Mozart ピアノ協奏曲第13/23番
(ニコルソン(fp)/クラーマー/カペラ・コロニエンシス)


CAPRICCIO  SMU11(10804/2)

Mozart

ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.415
ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488

リンダ・ニコルソン(fp)/ニコラス・クラーマー/カペラ・コロニエンシス

CAPRICCIO  SMU11(10804/2) 1989年録音 1,000円

 1990年に新星堂が出したMozart 1000シリーズから。このサイト初期に第12/25番(ビョルリン/カペラ・コロニエンシス/ミグダル(fp))を更新したまま、しばらく聴いていなかった音源です。録音、演奏、作品ともお気に入りだけれど、ワタシの粗雑な耳に古楽器によるMozart 協奏曲は、現代楽器に比べて表現の幅が狭いというか、正直「どれも似たようなもの・・・」に感じられて、少々コメントに困る、といった事情もありました。このCDが出た当時、古楽器による録音はほんまに貴重だったんです。ニコルソンはヒロ・クロサキ(v)との録音で知られております。

 やや粗野でチープな響きのフォルテピアノだけれど、表現的には引き締まって軽快颯爽とした清廉Mozart !ソロ部分だけでなく、管弦楽伴奏のみの部分にも、時に通奏低音として参加するフォルテピアノ(グルダを連想させる・・・が、皆やってますよね、最近は)。技術的に万全であって、リズムに軽快なるキレもあって、現在聴いてもまったく、どこにも違和感が存在しない・・・んなこと書いちゃうと、ほとんどの古楽器演奏は(よほどのことがない限り)似たような感想となってしまう・・・

 ・・・だから結論的に作品への愛情を語って、お茶を濁す結論へ。ハ長調協奏曲(K.415)との出会いはハスキル/バウムガルトナー/ルツェルン盤(弦楽合奏版1960年)でしたか、未だにCDでは再会していないが、これがワタシの刷り込みとなります。ニ長調K.537「戴冠式」によく似た屈託のない、明るい作品です。もちろん大好き。平板で、薄いフォルテピアノの音色、ノン・ヴィヴラート、ストレート素直だけれどやや素っ気ないバック(ふくらみ、陰影、変化、みたいなものが少しだけ足りないか。でも集中力は有)であっても、この浮き立つように楽しげな旋律の魅力は失われない、いや増すばかり。

 これがイ長調K.488協奏曲となると、稀代の名曲だし、浪漫の香り溢れる甘い旋律連続〜これをどう料理して下さるのか・・・日常、入念化粧正装の彼女は、ノーメイクの普段着でも(いや、だからこそ)その素顔の美しさ、表情感情の微細なる変化がはっきりと表出される・・・そんな感じですか?第2楽章”哀愁の”「アダージョ」は、さらり寂しげで、時に装飾音がニュアンス豊かであり、淡々と哀しみを歌いました。すっきり薄味だけれど、新鮮な素材の味がしっかり・・・これがオリジナルのテイストか。

 変幻自在天衣無縫なる終楽章「アレグロ・アッサイ」は、あわてず、遅すぎず、含羞の輝きが眩しい。「Mozart は子供にも弾けるが、どんな名人でも表現に苦慮する」・・・これは誰の言葉でしたか。

 これは1980年代CAPRICCIOで数枚録音された、様々な演奏家による古楽器Mozart ピアノ協奏曲集の一枚だけれど、よほどのことがない限り、正直”どれも同じように(素敵に)聞こえる”のは、ワタシが古楽器に未だ馴染んでいない、数を聴き込んでいないせいだと思います。軽快でややチープなソロ、ザラリと素朴な響きに充たされたバック、ハズむようなリズムの愉悦。

(2006年5月19日)


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written by wabisuke hayashi