Debussy ピアノと管弦楽のための幻想曲/
クラリネットと管弦楽のための狂詩曲/神聖な舞曲と世俗な舞曲/
アルト・サキソフォンと管弦楽のための狂詩曲/
サラバンド/「喜びの島」/レントより遅く/「月の光」
(ヤン・パスカル・トルトゥリエ/アルスター管弦楽団)


CHAN10144-47X Debussy

ピアノと管弦楽のための幻想曲(アンヌ・ケフェレク(p))
クラリネットと管弦楽のための狂詩曲(クリストファー・キング(cl))
神聖な舞曲と世俗な舞曲(レイチェル・マスターズ(hp))
アルト・サキソフォンと管弦楽のための狂詩曲(Ducas編)(ジェラード・マクリスタル(sax))
サラバンド(Ravel編)/「喜びの島」(Molinari編)
レントより遅く(デレク・ベル(ツィンバロン)/「月の光」(Caplet編)

ヤン・パスカル・トルトゥリエ/アルスター管弦楽団

Cahndos CHAN10144-47X 1992年頃?録音情報詳細不明

まず収録作品がGood!全体として清涼でクール過ぎるほどのサウンドだけれど、気品があって洗練されております。豊かな残響に恵まれ、アンサンブルはけっして四角四面なものではない、繊細な”粋”はちゃんとあります。ちょっと生真面目だけれど。こんな蒸し暑い夏の夜にピタリ!たよりなく呟くクラリネット最高。(2009年7月「音楽日誌」)より
 Yan Pascal Tortelier(1947ー仏蘭西)もヴェテランとなりました。北アイルランドのベルファストのオーケストラであるアルスター管弦楽団は実力派、彼は1989-1992年首席指揮者を務めて、Ravel、Debussyの管弦楽作品全曲録音は代表的なものでしょう。彼のDebussyはかなり以前よりお気に入りでした。これは協奏的作品を中心に集めた4枚目となります。この作品に於ける自分のリファレンスであるルイ・ド・フロマンにも類似の録音が存在して、名曲を愉しんで拝聴しておりました。

 ピアノと管弦楽のための幻想曲は実質三楽章からなるピアノ協奏曲、初演は1919年アルフレッド・コルトーなんだそう。「Andante ma non troppo」はオーボエとハープに導かれて夢見るような開始、きらきらと華やかなピアノが優雅にゆったり、気紛れに歌います。(8:29) 「Lento et molt espressivo」 はフルートに始まる落ち着いた静謐。ピアノはつぶやくように静謐、そして幻想的。(8:15)「Allegro molt」は快活な細かいリズムに充ちて、明るい躍動に輝かしく全曲を締めくくります。(8:10)Anne Queffelec(1948ー)は仏蘭西の名手。これほど表情豊かな名曲なのに、Ravelに比べて演奏機会が少ないように感じられるのは、ピアノと管弦楽(三管編成)が対等平等、ソロの妙技が際立たぬせいでしょうか。

 クラリネットと管弦楽のための狂詩曲初演は2011年、管弦楽初演は作曲者の死後1919年、奏者には難曲中の難曲とのこと。物憂く官能的なクラリネットの妙技がラプソディックに自在に歌います。ちょっぴりヴィヴラートがセクシーなクリストファー・キング(このオーケストラ首席ですか?)最高。北アイルランドのオーケストラだけど、カール・ライスターの生真面目に正確な音色を思い出せば、まったく違う個性、ド・シロウトには仏蘭西風とはこんな感じ?劇的な管弦楽との掛け合いも、やはり対等平等でしょう。(7:43)

 神聖な舞曲と世俗な舞曲は1904年のハープ作品。Ravelの「序奏とアレグロ」と競って楽器メーカーの意向を受けたものらしいけど、夢見るように美しい作品に間違いない。神聖(緩)と世俗(急)はデリケートに神秘的な静謐と、浮き立つような優雅な3/4拍子の対比なのでしょう。(5:10-4:59)アルト・サキソフォンと管弦楽のための狂詩曲はソロとして活躍の少ない楽器の代表的なものでしょう。思いっきり官能的に雄弁なサックスに闊達な管弦楽が呼応して、これは賑やかに華やかな作品でした。(10:17)

 「サラバンド」は「ピアノのために」第2楽章をRavelが編曲したもの。緻密な色彩感が加わって別な世界が広がります。(4:34)「喜びの島」の管弦楽編曲は作曲者の指示によるものとか。リディア旋法と云われてもなんのことやら?例の如し天才的に気紛れ自在な旋律が。オリジナルとは別のテイストになって、ラストはかなりの壮大なる迫力へ。(6:18)

 レントより遅くはピアノ独奏、ヴァイオリン、そしてこの管弦楽三種の版があるそう。官能的なワルツはツィンバロンの儚い音色がアルカイック、いっそうデリケートな官能性が際立ちました。(5:25)「月の光」は誰でも知っている夢見るような甘い旋律。これはオリジナルのほうが好きかな?サウンドの色付けはノーミソ中に聴き手が組み立てたほうがよろしいかも。(4:18)どれもドッシャーン・ガッシャーン風大爆発とは無縁のデリケートな音楽ばかり、夏バテ気味の耳に優しく響きました。アルスター管弦楽団は淡い色彩感と明晰なアンサンブルが際立っております。

(2022年8月27日)

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written by wabisuke hayashi