Brahms ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調/間奏曲/ラプソディ
(アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/
ヨーゼフ・クリップス/RCAヴィクター交響楽団)


RCA(SONY) 88697760992 Brahms

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調(1958年)

間奏曲 変ロ長調 作品117-2/ホ短調 作品 作品116-5/ラプソディト短調 作品79-2(1970年)

アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/ヨーゼフ・クリップス/RCAヴィクター交響楽団

RCA(SONY) 88697760992 CD2

 毎日、手許に溢れかえるステキな音楽を満喫しております。大好きな音楽を心ゆくまで、お腹いっぱい毎日聴きたい・・・そんなこども時代の夢は叶ったけれど、高価なLPCDを少しずつ、大切に聴いていた若い頃の渇望、音楽に対する謙虚な姿勢が懐かしいもの。毎週一回の【♪ KechiKechi Classics ♪】定例更新は自分への自戒でもあります。悩みの大部分は”音源選定”、さてなにをしっかり聴こうかな?と。大好きなBrahmsのピアノ協奏曲第2番は巨大なる4楽章、昔馴染み、LP時代より愛聴しているルービンシュタイン1958年録音、サイト内検索したらほとんど言及していないことに気付きました。

 Arthur Rubinstein(1887ー1982波蘭)は若い世代にはもう過去の人なのか。この人の演奏に失望したことは一度もなくて、ふくよかで味わい深い、どれも絶品!温かいタッチにいつも魅了されます。技巧に難有とか、Rachmaninovのピアノ協奏曲第3番の録音途中、ミスタッチを論(あげつら)ったフリッツ・ライナーと衝突して中断したとか、そんな逸話ばかり噂になっているけれど、次世代の”上手いけど味がない”演奏とは天と地ほどの違いを感じます。音質も往年のRCAに感謝、この1958年ー1970年録音にほとんどなんの不満も感じません。

 協奏曲は4回録音したうちの3回目?得意作品なのでしょう。71歳の演奏に衰えの片鱗も感じさせません。全編に漂う余裕、巨大なる難曲に構えるべく力みも皆無。第1楽章「Allegro non troppo」遠くに木霊するホルンに導かれて、低音から覚醒する静謐なピアノ・ソロ。やがて雄弁劇的な管弦楽(それでも2管編成なんやなぁ)がピアノと対等平等に活躍して熱気を帯びて朗々と、切なく語り合います。録音用オーケストラを率いるJosef Krips(1902ー1974墺太利)は大柄に力んだ表現とは無縁の穏健派、優雅、素直に控えめだけど上手いオーケストラでっせ、予想外に。(16:50)

 第2楽章「Allegro appassionato」協奏曲には珍しいスケルツォ楽章はニ短調。軽妙なる「諧謔曲」とはイメージ一新、シリアス重厚な推進力がBrahmsの真骨頂でしょう。遠慮がち微妙に揺れ動くテンポ、デリケートな間も絶品、それにぴたり!寄り添うオーケストラの息も絶妙に合っておりました。雄弁に盛り上がるスケールの大きさに不満もない。(9:03)第3楽章「Andante」は冒頭、延々切々と歌うチェロが聴きもの、主役(次第提示)を他のパートに譲るBrahmsの技ですね。それが管弦楽に粛々と受け継がれピアノ・ソロが登場するのはようやく2:40辺り。甘美陶酔の緩徐楽章最高。美しく名残惜しく、時に控えめに激昂して、切ない風情が儚くも、時にほとんど止まってしまいそうに息を潜めて絶品。やがて、冒頭のチェロに戻る・・・(12:36)

 第4楽章「Allegretto grazioso」。晴れやか軽快にピアノ・ソロがスタート。やがて決然として力から強く、クリップスのオーケストラが控えめにジミに、ルービンシュタインを支えているのですね。ソロとオーケストラは対等に会話して、寄せては返す切ない呼応が最大の聴きもの。ピアノ・オブリガート付きの交響曲なんて呼ばれるけれど、全編を通してピアノ・オーケストラとも耳に鋭い威圧など一切感じさせぬ”余裕”演奏、豊かな表情の変化に心奪われる演奏でした。(8:59)シャルル・ミュンシュとの旧録音への言及が残っておりました。

 ルービンシュタインの間奏曲/ラプソディは若い頃出会って「浪漫派はピアノ・ソロ室内楽に限る」嗜好を決定づけた名曲名演奏。どれも中高年男性のうら寂しい後ろ姿を連想、後ろ向きの思い出と諦念を感じさせる切々旋律が続きます。最高です。これは83歳の驚異的な記録。

(2019年6月30日)

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written by wabisuke hayashi