Beethoven 交響曲第1番ハ長調/
第5番ハ短調(ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィル)


Disky DB70708 Beethoven

交響曲第1番ハ長調 作品21(1972年)
交響曲第5番ハ短調 作品67(1971年)

ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー

Disky DB70708

 真摯、素朴、虚飾がない。響きはジミであり、威圧感皆無の誠実さ、暖かさ。おそらくは優秀録音だけれど、オーケストラそのものが艶々の重量感とは別なものなでしょう。厚みが足りないとの感想は、ベルリン・フィル辺りを聴き慣れているとそう感じられるかも。ワタシは”Beeやん苦手”を公言する罰当たり者だし、どちらかというと古楽器(系)嗜好でもあります。40年も前の演奏を云々するのもなんだけど、なんせクラシック音楽は保ちがよろしい。油断すると懐古趣味に陥っちゃうが、この大不況な21世紀に、このような質実な演奏は録音として残らない時代に至っている可能性は高いと思います。

 Beethoven の交響曲を集中して聴くには、既に心身ともに疲れ果てました。子供の頃から馴染みだから、旋律細部は身に付いております。第1番ハ長調、第2番ニ長調辺りは古典的、端正な作風がワリと好きですよ。第1番は若い作品だから、溌剌と勢いよく演奏して欲しい〜ケンペは落ち着いて、中庸、全体として隈取りを強調した表現に非ず、力みはないが、力感に不足はない。疾走しないが、推進力は充分なんです。結果として出現するサウンドは、水彩画のような淡彩な味わいであり、響きに濁りを伴わない。

 ま、爽やかということですよ。体脂肪かなり絞っているが、筋肉質ではない。淡々として解脱したような清潔テイスト。これがBeethoven 理想の方向とは思わぬが、押しつけがましさがないのはエエではないか。

 「運命」交響曲はハードな作品ですよ。ケンペは「真摯、素朴、誠実」路線を継承しつつ、さすがリズムのメリハリをきっちり付けて、第1番とは表現を変えております。さきほど「おそらくは」 優秀録音と書いたけれど、おそらくは実演がこんなサウンドのオーケストラなんじゃないか。緊張感、スケールに不足はないが、艶、色気が不足して、牧歌的誠実な世界が継続いたします。ま、嗜好だからな。日本人は真面目だから「真摯、素朴、誠実」路線に多く支持が集まっておりました。

 第1楽章は思わぬ力感に少々驚きつつ、やがてあまりの素朴な響きに少々呆れ、第2楽章「アンダンテ」にて、じわじわと滋味を感じるに至りました。第3楽章は決然とした歩みに不満はない。それにして”動かない”演奏だなぁ、耳目を驚かすような変化がほとんどない。極めて真っ当、ストレートというのでもない。かくあるべき中庸といったところ。無為無策なツマラなさ、といった表現上の怠惰ではないんです。

 終楽章は思わぬ流麗な推進力を誇りました。作品を以て語らせるとはこのことか。いままで抑制していたものが、一気にアツく語られます。最後の最後に至って(ようやく)耳をつんざくような鋭い金管の炸裂有。ミュンヘン・フィルが上手いオーケストラかどうかは微妙なところだけれど、ケンペとの相性良く、こんな記録が残されたことを喜びましょう。(正直なところ、Beeやん交響曲CD一枚分聴き通すのは少々ツラかった)

(2011年7月15日)

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written by wabisuke hayashi