Beethoven ピアノ協奏曲第4番(マリア・ユーディナ)
交響曲第2番(クルト・ザンデルリンク/レニングラード・フィル)


HND  HDN C 0028
Beethoven

ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58(1948年録音)

マリア・ユーディナ(p)

交響曲第2番ニ長調 作品36(1952/3年録音)

クルト・ザンデルリンク/レニングラード・フィルハーモニー

HND HDN C 0028 6枚組2,890円にて購入したウチの一枚

 嗚呼Beeやんと縁を切って何ヶ月になるのだろうか。それでもセットものを購入すると付いて回るのは、古今東西名曲との誉れも高い彼の作品群故(ゆえ)〜聴かざるを得ない。放置することは「音楽愛好家」としての基本スタンスの放棄を意味する・・・な〜んちゃって、たまにはね、まじめに聴きましょ。

 マリア・ユーディナ(1899-1977)はソヴィエットの女流ピアニストで、知名度はともかく一部に熱狂的なファンが存在します。第4番には押しつけがましさは薄くて、ま、「皇帝」辺りに比べるとずっと好きな作品ですよ。冒頭、シンプルで静かな音型から、しっかり”芯”を感じさせるピアノ、若き(36歳)ザンデルリンクのバックはリキが入って、要所要所のアクセントが明快。

 非常に明快で、ひとつひとつの音を大切にしていますね。大きなリズム感、ゆったりとした”揺れ”も自由自在。恣意的な変化ワザではなく、音楽の流れはこうあるべし、といった確信がまったく自然体。暖かくてコクがあって、聴き進むにつれてカラダが暖まってくるようなノリと輝きがあります。あくまで落ち着いて、急かない。

 時としてテンポも音量も落として、そっと歌うところのやさしさ。断固として推進力を上げていくところでも、リキみは存在しない。第1楽章カデンツァの奔放な華やかさは(これは誰の作でしょうか)輝かしい喜びを感じました。第二楽章では、音量が小さくても明快に主張される旋律、途方に暮れような寂しさが表現されます。

 終楽章。ワタシはいつも「春の目覚め」を感じます。ユーディナはかなり自在にリズムを変えているが、これはこの迸るような生命の躍動を生かすための表現です。キレのある硬質な音色を駆使しながら、表現が重くならない。まるで「硬派のMozart 」のようなテイストがあります。強靱な音楽だけれど、緊張と緩和が自由自在で、結果として強面一方にならなくて、これほど楽しいBeethoven も珍しい・・・・


 さて、交響曲第2番はザンデルリンク既に40歳。かなり以前にフィルハーモニア管との全集を聴いていて、ああ、いずれちゃんと書き直さないと・・・と思いつつ、苦手Beeやんの全集でしょ?避けて通っておりました。先の協奏曲伴奏もそうだけど、旧ソヴィエットの録音って硬質でしょ?そもそもオーケストラの響きも硬質っぽいけど。ま、こちらはややマシでした。

 ああ、この第1楽章の推進力〜壮年の覇気(指揮者でいえば若手)を感じさせますね。ノリノリで鈍重さの欠片もない。ハラにも響く重量感タップリだけれど、馬力あるクルマ(トラック?)がスピードを上げていくような快感有。オーケストラが上手いね。まさにムラヴィンスキー時代の絞り上げたアンサンブルは一糸乱れない。

 以前にも書いた記憶があるが、ワタシ全9曲のウチ、この曲が一番好きです。その中でも第2楽章こそっ!隠れ名旋律。こういった楽章はもっとすっきりとした音質で聴きたいものだけれど、それでもフィルハーモニア盤に比べりゃ、音にずっとコシがある。丁寧なる仕上げは、やや曖昧なる音質を越えて説得力がちゃんとあります。

 スケルツォの重量感には快感を感じますね。リズムがずしりとして、おおぶりな躍動感有。早くも往年の貫禄の萌芽が!終楽章も推進力に不足はないが、急がない、あわてない、しっかりとした大人の音楽が楽しめましたよ。レニングラード・フィルが一流のオーケストラだし、各パートも腕が立つんだろうけど、全体のアンサンブルの中でそれが目立たない〜セル/クリーヴランド管と一脈通じるように思えました。(2003年11月21日)


掲示板にご意見有。

● K 題名:ユーディナ、ピアノ協奏曲第4番について 投稿日 : 2003年11月27日

ソヴィエットイヤーズの中では、一番興味があった演奏です。ユーディナのスペルがJudinaだったので、最初はわからなかった。知っているのはYoudinaなので。
録音のせいなのなのかわからないのだけれど、ものすごく下手に聞こえました。音の出にくいピアノで、一所懸命に音を出そうとしている。(先に聞いたナイもこんな感じの音だった。ベーゼンドルファーらしい)
オーケストラのほうはといえば、ひなびた音で、しどろもどろになる場面さえある。しかも音の出が貧弱。テンポも終始振れまくっていて、推進力には程遠い。ルバートがかかっているようにも聞こえて、古めかしいスタイルに聞こえなくも無い。レニングラードって、大戦で街がぐちゃぐちゃにされてのね。録音された48年では、どの程度の状況だったのだろう?
私としては珍しく何度も聞き返しましたね。名演としてではなく、奇演としてね。

● Res:林 侘助。 題名:主に録音の問題ですね。オーディオの相性かも 投稿日 : 2003年11月27日

ユーディナのテンポは揺れ、独特のタメもありますね。音色は暖かくて、芯も感じさせて非常に好ましい。技術的にはまったく問題なし。流れるような歌もアツさもある。サイトの本文では触れていないが、この伴奏でのレニングラード・フィルはやや粗いですか?

でもこの程度の伴奏はいくらでもありまっせ。練習不足か、ユーディナのテンポの揺れに追いつかないのか・・・というところでしょう。むしろザンデルリンクの若さ、だと思います。


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written by wabisuke hayashi