Britten ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ/
歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」/パッサカリア/
イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時…」作品90
(レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィル)


SICC-2208 Britten

ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ(1961年)
歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」/パッサカリア(1973年)
イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時…」作品90 美果と美酒-にがいヤナギ-まぬけのハンキン-リスを追え-メルバーン卿(1976年)

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィル

SONY SICC-2208

 正直なところここ最近、そこそこの音質であればどんな演奏でもかまわない、まず作品を堪能しましょ、的音楽生活に至っております。某有名作品、究極の表現を求めて日々精進!とか、戦前の某歴史的名演復刻版、より佳き状態を求めて多大なる出費厭わず!みたいなストイックなものとは対局、このバーンスタインの録音だって、エイドリアン・ボウルトのほうが好きかも、なんて考えつつ聴いておりました。ま、ほんの場末の音楽ファンの備忘録ですから。

 これも中学校で聴いた「青少年のための管弦楽入門」以来、そこそこ馴染みのBenjamin Britten(1913ー1976英国)、ヴァイオリン協奏曲とかオペラとかけっこう苦戦して時に敬遠し、こうして著名作品を聴いてみるとジミジミ名曲やなぁ、と。こどもの頃入手した17cmLPはロリン・マゼール/フランス国立放送管弦楽団(1962年ナレーターは小山田宗徳)学校教材といった先入観も説明も抜きに聴いてみると「変奏曲とフーガ」って滅茶苦茶カッコ良い!作品。バーンスタインは音楽教育に力を入れていた人だから、ちゃんと録音していたのですね。往年の巨匠は(例えば)カラヤンが「ピーターと狼」「おもちゃの交響曲」を録音していたように、こども向け音楽にもちゃんと取り組んでおりました。

 母国偉大なる先人Henry Purcell(1659ー1695英国)劇音楽「アブデラザール」〜劇的「ロンド」主題は多種多彩変幻自在各パートによって変容され、ラスト「フーガ」圧巻のラッシュへ。以前拝聴したときの感想は

初心者向けに非ず、冷静に聴けば先人の主題を借りて多種多様な変容、むしろ劇的ハードな作品かと。オーケストラの技量はモロに出て、ここでのニューヨーク・フィルは腕利きばかり、従来の作品イメージとはかなり違って、バーンスタインは”大きく茫洋”に仕上げてものすごい説得力。ハープ担当の幻想風情〜そしてフーガの熱狂的な迫力が白眉。この一枚中音質もこれが一番よろしい。

「4つの海の間奏曲」は緊迫感溢れ、カッコ良い緊張感に充ちておりました。ところが十数年後のオーケストラは少々粗く、音質もちょっぴり落ちます。人気絶頂だったけれど、オーケストラはじょじょに技量が落ちていた時期なんやろなぁ。

 ・・・勝手なことを書いているけれど、1973年1976年のニューヨーク・フィルは既にブーレーズ時代、粗くなったアンサンブルを立て直していた時期でしょう。変奏曲とフーガ(1961年)は先のコメントにある通り、”大きく茫洋”劇的に重く仕上げてものすごい説得力。各パート腕の見せどころな変奏曲、劇的な主題を換骨奪胎して多種多様なリズム色彩に変幻自在、やがて「フーガ」圧巻の熱狂に「主題」が回帰する・・・バーンスタイン43歳、気力体力充実して意欲的な演奏であります。1961年頃のニューヨーク・フィルは充実しておりましたよ。

 「4つの海の間奏曲」は緊迫感溢れ、カッコ良い緊張感に充ちて・・・とは前回拝聴のコメント。オリジナルのオペラ「ピーター・グライムズ」は聴いたことはないけれど、「間奏曲」だけで尋常ならざる悲劇をたっぷり予感させます。「パッサカリア」の賑々しい雑踏も含め、バーンスタインは力強く”粗い”感じ。こうして再確認すると音質は各々個性が違うだけでさほどに悪くもない。

 イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時…」は馴染み薄い作品。Vaugahn Williams「イギリス民謡組曲」の牧歌的に楽しげな風情を想像すると別世界、きっと著名な民謡からの再編成なんだろうけれど、こちら旋律の扱い響きも少々前衛化して神秘的、この辺りの選曲もバーンスタインらしい凝ったものでしょう。

(2020年1月12日)

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written by wabisuke hayashi