Mozart ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216(ジョコンダ・デ・ヴィート)/
クラリネット協奏曲イ長調K.622(ジャック・ブライマー)/
ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191 (186e) (ギディオン・ブルーク)
(トマス・ビーチャム/ロイヤル・フィル)
Mozart
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
ジョコンダ・デ・ヴィート((v)1949年)
クラリネット協奏曲イ長調K.622
ジャック・ブライマー((cl)1958年)
ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191 (186e)
ギディオン・ブルーク((fg)1959年)
トマス・ビーチャム/ロイヤル・フィル
ああ、こんなのもパブリック・ドメインとなってネット・ダウンロードできるようになったんですね。英国の名手ジャック・ブライマーによるクラリネット協奏曲は、LP廉価盤時代からの馴染み(裏面はメロス・アンサンブルによるクラリネット五重奏曲)であり、当時よりこれ以上の演奏があるのだろうか?と、しみじみ愛聴していたもの。おそらくは20年以上ぶりの再聴に、当時と寸分違わぬ感動を得ました。他は初耳、一番心配していたのは、音質なんですよ、なんせ太古半世紀前ですから。とくに1949年のジョコンダ・デ・ヴィートの音源。
件(くだん)のヴァイオリン協奏曲第3番ト長調始まりました。人工的に広がりが付加され、それは幸い成功して聴きやすい音源に仕上がっておりました。彼女の演奏はほとんど聴いていなくて、ほぼ初耳。ビーチャムのまったり余裕、落ち着いて、軽妙かつ豊かなオーケストラに支えられ、蠱惑的というのか、しっとり瑞々しいセクシーな音色のヴァイオリンが素敵です。神経質でも、きんきらと華やかでもない、ヴィヴラートも妖しい歌い口。途中たっぷりテンポも落として(一部ポルタメントも有)、落ち着いた味わいにリズムはしっかり躍動しておりました。
ま、浪漫風なんでしょうね。これが妙に魅力的。第2楽章「アダージョ」、もともと懐かしい情感に溢れる名旋律、纏綿とした歌心は、なんとも言えぬ官能の世界に至ります。現代には聴けないスタイルながら、古臭い印象ではありません。終楽章「ロンド」も急いた印象皆無、デリケートな色気に溢れ、そっと静謐に進めておりました。往年の女優出演の映画を見たような、そんな演奏です。
音楽は人それぞれの嗜好があって、例えばレオポルド・ウラッハの端正なる演奏(1954年)が一番人気なのでしょう。貧しい若者だったワタシは廉価盤しか買えなかった。久々の拝聴印象はまず、音質極上。ブライマーのクラリネットは、ほのかなヴィヴラートに充ち、美しい低音から高音の抜いたような静謐迄、ほとんど気が遠くなるほどの陶酔が待っておりました。ビーチャムのオーケストラがデリケートかつ豊かな響き、もうほとんどそれだけで懐かしい、安寧の気分に支配されることでしょう。どの楽章も落ち着いた情感に溢れ、その印象は、若き日の感動が勘違いでなかったことを証明して下さいました。
この作品が「白鳥の歌」であるとは、おそらく件のLP解説にて拝読したと記憶するが、そんな平明静謐な心境を感じ取ったことを思い出しました。
ギディオン・ブルークのファゴットも初耳。ロイヤル・フィル、フィルハーモニア管弦楽団の首席を務めた名手だったらしい。淡々として軽妙快活、テクニックは流麗であり、洗練された音色を誇ります。例の如し、ビーチャムのバックは入念なニュアンスに充ちて繊細であります。第2楽章「アンダンテ」の安寧、第3楽章「ロンド」に於けるほっとしたような開放感はピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482第3楽章「ロンド」を連想させる愉悦。
この作品との出会いであり、愛聴盤であるジョージ・ズカーマンを再聴したくなりました。記憶ではもっと、いっそう優雅浪漫方面であったような・・・ブロークのほうがちょっぴりモダーン?ここ最近の古楽器系演奏は聴いたことはありません。 (2012年9月3日)
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