Mahler 交響曲第10番 嬰ヘ長調(クック版第3稿第1版)
(ウィン・モリス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)


ネットより入手音源/おそらくLP板起こし Mahler

交響曲第10番 嬰ヘ長調(クック版第3稿第1版)

ウィン・モリス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

1973年録音(おそらくクック版第3稿第1版初演と同時期)

ネットより音源入手/おそらくLP板起こし/後にCDも入手

 LP時代あれほど感動したのに、CD入手して再会すると?状態。既に処分済みです。ネットにてダウンロード出来るサイトをみつけた(場所失念!そのうち探します)のも何かのご縁、自主CDにて再聴し、往年の感激が蘇りました。(音質印象もあるのか)硬派のMahler 愛好家には邪道なる補筆完成版なのかも知れぬが、ワタシはけっこう若い頃から全曲愛聴しておりました。第1楽章「アダージョ」だけじゃ満足できん!Joseph H. Wheeler/フィーラー版というのもちゃんと聴いておりましたよ。他、ゴージャスなるバルシャイ版も大好き。カーペンター版というのはこれからの宿題です。いずれ、ド・シロウトには細部のこだわり、違いなどわかるはずもなくて、どれも旋律、響きを堪能しているだけなんだけど。

 ウィン・モリスは2010年に亡くなっていたんだな。ジミな経歴やなぁ、シンフォニカ・オブ・ロンドンという自ら創設したオーケストラへの言及も見あたりません。CD化もエドゥアルド・フリプセの第8番じゃなく、モリスで揃えればよろしかったのに、と思います。PHILIPSとの契約問題があったんだろうな。(第1番初稿、第2番、第5番、第8番、第9番、子供の不思議な角笛、嘆きの歌は、この第10番とはレーベルが異なる)

 音質最高。柔らかく、豊かな残響と奥行きたっぷり。ニュー・フィルハーモニア管弦楽団も絶好調ですね。機能的に整っていても怜悧に素っ気なくなり過ぎず、暖かい響きは主観的な詠嘆に走らないバランス感覚有。馴染みの第1楽章「アダージョ」はよく歌って美しいが、粘ついた情念など感じさせません。28分11秒だからテンポは中庸?やや遅めか。第2楽章「スケルツォ」は賑々しくもユーモラスな楽章なんだけど、ここでも徒に爆発疾走させない抑制が感じられます。力感に不足しないが、どちらかというとまったりとした余裕でしょうか。オーケストラはよく鳴っております。

 第3楽章「プルガトリオ(煉獄)」。ほんの短い、これもユーモラス?妙に怪しい変化もあって不思議な躍動を感じさせて魅力的。第4楽章「アレグロ・ペサンテ 急がずに 」〜これもスケルツォなんだそう。悲劇的であり、ひりひりとヒステリックな嘆き(かなりの衝撃!)を感じさせる劇的楽章。ウィン・モリスはアンサンブルを整えることに於いて、かなり神経質なのでしょう。中間部の優しいワルツは優雅に、すっきりと表現され、”ヒステリックな嘆き”も響きは濁らない。そして、心臓の鼓動のような大太鼓へ・・・

 第5楽章「フィナーレ」。殉職した消防士の葬列は大太鼓の定期的な鈍く、鋭い響きによって表現されます。全曲で80分を越えるから自主CDはここから2枚目に配置したが、失敗だったな。第4楽章ラストの大太鼓からそのままフィナーレに継続させないと意味ないじゃん。どこも素敵な作品だけれど、この「ずしん!」と響く大太鼓こそ白眉、ショッキング。若き日ひきとわ感銘深かったのはここだったんです。滅茶苦茶暗い。絶望の淵、状態。チューバ怪しすぎ。やがて安寧と再生の気風高まって感動的に全曲を閉じます・・・ラストのトランペットの超・長音は凄い衝撃。全曲通して妙に怪しい雰囲気満載也。大好きな作品です。

 Mahler は20世紀後半には大人気となって、一昔前の録音を久々に聴くと(アンサンブルやオーケストラの技量、そして音質的に)ツラいことがあったんです。ウィン・モリスとの再会はそんな心配を一掃して下さいました。現在、データにて他第5番、第8番、子供の不思議な角笛を入手済み。楽しみにして聴きましょう。

(2011年9月30日)

上記、更新後、じつは以前LP→DATで残していた音源で更新済であったことを発見いたしました。情けない。


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written by wabisuke hayashi