Liszt ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調/第2番イ長調/死の舞踏/呪い
(アルフレッド・ブレンデル(p)/ミヒャエル・ギーレン/ウィーン交響楽団1958年)


BRILLIANT 93761/29 Liszt

ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
ピアノ協奏曲第2番イ長調
死の舞踏
呪い

アルフレッド・ブレンデル(p)/ミヒャエル・ギーレン/ウィーン交響楽団

BRILLIANT 93761/29(35枚組)/VOX1958年録音 *1975年表記は誤り

 純個人的に感慨深い一枚。ま、音楽は嗜好品だから全部”個人的”に間違いないけれど。

 若手の演奏をもっと、意欲的に聴いてあげなくっちゃいけないのだろうが、どうしても昔馴染みに感慨有・・・こどもの頃は通常の半額廉価盤LP(当時1,000円程度)しか買えなかったし、社会人になってもその性癖変わらず。CD時代になっても中古LPを(しばらく)買い漁っておりました。このCD収録された4曲分、たしかLP2枚分、ジャケットもない処分品を入手したはず。おそらく計1,000円程でしょう。今は昔。でもね、ワタシにとってLisztは苦手中の苦手、Beeやん辺りの比ではない・・・唯一、リヒテルのみ例外〜痺れておりました。

 たしか、LP入手時にも「死の舞踏」「呪い」に閉口し、CD時代になってイェネ・ヤンドー盤を入手して再挑戦、やはり辟易して二度と聴くもんか!と決意、即処分したはず。VOXはLP〜CD時代に至ってもずいぶんとお世話になったけれど、音質の悪さに苦しんでおりました。2010年後半、できるだけ既存所有ダブりを処分して「ブレンデル35枚組」を入手、旧VANGUARD録音の優秀さは認識していたけれど、VOX録音の音質改善に驚いたものです。やや肌理粗いのは年代的に仕方がない(とくに後半収録のオーケストラ部分)けれど、21世紀現役としてちゃんと拝聴可能なる水準。ブレンデル27歳、ギーレン31歳、未来の巨匠達の競演でした。

 やがて私的発見、目覚め有!・・・Lisztが楽しい!ブレンデル盤再発見前段のキッカケがありまして、ディミトリ・スグロス(p)のLiszt メフィスト・ワルツ第1番(1987年メルボルン・ライヴ)/リゴレット・パラフレーズ(1989年シドニー・オペラ・ハウス・ライヴ)/ピアノ協奏曲第2番イ長調〜マルコ・ミュニヒ/スロヴェニア・フィルハーモニー交響楽団(1987年リュブリャナ・ライヴ)のキレのある演奏に惚れました。ああ、そういえば〜と取り出したのがこの一枚。おお、なんてテンポの遅い、堂々たる構えの演奏なんだ・・・

 出会いはたしかフィリップ・アントルモンによる17cmLP(ローティーン時代)。第1番 変ホ長調協奏曲は細部迄旋律馴染んでますよ。深刻なる出足「Allegro maestoso」旋律がまことにツマらない・・・が、すぐに優しくも甘美、纏綿とした旋律がオーボエ、ヴァイオリン・ソロと絡み合って対比を見せました。ブレンデルは表情豊かに、朗々と、キラキラと硬質なタッチ、よく歌って急がない。「Quasi adagio」も抑制が利いて、デリケート静謐な集中力続きます。ギーレンのオーケストラも、その方向に息を合わせているのでしょう。この部分ラストの木管+チェロは充分美しい。

 「Allegretto vivace - Allegro animato」は有名なトライアングル活躍部分也。ここはユーモラス、囁くようなピアノも繊細でしょう。ラスト部分「Allegro marziale animato」は冒頭の仰々しい(あまり美しくない)旋律回帰して、やがて賑々しくオーケストラ参入、ギーレンはテンポを上げようとするが、若きブレンデルはてこでも動かぬ、といった落ち着いた風情でした。正確、端正なスタイルを崩さない。テクニック表出に走らない。凄いテクニックなんだけど。

 第2番イ長調協奏曲は、件のスヴャトスラフ・リヒテルにて出会いました。こちら優しくも静謐な開始に威圧感もなし、けっこう好きですよ。ピアノの細かいアルペジオにホルンやオーボエが絡んで美しい・・・やがて大仰なるピアノ・テクの披瀝が始まって・・・堂々たるオーケストラとの渡り合いへと展開します。この辺りは所謂”Liszt節”、残念ながらほんまにツマラぬと感じます。ここでもブレンデルは明晰クリアなタッチ、知的な風情を崩しません。「Tempo del andante」〜弦(チェロ・ソロ)とピアノの親密な絡み合いが、冒頭の優しい風情を回帰させました。(この静謐はリズムを変え、なんども繰り返します)

 それにしても・・・凄いテクニック。響きはまったく濁らぬピアノ。ラスト「Allegro animato」は息を呑むばかりの技巧の冴え。

 「死の舞踏」は例の「怒りの日」旋律(「幻想交響曲」終楽章が有名)を使った、大仰かつ威圧的、華やかなテクニック前面、喧しい変奏曲也。ま、アクロバティックつうことでっせ。冒頭のぶちかまし部分にて、既に辟易するけれど、ブレンデルのピアノは正確知的な則を崩さない。静謐部分はエエけど、喧しいところは喧しいなぁ(といった作品への情愛を微塵も感じさせぬコメント)。「呪い」は、冒頭なんやねん、デーハーな作品風情は、といったテクニック披瀝用技術先行作品也。生演奏にて拝聴すべきものでしょうか。ここでもブレンデルの知的な洗練が(時々)顔を出しました。ガマンして聴いているとけっこう美しい旋律発見ありまっせ。

(2012年4月14日)


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written by wabisuke hayashi