Mozart ピアノ協奏曲第12/25番
(ビョルリン/カペラ・コロニエンシス/ミグダル(fp))


CAPRICCIO  SMU10(10804/1)

Mozart

ピアノ協奏曲第12番イ長調K414
ピアノ協奏曲第25番ハ長調K503

ウルフ・ビョルリン/カペラ・コロニエンシス/マリアン・ミグダル(fp)

CAPRICCIO  SMU10(10804/1) 1984年録音 1,000円

 マリアン・ミグダルは1948年ポーランド生まれのピアニストだそうで、ネット検索するとBerwald のピアノ協奏曲が出現します。古楽器専門でもないらしく、録音はあまり多くありません。このCDもネット音源としてはいくつか拾えるが、入手は難しいかも。「1990年に新星堂が出したMozart 1000シリーズ」には、このほか、クリスティーネ・ショルンスハイム(現在はBerlinClassicsにて入手可能)、リンダ・ニコルソン(CAPRICCIOレーベルで運が良ければ入手可能)計3人の女流による古楽器録音を揃えておりました。当時としてはライン・アップ、価格とも意欲的。十数年前のこと、今は昔。3枚3,000円か、う〜む。ウルフ・ビョルリン(ビェーリン)は1933年スウェーデン生まれのヴェテランだそうです。

 「中期までのピアノ協奏曲には古楽器による演奏が似合」うとは、おそらくは2000年頃↓下のコメントであって、作品的に聴く機会が少ないから先入観がない、ということでしょうか。他の古楽器演奏を聴いてもそう感じます。「カペラ・コロニエンシスの響きは意外と厚みがあって、響きが薄すぎたり潤いに不足することもありません」とはその通りでして、この時点、既に練り上げられた瑞々しいアンサンブルを堪能させて下さいます。技術的に完成されていて、リズム生き生き、しかも過激に走ることもない余裕有。音質極上。

 「余韻が乏しく、おもちゃのような音色のフォルテ・ピアノは既存のイメージを一変させます」という評価は、当時自分はいったい何を基準としておったのか?”余韻が乏しく、おもちゃのような音色”そのものであって、まさにそれが”ちょっとツィンバロンみたいに”感じさせる(馴染みの)フォルテピアノそのもの。細部表情豊かで艶やかなるニュアンスとか、強弱メリハリという点では古楽器ソロは少々不利なのでしょう。音量も不足気味であって、素朴繊細な響きを味わうべきものでしょう。ここ最近、この系統の演奏ばかり聴いているので、旧来評価の定まった演奏を少々重く感じたものです。

 イ長調協奏曲K414は、ウィーン時代の幕開けを告げる第11番 K.413、第13番 K.415と並んで、屈託のないシンプルな(保守的な)作風となっております。楽譜の売れ行きを意識してか「管楽器はオプション」とのこと(実際にそんな録音も存在する)。第2楽章にJ.C.Bach の作品(聴いたことがないオペラの序曲)が引用されているそうで、1782年1月に亡くなったロンドンの師匠に捧げているとの蘊蓄はネットで拾えます。このアンダンテが端正で絶品の旋律!これが粗野で素朴なフォルテピアノで、纏綿と奏されるのも味わい深いもの。

 カペラ・コロニエンシスは、ハ長調協奏曲K503にて(作品のイメージ通り)意外と柄の大きな演奏を繰り広げておりました。おそらく作品選定はレーベルの都合だろうが、こちらハ長調という調性に相応しいスケールと、明るさを備えた名曲であります。こちら現代楽器で馴染みが深いし、オーケストラが雄弁なぶん(深い木管に惚れ惚れ!)だけ、ソロの存在が少々地味な印象(音量が弱いから)はありましょう。

 ステレオ録音初期(1960年前後)に、やたらとソロを強調した協奏曲録音が存在しました。そこまで極端なる例を引かなくても、こんなバランスが本来の(作曲当時の)イメージに近いのかも。マリアン・ミグダルの技巧は見事なもので、おそらくは楽器由来の微妙な”揺れ”もあって、古楽器なりの味わいの変化を堪能できます。クリスティーネ・ショルンスハイムがかなり硬派の推進力を見せる(この説得力も凄いが)のに対して、しっとりとオーケストラと絡み合って一体化しておりました。

(2009年8月8日)
(以下は以前のコメント)

 1990年に新星堂が出したMozart 1000シリーズから。当時はまだ珍しかったフォルテピアノによる協奏曲が3枚ありました。レーザーライト(=CAPRICCIO)の廉価盤は、最近あまり見ないので残念。

 ワタシ、はっきり云ってモーツァルトのピアノ協奏曲はどんな演奏でもOKなんです。いつも感動します。だからこのCDも、ほんとうは云々できない。「楽しいなぁ」で終わり。でも、それじゃわざわざHP開いている意味ないでしょ。で、屁理屈を少々。

 カペラ・コロニエンシスって、ほかのレーベルでは「ケルン合奏団」と訳されている団体でしょうか。ビョルリンはどんな人か知りませんが、同じ組み合わせでHaydnの交響曲第50/87/89番のCDを持っています。マリアン・ミグダルもこのCD以外見たことなし。(もしかしたらベルリン・クラシックで出ていたかも)

 中期までのピアノ協奏曲には古楽器による演奏が似合いますね。カペラ・コロニエンシスの響きは意外と厚みがあって、響きが薄すぎたり潤いに不足することもありません。12番の屈託のないシンプルな旋律は相性ピッタリ。

 余韻が乏しく、おもちゃのような音色のフォルテ・ピアノは既存のイメージを一変させます。ちょっとツィンバロンみたいにもきこえる。「カル〜いMozart 」を聴いてしまうと、現代楽器は少々もたれる感じないでもない。シンプルな旋律、といいながら、ちゃんと短調への暗転〜もとの調整に戻るいつもの魅力的な手口は健在です。最終楽章の、名残惜しげに立ち止まるところも素敵な名曲。

 後期の傑作の中でも、第1楽章の主題がやや大柄すぎて、あまり好きでない25番。ここでは古楽器のコクのある弦や、粗野な味わいの管楽器(オーボエやフルートはハッとするくらい)の響きに魅了されて新鮮この上ない。

 第1楽章カデンツァの多彩で楽しいこと。現代楽器で聴くと、スケールの大きなこの曲が、軽快で親密に生まれ変わるから面白いですね。この楽器はあまりたくさん聴いていませんが、ミグダルの表現は、ずいぶんていねいで繊細と思います。

 オーケストラもソロも、過激なリズムにならず、ふっくらと暖かい。技術的には申し分なく、オーケストラのアンサンブルも優秀。やや保守的な表現でしょうか。ソロも時々テンポをゆるめたりして、色気を出していますね。

 録音は優秀。
 手持ちのCDの中でも出色の水準です。適度な残響、ソロの存在感(fpの雑音まできこえる)、録音会場の奥の方から響く、胸に染み入るようなフルートの距離感。よく練り上げられた弦のアンサンブル。


おまけ

Mozart ピアノ協奏曲第12番イ長調K414
アンダ(p、指揮)ザルルブルグ・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ(1966年録音)

DG 429001-2(10枚組)11,250円で購入した全集のうちの1曲。

 ずいぶん、聴いていなかったので聴き比べで取り出したCD。

 冒頭のオーケストラのリズムがユルくって、思わずニヤリ。時代ですかね。

 アンダのピアノは、ニュアンスが細かくて、芯があって、なんとも云えない集中力。フォルテピアノのあとに聴くと、色気を感じるくらいの輝かしい音色。カデンツァはモーツァルト自身のもの。(ミグダル盤は表記無)

 オーケストラのアンサンブルはイマイチですが、親密で愛らしいモーツァルトになっていて、安心感があります。少々月並みだけど、聴き慣れた昔ながらのMozart 。
 アンダは1976年に亡くなっていますが、忘れ去られるにはあまりに惜しい名人でした。


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written by wabisuke hayashi