Mahler 交響曲第1番ニ長調/花の章
(小澤征爾/ボストン交響楽団1977年)


DG UCCG4428 Mahler

交響曲第1番ニ長調(1977年)
花の章(1984年)

小澤征爾/ボストン交響楽団

DG UCCG4428

 つい先日第6番をしっかり聴いて、好感を得たものです。こちら旧録音42歳の記録、現役バリバリ元気働き盛り、旧録音となります。二年ぶりの拝聴でした。青春の胸の痛みを感じさせるデリケートな旋律連続、大好きな作品の出会いはほんのこどもの頃(おそらくは中学生時代)ブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団(1961年)でした。それはもう十数年聴いていないと思います。四管編成にティンパニ二台、更に数種の打楽器、ハープも入る華やかな作品。音質も極上と聴きました。

 第1楽章「Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemachlich(ゆるやかに、重々しく)」は、森の奥深く啼き交わす鳥の声が響いて神妙な出足、提示部繰り返し有。若い頃はこんなピュアな蒸留水のようなさっぱりサウンドを”味がない”と嫌っておりました。やがて華麗なる加齢に嗜好は変わって響きがクリアに濁らず、各パート響きのバランスよろしく慈しむようにデリケート。わかりやすい歌曲旋律は懐かしく、ボストン交響楽団は優秀なアンサンブル、厚みのある艶は洗練され、素直な表現が加わって、パワフルとか剛直スケールに非ず、これはほとんど理想の姿と感じます。(15:53)

 第2楽章「Blumine(花の章)」は夢見るように可憐なトランペット・ソロ。今回初めて後年の別録音と知りました。専門筋の方によると版が違うから、ここに配置するのは正しくないらしい。ま、こちら市井の音楽愛好家(=ワシ)は安寧のしみじみ懐かしい旋律、儚くも短い楽章をちょっとした息抜きとして堪能いたしました。(5:58)

 第3楽章「Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell(力強く運動して)」は低弦がごりごりと躍動する開始、スケルツォは闊達に輝かしく元気がよろしいけど、仕上げはあくまでていねいでした。金管の爆発も細身にクール、粘着質表現とは無縁に生真面目な響きは洗練されて濁らない。中間部の優雅なレントラーも甘さ控えめ。(7:36)

 第4楽章「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」は神妙なカノン。引用旋律はまさかの「グーチョキパーでなにつくろう」短調版。物憂いコントラバスは適度な不器用さに納得(かつてオーマンディ/フィラデルフィアのコントラバスが華麗に響くのに驚愕!したもの)神妙な流れも清潔にさっぱり、重くならないけれど、遣る瀬なさに不足するのは予想通り。中間部は「花の章」同様夢見るようにデリケート、これは歌曲「彼女の青い目が」ですよね。(11:13)

終楽章「Sturmisch bewegt(嵐のように躍動して)」渾身の爆発も楷書の表現に、喧しさを感じさせぬ盛り上がり。浮き立つような青春の旋律、すっきりと耳当たりのよろしい、バランス演奏を堪能いたしました。(19:53)

(2022年10月15日)

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written by wabisuke hayashi