Bizet 歌劇「カルメン」全曲(フリッツ・ライナー/RCAヴィクター管弦楽団/ロバート・ショウ合唱団/
リーゼ・スティーヴンス(ms)/ジャン・ピアース(t)/ロバート・メリル(br)他)


79812RG Bizet 

歌劇「カルメン」全曲

フリッツ・ライナー/RCAヴィクター管弦楽団(CD表記に従う/RCA Victor Orchestra)ロバート・ショウ合唱団/ニューヨーク・フランス語リセ少年合唱団/リーゼ・スティーヴンス(ms:カルメン)/ジャン・ピアース(t:ドン・ホセ)/ロバート・メリル(b:エスカミーリョ)

写真はRCA 79812RG 1951年録音 ネットより入手音源

 魅力的、自由奔放移り気気紛れ女・カルメンに入れ込んで、身を持ち崩し、最後は破滅する生真面目一方なドン・ホセ、誰も知っている悲劇的なストーリー。声楽ものはBach とMahler くらいしか日常聴きしない粗忽な(自称)音楽愛好家、好き嫌い嗜好乗り越え著名作品はリファレンス(参照の基準/それなりの音質前提)を棚中揃えることにしたはず。ところがCD処分を進めた挙句、全曲はこのモノラル録音と、ヘルベルト・ケーゲルの独逸語盤しか手許にないことに気付きました。マリオ・デル・モナコのボリショイ1959年ライヴ(抜粋)が刷り込みというヘンな経歴なんです。

 以下のカセット・エアチェックへのコメントは十数年前、既に上記デル・モナコ(LP→DAT)もカセット(抜粋)も消えてしまって、今回ちゃんと全曲拝聴は久々。終幕の感動はそのまま蘇ったけれど、拝聴理解の深化ほとんどなし。印象一変!するほどの目覚め、発見、悟りはないんです。音質印象は思ったよりかなり改善されていて、日常聴きに支障ない水準をかなり凌駕して臨場感たっぷり。管弦楽組曲の普及のお陰か(序奏や幕間の間奏曲は皆知っているはず)+(これも大好きな)Bizet/Shcedrin編 バレエ音楽「カルメン」組曲をさんざん聴き込んだせいか、聴き馴染んだ旋律頻出して全4幕計145分。筋書き各キャラクターもわかりやすくて、永遠の初心者にはありがたい名曲であります。  

ライナーのオーケストラはかっちりと緊張感のあるアンサンブル、テンションも一貫して高い、オーケストラも上手いもんです。音質も極めて良好。リーゼ・スティーヴンスはメトロポリタンの名花と呼ばれた別嬪はんだそう、端正であり、多彩な表現を誇って、素晴らしい説得力。ほんまの悪女じゃないですよ。ロバート・メリルの”闘牛士の歌”最高っす。勇壮で。

 ジャン・ピアース・・・熱演でっせ、充分。色男なんだよね、ドン・ホセにしては。リーゼ・スティーヴンスはほんまに立派、ラスト迄声が美人(別嬪はんでっせ)、迫力あるけれど芯から悪女じゃない・・・ライナーのオーケストラは素晴らしくて、「カルメン」の旋律って誰でも知っているでしょ?組曲のやつ。これが、おそらくは今迄聴いた中で最高のアンサンブル、端正に縦線が整っているだけじゃなく、リズムがかっちりして、木管もよく歌って美しい

・・・2年程前の印象と寸分違わない+ロバート・ショウ合唱団の充実ぶり(縦線の合い方+集中力)は尋常じゃないっすよ。オーケストラは録音用の常設団体らしく、ライナーが鍛えあげた切れ味最高アンサンブル(後年のシカゴ響と録音同様)、それに負けぬよう最高の声楽陣を揃えたのでしょう。

 ワタシの如きド・シロウトにはわかりにくい”云々版”の件、グランド・オペラ版(ギロー版)なんだそう(場面のつなぎは会話ではなく、レチタティーヴォになっている)。フランスのグランド・オペラには必須のバレエの場面(第4幕)に歌劇「美しきパースの娘」から「ジプシーの踊り」と歌劇「アルルの女」から「ファランドール」入り、たしかマリオ・デル・モナコのボリショイ1959年ライヴ(抜粋)同様、偶然だけど、一般的ではないそう。ここもライナーの集中力が聴きもの。タンバリンの存在もリアル、刷り込みだからこれがなくっちゃ、てなところ。それに終幕では歌詞を変えているんだそう(いずれ仏蘭西語方面にはまったく疎いので、聞きかじり情報)意図はわかりません。

 社用車外出中しっかり拝聴+帰宅して更に再聴して、たっぷり堪能いたしました。エエ加減、ちゃんとしたステレオ録音、世評高い演奏も聴かなくっちゃ。昔からエア・チェックとか廉価盤、今だったらネット・フリー音源→自主CDみたいな世界から抜け出せないから、妙にマニアック(かつ素敵な)音源ばかり聴いてしまいます。

(2014年6月21日)


Bizet 

歌劇「カルメン」抜粋

フリッツ・ライナー/RCAヴィクター管弦楽団/ロバート・ショウ合唱団
リーゼ・スティーヴンス(ms)/ジャン・ピアース(t)/ロバート・メリル(br)/レンクナー(s)/ロッジェーロ(ms)

FM放送からのエア・チェック  1950年頃の録音か?(RGC1113〜5 LPの放送)

 べつに珍しくもない録音でしょうか。一度、中古屋さんで全曲CDを見かけて買おうか悩んだものです。(買えば良かった)前半の有名どころ数曲と、第4幕全曲収録で約50分間。音の状態があまりよくないのは、カセットへのエア・チェックのせいかもしれません。「カルメン」は知っている旋律ばかりで、ワタシにとって数少ない、本当に楽しめるオペラなんです。

 カルメン、ドン・ホセ、エスカミーリョ、主たる役どころはオール・アメリカ人のようで、おそらくメトロポリタンのスター達でしょうから、RCA管というのはニューヨークの録音用オーケストラと想像されます。(2000年に亡くなったシュムスキーがコン・マスを務めていたはず。この録音に参加しているかどうかはわかりませんが)このオーケストラは上手い。

 ライナーというと、なんとなくシカゴ響とのコンサート専門のようなイメージがありますが、若い頃はずっとオペラ畑だったそうだし、アメリカに渡ってからもメトロポリタンの指揮者をしていたはず。(ブダペストでの「カルメン」がデビュー曲)キリっとしたリズム感、ノリノリのアッチェランド(にぎやかな楽の調べ)、堂々たるルバート(闘牛士の歌)、完全に縦の線があったアンサンブル、等、後年のシカゴ響との録音と同じ印象なのは、やはりライナーの個性なのでしょう。

 第4幕のはじめがずっと管弦楽(ファランドール等々)が続くじゃないですか。これがほんとうに楽しい。アツくなります。興奮します。リーゼ・スティーヴンスはやや知的で、頭の良いカルメン(アメリカ・デビューは「ばらの騎士」のオクタヴィアン)か。でも、ラストのドン・ホセへの拒否の一声はドスが効いています。エスカミーリョは、堂々たる押し出しだけれど頑固そうで真面目、スケベな色男ではない。ロバート・メリルってプロ野球選手だった、というのは本当でしょうか。

 ドン・ホセ役のジャン・ピアースは感情的で、良い意味で声がうわずっているようで、ハマリ役でしょう。(でも、ワタシはデル・モナコのボリショイ・ライヴを知っているので、どんなテナーでも満足できない)合唱団の美しさも特筆もの。スタジオ録音ながら、全体のアンサンブルの完成度と同時に、舞台が眼前に思い浮かぶような「動き」を感じる演奏でした。熱演。

 この曲、筋も役どころもわかりやすくて、いいですねぇ。わざわざこんな古い録音で聴かなくてもよいのでしょうが、長いあいだ聴き馴染んでいるせいか満足しました。この度、無事MD化。(2000年11月17日更新)


 余白には、ボベスコによる夢見るようなクライスラー「ウィーン奇想曲」、そして「愛の悲しみ」「愛の喜び」を、カセットそのままに収録しました。いつ聴いても「愛の悲しみ」には、やすらぎの涙を誘われます。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi