Brahms ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
(アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団1952年)
Brahms
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団(1952年)
MEISTERKONZERTE100枚組 17/100枚
出会いはルービンシュタイン/クリップス/RCAヴィクター交響楽団による1958年録音のLPだったと記憶します。ピアノ協奏曲としては異例の4楽章制、40分を超える長大なる作品なのに意外と親しみやすい旋律が気に入りました。たしか北独逸出身の作曲者が伊太利亜・明るい日差しへの憧れを表現した作品でしたっけ?彼特有の重苦しいスケール作品だけれど、明るく、わかりやすい旋律連続で長丁場を飽きさせません。やがて”Brahms 苦手”意識へと至り、CD時代に入ると聴く機会は激減状態。ポリーニ旧録音くらいかな?聴いていたのは。それが”50分弱”となっているから、こちら43分はずいぶんと快速なのでしょう。モノラルだけれど音質良好。ルービンシュタインは数回同作品を録音しているが、こうして旧音源が安価に復刻されることを喜びましょう。
世間ではバックハウス辺りが高評価なのでしょうか、なんせ若手の演奏を聴く(もちろんナマでも)機会を得ないものですから、最近のことは・・・さっぱり〜状態。これはルービンシュタイン65歳の録音であって、晩年まで技巧に陰りの出なかった人だけれど、明快ヴィヴィッドなタッチが”重苦しいスケール作品”のイメージを変えております。ピアニストにとっては難曲中難曲とのことだけれど、そんな難渋を感じさせぬソロ。ボストン響就任3年目のミュンシュは、いつものように情熱的な推進力、オーケストラの技量に優れ、やはり明るい響きがソロと似合っておりました。
全編に渡って勇壮、かつ壮大なるスケール、そして重厚を誇る作品だけれど、第1楽章「アレグロ」は伸びやかなピアノが爽快であって、ミュンシュも例の如しの情熱的推進力が、粘着質な重苦しさとは無縁のサウンド。よく歌い、オーケストラは緻密な集中力より流れとか勢いを重視して、テンポは(体感)やや速めでしょう。哀愁の旋律は淡々と表現されたほうが映えるのは自明の理、ルービンシュタインの暖かい微笑みの音色は意外やBrahms に似合うんです。やがて熱血ミュンシュに煽られて、ピアノもやや激昂の時がやってくる・・・彼のBrahms の小品集は20年来の愛聴盤(RCA BVCC-5085)也。
第2楽章「アレグロ」は協奏曲としては異例の楽章であって、交響曲でいうところの「スケルツォ」なんでしょうか。全体バランスとしては違和感なし。ほの暗い旋律はリズムに乗って、ソロは微妙に揺れて浪漫であります。ルービンシュタインは激しく叩き付けるタッチとはもとより無縁、リリカルな味わいで細部曖昧さや、弾き流しはありません。それでもミュンシュの勢いに微妙に影響を受けて、”アツさ”に不足はない。聴き手をウキウキされるに充分なる躍動が存在します。
第3楽章「アンダンテ」〜ここ数年、華麗なる加齢故か?緩徐楽章への嗜好はいっそう深まるばかり。ここでの主役はチェロであって、楽章冒頭から2分余り美しいチェロ協奏曲?を聴かせられ、やがて忘れた頃に静謐なるピアノが天上から降りてくるんです。ここも躍動する若々しさ、ミュンシュとルービンシュタインの化学反応は続きます。年寄(としょ)りじみた落ち着きとは無縁であって、静謐と歌、情感の高まりは順繰りに掛け合って、テンポはやや速め、陶酔の世界へちゃんと誘って下さる。
第4楽章「アレグレット」〜ここまでたどり着くと、さすがに”長い作品だなぁ”といった手応え有。そこは手練れのヴェテラン・ピアニスト、さらりと鼻歌でも歌うようにそっと開始します。どこも軽妙で肩の力は抜けており、ピアノとオーケストラの掛け合い、歌い交わしは絶妙であります。同じ旋律を呼応させたり、旋律の一部を分けあったりするじゃないですか、そんな風情は大好き。この楽章、個人的感想としては「機嫌のよろしい、明るい交響曲第4番ホ短調第4楽章」といったところか。やはり緻密神妙より、勢い情熱が優先な演奏なんだな。したり顔のBrahms に非ず、生命(いのち)の躍動溢れる世界。なかなかエエではないか。 (2010年9月17日)
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