Holst 組曲「惑星」(エイドリアン・ボウルト/
ウィーン国立歌劇場管弦楽団1959年)


MCA MCD80099 @750 Holst

組曲「惑星」

Vaughan Williams

グリーンスリーヴズの主題による幻想曲
トマス・タリスの主題による幻想曲

エイドリアン・ボウルト/ウィーン国立歌劇場管弦楽団/女声合唱団の表記なし(1959年)

MCA MCD 80099  750円

 たしか御大ボウルト3/5回目の録音だったはず。もちろん初のステレオ、現役で通用する音質であります。なんどかウィーン・フィルに登場して録音もあるようだから、このオーケストラの実態はウィーン・フィルなのでしょう。演目とオーケストラは珍妙なる組み合わせ?BBC交響楽団との1945年録音も聴き応え充分、後年ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1966年)、ロンドン・フィルとのラスト録音(1978年)も愛聴盤です。

 若気の至りにて、以前所有していたCD処分後、ようやく2008年再入手したCDとなります。

非力なオーケストラがムリして音を絞り出して〜みたいな苦しさはなくて、オーケストラが作品に慣れていないだけだろうと思われます。(ミスタッチ/アンサンブルの乱れ緩みさておき)オーケストラはそれなりに鳴り切って、虚飾のない骨太表現とマイルド豊かなサウンドが絡み合って、充分”聴かせる”音楽になっておりました。当時、馴染みの少なかったであろうご当地に、英国音楽の普及を狙ったものでしょう・・・やや不自然な定位ともかく、音質的にも悪くないし、御大ボウルトの貫禄に敬意を表することに吝(やぶさ)かでもないが、今回は心身共の調子イマイチのためか、リズムの鈍重さが気になります。(「音楽日誌」2008年10月)
   なるほど。今回久々の拝聴では(記憶通り)アンサンブルが相当酷いというか、オーケストラが明らかに作品に慣れていないというか、自信なさげ。ボウルトの指揮ぶりというのが、そんな緻密なものじゃないのかも。柔らかく、ちょっぴり粘着質サウンドも作品とはちょっと個性が異なるのでしょう。厚みはあります。

 「火星、戦争をもたらす者」に於ける激しく勇壮なるリズム(5拍子)は緩く、縦線が全然合っておりません。ここは一発激しくがんがん演って欲しいところだけれど、妙に遠慮がちな開始となりました。「金星、平和をもたらす者」は甘美マイルドな響きが緩徐楽章の風情に似合って聴きもの。「水星、翼のある使者」は音型細かいスケルツォ楽章であって、ヴァイオリン・ソロ〜木管ソロに語り継がれる旋律は各々なかなか美しい。上出来です。

 全曲の白眉である「木星、快楽をもたらす者」。ここが「火星」に引き続き(かなり)ヘロヘロ。金管ミス連発、弦とのアンサンブルも相当ズレまくっております。やる気のないウィーン・フィルってこんなんなのか?それとも録音用メンバーで主力が抜けておったのかも。ま、ミスっても全然かまわない、時にかなり豪快に鳴るんだけれど、リズムが重くてノリノリじゃないところがそうとうヤバい感じ。

 “I vow to thee, my country”(我は汝に誓う、我が祖国よ)、というより平原綾香ちゃんの「ジュピター」のほうが馴染みか、ここの勇壮朗々とした歌はさすがの貫禄であります。木管金管個々の音色はとても魅力的。

 「土星、老いをもたらす者」〜この静謐暗鬱深淵なる雰囲気も上出来でっせ。但し、徐々に切迫したリズムが迫ってくる緊張感には少々弱い感じ。「天王星、魔術師」これもスケルツォ。ユーモラスなリズム感が切迫して、やがて金管が炸裂するところなど、かなりの上出来でしょう。ここでも縦線とリズムのキレがちょっぴり足りないけれど。

 ラスト「海王星、神秘主義者」。それこそ神秘的、繊細なる味わいに溢れて、ハープや鉄琴が幻想的、トドメは遠方から響いてくる雪女の誘い(このネタは「南極交響曲」にて使ったな)が妖しく、危うい。締めくくりは文句なし。

 Vaughan Williams グリーンスリーヴズの主題による幻想曲/トマス・タリスの主題による幻想曲は、愛聴盤のひとつ。このCD入手とともに、リンク先のCDは処分したが、やがてネットに音源登場いたしました。(「音楽日誌」に書いたばかり)

 http://elbaulcoleccionista.blogspot.jp/2012/06/boult-dirige-vaughan-williams.html  ボウルトの十八番であり、なんども録音しております。ま、なんといってもバルビローリの纏綿、朗々たる甘美な歌が素晴らしい。こちら剛直骨太ストレート、飾りのない風情に味わい有。この作品、大好きだなぁ。音質はあまりよろしくはないけれど、オーケストラ(実態ウィーン・フィル?)も充分美しい。「惑星」ではそうとうアンサンブルはへろへろだったけれど、作品の特性故?ちゃんとした、美しい演奏に仕上がっております。

(2012年7月15日)


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written by wabisuke hayashi