、別にハラは立っていないが。(むしろ感謝!CD再購入決意を促して下さったから)

 「演奏うんぬんを論議する以前の問題。メーカーは販売する資格もない」〜この人は、どんなエラい方なんでしょうか。(Delta Musicの株主ですか?)絶対にお友達になりたくないし、クラシック音楽を愛するものとして哀しくなります。メーカーはリスクを張ってCDを発売しているんです。「15枚組 2,817円」をチャンスとして、しっかりMahler を楽しめばよいじゃないですか。それでも、自分の嗜好から外れれば「残念ながら云々の理由でワタシの求めるものはなかった」と。

 先のベーム談義でも、様々なご意見、嗜好が百家争鳴状態〜まことに喜ばしい。めでたい。意見は多様で、相違があることこそ社会の活力なんです。人間ですから気分感情はあるし、仙人じゃないんだから”虚心坦懐”はムリでしょうね。ワタシも上記、いろいろとエラそうなことを書いているが、「この部分は差別ではないのか?」みたいなご指摘を受ける可能性もあります。(なんせ自分で書いているものは、かなりの比率で忘却しているし)ま、その時はお詫びし、修正するだけ。ごめんなさい。

 「読んでいて楽しい」音楽サイトって、ほんまに少ない(〜あまり沢山は見ていないから、あくまで自分の知りうる範囲で)もんです。ワタシのサイトは、あくまでド・シロウトの則を超えず、音楽をいっしょに楽しみたい、という趣旨でございます。万物は流転し、日々、自ら変容し、嗜好も変わります。読者の皆様のご意見を拝聴し、新しい音楽の切り口を発見する毎日に、感謝。

 

(2005年8月6日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi