Brahms 交響曲第1番ハ短調/
大学祝典序曲(クリストフ・エッシェンバッハ/ヒューストン交響楽団)
Brahms
交響曲第1番ハ短調
大学祝典序曲
クリストフ・エッシェンバッハ/ヒューストン交響楽団
Virgin TOCE-16126〜9 1991-93年録音
Christoph Eschenbach(1940−独逸)も80歳か、現在ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の首席らしい。これは壮年期亜米利加のオーケストラとの意欲的な全集録音より。2管編成なのに堂々たるスケールを誇る人気重厚作品、エッシェンバッハはごりごりと熱血汗水系演奏に非ず。余裕のあるテンポ設定に旋律末尾をアッチェレランドに走らせない、むしろクールな表現でした。作品のスケールを意識して構えの大きな演奏は、オーケストラの音色がBrahmsに似合っていない感じ。歴代グラマラスなシェフを招いたオーケストラに技量的な問題はありません。微妙に明るく、金管の深みが足らぬような・・・それでも残り3曲も聴きたくなりました。(2020年5月「音楽日誌」より)
ここしばらくBrahmsの鬱蒼と暗い風情が気になって、あまり聴いておりません。中年男の寂しげな後ろ姿を連想させるピアノ作品とか、湧き上がる情熱を感じさせるピアノを伴う室内楽とか、かつてお気に入りでした。今年2021年5月にクレンペラーを聴いて以来の著名な交響曲の拝聴となりました。この立派なハ短調交響曲は「新世界」と並ぶ人気演目なんだとか、とても大柄に大きく響くけれど、二管編成なんですよね。Brahmsのマジックに驚かされるスケール作品。
最近コンツェルトハウス管弦楽団と再録音して、オーケストラの鳴らないことに驚いたもの。ヒューストン交響楽団音楽監督在任期間は1988-1999年。指揮者として知名度を上げてきた時期でしょう。昔の拝聴記憶ではもっと大仰に、わざとらしい誇張した表現だった?それはどーも記憶間違いだったみたいで、意外とオーソドックスに端正な完成度でした。音質良好。
第1楽章「Un poco sostenuto - Allegro」はティンパニ連打に低音楽器による半音階的旋律がカッコよい!確固たる歩みの序奏から開始。繰り返し実行している提示部は決然として力強いけれど、金管の響きは明るく牧歌的でもあり、全体としてやや響きは薄く、威圧感は少ないと感じます。以前聴いた時にはテンポが遅いと記憶していたけれど、緊張感は維持しつつ中庸に慌てぬ優雅な風情でした。(19:11)
第2楽章「Andante sostenuto」は愛に充ちた緩徐楽章。年齢を重ねるとこんな安らかな音楽が好みになる・・・オーボエとヴァイオリン、ホルンが重なり、絡み合ってしみじみ活躍するところが聴きもの。ここもかつての記憶では纏綿と粘着質に歌っていたはずが、オーソドックスな表現は濃厚に非ず。立派なアンサンブル、エッシェンバッハの表情付けもていねいだけれど、各パート”色”が少々足りない、誠実な慌てぬ歩みが前面に出たもの。(11:21)
第3楽章「Un poco allegretto e grazioso」は終楽章クライマックスに向けた間奏曲。木管のアンサンブルが優雅ですね。明るく晴れやかな表情に盛り上がって、誠実な歩み、名残惜しい終末、この楽章は文句なし。(5:08)第4楽章「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」アタッカで終楽章に突入はエッシェンバッハの考え方でしょうか。鬱蒼と暗く、重苦しい序奏からピチカートに導かれて、やがてティンパニ・ロールがアルペン・ホルンを呼んでくる・・・爽快な情景はフルートに引き継がれます。この管楽器の音色が勝負!上手いけどなぁ、市井のド・シロウト(=ワシ)が云々しちゃ笑止千万、それを前提に音色にコクと深みがほんのちょっぴり足らん、弱いかも。欧州一流どころは、ここで空気がらり変わって痺れますもの。(最終前場面でのホルン再来も同様の印象)
そして「喜びの歌」旋律開始。シンプルな音形をやがて巨大なる構築物に組み上げるのがBrahmsの得意技。エッシェンバッハはここでテンポアップも自然な流れ、熱気にあふれて軽快な明るさが続きました。ラスト前にたっぷりテンポを落とすのも悪くない。威圧感のない軽めの響きに一気呵成なフィナーレも悪くありません。(18:33)
大学祝典序曲は賑々しくて楽しい作品ですよね。これは誰の演奏でもかまわないけど、明るくキレのあるサウンドに勢いを感じました。(11:11) (2021年12月25日)
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