Debussy「聖セバスチャンの殉教」より/バレエ音楽「カンマ」/
「リア王」より/「放蕩息子」より(準・メルクル/リヨン管弦楽団)


NAXSO 8.572297 Debussy

交響的断章「聖セバスチャンの殉教」より(ユリの庭/法悦の踊りと第1幕の終曲/受難/よき羊飼い)第2幕:魔法の部屋〜前奏曲/第3幕:偽りの神の懐柔〜ファンファーレ第1/ファンファーレ第2(Caplet編)
バレエ音楽「カンマ」(C.Koechlinによる管弦楽補筆編)
「リア王」(J. Roger-Ducasseによる管弦楽編)(ファンファーレによる序曲/リア王の眠り)
セーヌ・リリック「放蕩息子」より「行列と踊りの歌」

準・メルクル/リヨン管弦楽団

NAXSO 8.572297 2009年録音

 準・メルクル(1959年ー)は半分日本の血が入った独逸人、リヨン管弦楽団の音楽監督は2005ー2010年在任、その間の意欲的な成果がNAXOSのDebussy9枚組であります。Debussyの管弦楽と云えばフツウ「海」「夜想曲」「映像」「牧神」+αくらい。以前より愛聴しているルイ・ド・フロマンだったら4枚ほど、こちら編曲ものも含め微に入り細を穿つ収録に、仏蘭西音楽ファンとしては見逃せぬマニアックなセットであります。

 これは(ピエール・モントゥー1963年録音以来)幾度聴いても全貌がつかめぬ「聖セバスチャンの殉教」(原曲は5時間に及ぶ神秘劇とか)のお勉強をしたかった。交響的断章(4曲23分)+3曲計6分ほど合計29:13収録。ほんわか幻想的官能的に音が重なり合う静謐な「ユリの庭」(3:44)劇的な動き、トランペットも雄弁な「法悦の踊りと第1幕の終曲」(7:21)暗くうごめくように甘美、つかみどころのない「受難」(5:55)遠くから木管金管が呼び交わし合う不安げ〜やがて牧歌的な安寧に至る「よき羊飼い」(6:02)〜とまぁ、テキトーにコメントしているけど起承転結はっきりした音楽じゃなくて、繊細デリケートなつぶやきばかり。

 第2幕:魔法の部屋〜前奏曲(4:15)ここも消え入るように幻想的な囁きが続いて、第3幕:偽りの神の懐柔〜ファンファーレ第1(1:51)/ファンファーレ第2(00:36)は金管の動き(+ティンパニ)のみだからわかりやすい。残念ド・シロウトは全貌を理解するほど理解は深まりませんでした。音質良好、アンサンブルは緻密と聴きました。

 バレエ音楽「カンマ」(22:02)はピアノ版のみ完成されたそう。カンマとは「エジプトの伝説的な踊り子」(Wikiによる)とのこと。上記「聖セバスチャン」と同時期、つかみどころのなさ、静謐繊細が支配する難解さは似ていると思います。打楽器の出番が少ないようで、激しい爆発アクセントが少ないことも一因でしょう。一番長い第2場(11分ほど)〜第3場(3分ほど)は多彩な響きに躍動して、複雑な旋律和声の絡みは天才のワザなのでしょう。打楽器の活躍も華々しく盛り上がりました。

 残りは短い作品ばかり。「リア王」のファンファーレによる序曲(1:38)〜型通りのトランペットのファンファーレが味わいある旋律に劇的に変容します。リア王の眠り(2:51)これもわかりやすい、ちょっぴり不安な風情。scene lyrique(セーヌ・リリック)って直訳すると「オペラの舞台」ということになるんだけれど、ようわかりません。「放蕩息子」(4:59)は明るく、懐かしい旋律であります。

 リヨン管弦楽団って、大昔のイメージではローカルなサウンド、あまり洗練されぬアンサンブルだったはず。21世紀に至ると、みな上手くなるもんですね。

(2017年8月20日)

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written by wabisuke hayashi