Beethoven 交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱付き」
(ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィル)


Disky DB70708 Beethoven

交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱付き」

ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー/合唱団/ミュンヘン・モテット合唱団/ウルズラ・コジュート(s)/ブリギッテ・ファスベンダー(con)/ニコライ・ゲッダ(t)/ドナルド・マッキンタイア(b)

Disky DB70708  1973年5月31日〜6月4日録音

 かつて正しい日本人であったワタシは、「年末は第九」との先人の教えを忠実に守っておりました。岡山居住時代(1999-2007)には必ず生演奏のお誘い(ご招待)もあったもの。”Beeやん苦手”を公言しつつ、2001年2003年、二度にわたって「第九棚卸し」を決行!わずか数年、華麗なる(精神的)加齢は急激に進み、リンク先CDはほとんど処分、わずか6枚を残すのみ(別途新たに入手したものは有)。堕落いたしました。「第九」といえばMahler かBrucknerでしょ?そんな感じ。

 ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルのBeethoven は、既に第2/6番第1/5番への言及が残っております。後者は今年2011年夏の更新だけれど、CD一枚聴き通すのが凄く苦しかった記憶があります。しかし、意外なことにBBSには共感の声が・・・わからんものですな、各々の嗜好とは。

 自分はオーディオの門外漢だから、音質云々するのは笑止千万。オーケストラの技量がどうの、というのもド・シロウトの浅はかな勘違い、それを前提として〜アナログ最盛期の期待としてはクリアな響きと、低音が不足すると感じます。もちろん、鑑賞の支障になる水準に非ず、なんせ歴史的太古録音が論議のまな板に乗る作品ですから。音質にも嗜好があるから、このような方向を(むしろリアルであると)支持される方も多いことでしょう。オーケストラの響きそのものが素朴淡彩に過ぎ、響きが薄い、と感じるのも好みの問題。アンサンブルの縦線が揃っていればすべてOK、といった乱暴な論議に与するつもりもありません。誠実、質実、暖かいサウンドはミュンヘン・フィルの個性なのでしょう。

 第1楽章「アレグロ」始まりました。神秘的、天から聖なるものが降り注ぐ楽章イメージ。堂々として誠実であり、威圧感はない。やがて、蕩々とした流れに奥底から暖かいものが滲み出て、いつしか奔流へと至る自然な説得力有。第2楽章「モルト・ヴィヴァーチェ」スケルツォも前楽章とイメージは変わりませんね。かなりヴィヴィッドな躍動に溢れるが、響きに素朴さと抑制を失わない。スケールに威圧を伴わない。厚みと低音がと弱く、キレや深み足りないとも言えるかも。テンポ、あくまで中庸。

 第3楽章「アダージョ」。年々室内楽とか緩徐楽章とか、静かな音楽をより好む今日この頃。この素晴らしくも長大なる変奏曲のキモは、深遠なる「弦とホルン」だと思うんです。この時期ミュンヘン・フィルの「弦とホルン」は弱点だった、との記述をネット上にて拝見したことがあります。弦の薄さ(?淡彩と表現すべきか)は前2楽章にて検証済み、こんな繊細淡々なるテイストも悪くはないじゃないの。ホルン大活躍なはずのこの場面、なぜか存在が薄いんです(9:00辺りに登場するソロもおそるおそるといった感じ)。木管はよく歌っていますけどね。安定して、意表を突くような表現皆無、粛々と静謐な世界継続いたします。清潔なテイストは悪くない。

 終楽章は有名大人気だけど、ワタシは全曲通すと違和感があるんです。第1〜第3楽章はほんまに名曲!との手応え有。終楽章冒頭のただならぬオーケストラの気配もカッコ良い・・・でもね、前3楽章の回想〜「喜びの歌」旋律静かに登場・・・って、この辺りがどーもムリムリな感じ。その後の変奏曲はほんまにお見事。でもね、声楽の扱いってBeeやんあまり上手くないんじゃないか(って、エラそうだなぁ、ド・シロウトが。上から目線?)。

 冒頭のカッコよい導入に物々しさはなく、「喜びの歌」は誠実な広がりあり、一年をシミジミ振り返るのにはぴたり!さて、声楽の出来はいかがか。ニコライ・ゲッダ(t)って、いかにもオペラ風表情豊か、というのがちょっと違うんじゃないか。他の声楽ソロ陣もけっこう華やかで、オーケストラが誠実地味系だし、その対比はけっこう目立ちますよ。ドナルド・マッキンタイア(b)もドラマティック。ケンペのオーケストラはテンポ設定、緊張感あるテンションが誠に立派ながら、響きが薄い、(やはり、ちょっぴり)鳴らないオーケストラといった印象を得ました。

 全合唱が「喜びの歌」を全力で歌う場面(13:20辺り)はテンポも前のめりになって、リキは入ってますよ。新しい録音のMahler 辺りを聴くと、もの凄く透明でピタリ!アンサンブルの合唱に時々出会うけど、そんな感じじゃなくて、もっと朗々と一生懸命歌いました!的熱気感じ。オーケストラより声楽主体か。声楽ソロ陣の絡みも雄弁です。やがてオーケストラも声楽も一体となって立派なクライマックスを迎えました。

 充分アツいフィナーレでしょう。

(2011年12月30日)


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written by wabisuke hayashi