Mahler 交響曲第6番イ短調
(小澤征爾/ボストン交響楽団)
Mahler
交響曲第6番イ短調
小澤征爾/ボストン交響楽団
PHILIPS 1992年ライヴ 現在の番号はDECCA UCCD-4789
2015年に第5番を聴いておりました。ネットを探るとレビューの一部には”栄えある最低盤”とのレビューもあって、嗜好は人それぞれ、求めるものも違います。誰もが納得する決定盤探しの時代でもないでしょう。4管編成、ティンパニは二人、種々多種多様な打楽器(カウベルにむちとか)ハープ2台にチェレスタも入る巨大編成。じつはその大仰に深刻巨魁な風情に、大好きなMahler中苦手意識が高じて拝聴機会は減っておりました。小澤征爾(1935ー日本)の長期ボストン時代(1973ー2002)の代表的な録音、57歳の充実した記録、全集音源を点検整理していて、この誠実緻密な演奏に胸打たれました。もう30年前ですよ。これは見上げるような”大仰に深刻巨魁な風情”に非ず親密、ボストン交響楽団は洗練され優秀なアンサンブルでした。優秀録音。
第1楽章「Allegro energico, ma non troppo(激しく、しかし腰のすわったテンポで)」は低弦による追い立てられるように切迫した行進曲。金管の高らかな響きが暗く減衰する風情も印象的なところ。几帳面にリズムを刻んで細部ていねいな描き込み、神経質な開始でしょう。金管はコクがあって解像度高く、そして情熱を込めた「アルマのテーマ」も誠実に響きます。この作品にありがちな粗野に暴力的テイストではない。(23:40)第2楽章「Scherzo(重々しく)」はリズムが3/8拍子に変わっただけで前楽章と似たような風情(だから「Andante」と入れ替える演奏も一理有)速めのテンポに切迫し、テンポは揺れ動いて、そして響きは緻密に重くない。テンポの頻繁な動きに不自然さもありません。重量感怪しさ、スケール不足を気にされる方はいらっしゃることでしょう。ボストン交響楽団の金管の輝かしさ、アンサンブルの統率、厚み、緊張感は一流でしょう。(13:42)
第3楽章「Andante moderato」(緩徐楽章)をここに配置すると終楽章との対比は際立ちます。素直に洗練された静謐な弦、牧歌的なホルン、輝かしい金管の冴え、詠嘆に粘らぬ爽やかな表現は全曲の白眉でしょう。カウベルも高原に響き渡りました。(15:11) 第4楽章「Finale, allegro moderato」は低弦のピチカートからチェレスタ、ハープの幻想的な響きが思いっきり怪しい開始。やがて金管がコラール風に合奏して、それは深みのある魅惑の音色でしょう。ダメ押しのティンパニを強調しないバランス(これは第1楽章から一貫している)。提示部のテンポは速めに軽快、全体として粘らず、怪しさより爽快素直な流れが個性なのでしょう。壮麗な金管乱舞はライヴとは思えぬ一糸乱れぬ統率とのびのびとした歌、クリアな響きに濁りはありません。この軽快(軽量?)な疾走を嫌う人がいると想像は可能です。(30:43盛大なる拍手入り) (2022年8月20日)
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