往年の名演奏家によるバロック名曲集


FIC  ANC-180 Albinoni 
オーボエ協奏曲第2番ニ短調 作品9-2(1967年)
ホリガー(ob)
アダージョ ト短調(ジャゾット編1960年録音)
イ・ムジチ合奏団

Pachelbel
カノン(1960年録音)
ミュンヒンガー/シュトゥットガルト室内管弦楽団

Bach
ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ニ短調 BWV1060a(1962年録音)
ヴィンシャーマン(ob、指揮)/G.F.ヘンデル(v)/ドイツ・バッハ・ゾリスデン

Handel
オルガン協奏曲ロ長調 作品7-1(1959年)
チャドウィック(or)/バルビローリ/ハレ管弦楽団

FIC ANC-180 (3枚なら2,000円!セールで購入したウチの一枚)

 2004年再聴。順にPHILIPS、英DECCA、CANTATE、英PYEの音源を寄せ集めた無定見なる一枚。購入して既に10年、いまだにこんな海賊コピー盤をありがたがって聴いちゃって・・・と叱られそうだけど、例えばヴィンシャーマン自らソロを取ったBach は現役CDで手に入りましたっけ?バルビローリのHandel だって同様(〜探せばあるのかも?)だと思うし。ま、珍しさで音楽は聴くもんじゃないが。(言い訳ばかりで申し訳ない)

 1970年頃、イ・ムジチの「四季」は永遠のベストセラーだったし、来日する室内オーケストラはかならずこの作品を演奏したものです。もっとも充実していた、と評価されるリーダー・フェリックス・アーヨ時代の録音は二曲収録されました。天才ホリガー28歳の時の録音。作品9-2ニ短調協奏曲は、日本人好みというか、ウェットでもの悲しい旋律がココロ擽る名曲なんです。正直、(下の方にも書いてあるが)ワタシはシャンボンとか、ピエルロ〜フランス系の明るいオーボエに慣れているせいか、彼の音色は少々地味かな?なんて思いましたが。

 「アダージョ」の浪漫的な味わいはピカいちで文句ありません。歯切れ良く、充実したアンサンブル・・・ところで、ここでの演奏時間は「6:59」なんですが、1982年録音(カルミレッリ時代。PHILIPS 420 816-2)では「9:16」というのはどういうこと?別に版が違うとかいうことじゃなく、テンポゆっくり、深刻切実な味わいが深まった、ということでした。

 イタリアの次はドイツの団体だけれど、ミュンヒンガーはドイツ系バロック演奏の旗手として、1960年代が全盛期だったでしょうか。この立派さ、頑迷なリズムの重さは、現代ではむしろ新鮮に聞こえます。神妙真面目荘厳雄弁なるスタイルも悪くないがイ・ムジチとはエラい違いでして、その相違を楽しむべき配慮ある選曲でしょうか。

 このCDの白眉はBach ですよ。イタリア風明るさ方面ではもちろんないが、ミュンヒンガー方面でもありません。あくまでテンポには余裕があり、柔和なアンサンブル、しっとり瑞々しいオーボエ・ソロに魅了されます。自然体で贅肉がない、しかし豊かな歌に満ち溢れます。ヴァイオリニストは、ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデルというとんでもない名前だけれど、往年の名人でしたね。ヴィンシャーマンは1970年代にこの作品を再録音するが、ソロは弟子のゴリツキに譲っております。

 こうして「有名バロック作品寄せ集め」を順繰り聴いていくと、Bach の魅力は格別というか、桁違いと感じますね。いえいえ、他の作品だって個性豊かで充分美しい。でも、Bach が始まるとず〜んと感動が加速しちゃう、ということです。わずか14分の歓喜のひとときを保証します。最終楽章の切迫する旋律に泣けます。録音極上。

 バルビローリのHandel 、というのも珍しいですね。かなり音源が残っているんでしょうか。音質良好。大きな編成の豊満な演奏です。ところでこの第1楽章(変奏曲)に馴染み有。どうして?しばらく考え、「!」とひらめき。クラヴィア組曲第1巻・第7組曲の「パッサカリア」とソックリなんじゃない。合奏協奏曲作品3にも似ているよね。バックは繊細で、次々表情を変えていくところは圧巻でした。

 ワタシはバロック音楽が大好きです。(2004年8月28日)


 これだけ演奏家、音源とも多様なバロック集も珍しいでしょう。メールをいろいろいただいているウチに、思い出して久々に取り出しました。バッハの話題だったんですけどね。

 アルビノーニの協奏曲は、LP時代パイヤール/シャンボンの演奏で楽しんでいたはず。(エラート1000シリーズだったかな?)もの悲しくも、やるせない旋律が胸を打ちます。イタリア・バロックは、ヴィヴァルディを先頭に膨大な名曲があって、もちろんそう多くは聴いてはいないながら、一番のワタシのお気に入り。名手ホリガーのオーボエは、意外と地味な音色でしっかりとしたもの。イ・ムジチの歯切れの良さはいつも通り。

 「アダージョ」+「カノン」は、昔からなぜかいつもセットになっていて、演奏を担当しているのは往年の名団体。アルビノーニの「アダージョ」は、映画音楽で有名になったそうですが、ワタシは見たことはありません。(審判?)深刻でロマンティックな旋律は、どう考えてもバロックとは思えない甘さ。イ・ムジチのアンサンブルの充実ぶりは現代に通用します。

 「カノン」は本当のバロック音楽のはずで、古楽器による新しい録音も存在します。(+「ジーグ」も欲しかったところ)山下達郎の名曲「クリマスマス・イヴ」には、この曲を上手く使っていますよね。ミュンヒンガーは懐かしい名前だけど、生真面目すぎて、お堅くて、アンサンブルに楽しさがない。

 バッハは、この曲の極め付きと云われたもの。古楽器全盛期の今でさえ「ベスト云々」では常にトップを争う往年の名演奏。まず、曲そのものが感動的で、2台のチェンバロやピアノ、ヴァイオリンによる演奏でも楽しめますが、オーボエとヴァイオリンという音色の異なるソロの絡み合いは筆舌に尽くしがたい魅力。

 アンサンブルに力みがなくて、軽快。ヴィンシャーマン自身による、ちょっと甘やかな音色のオーボエと、ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデル(凄い名前!)のヴァオイリンとの息のあった協演が楽しい。そう、ヴィンシャーマンのバロックって、いつも楽しくって、生き生きしていて、こんなに旧い録音なのに、いま聴いてもとても新鮮。
(ヴィンシャーマンはこの曲を後に再録音していて〜LASERLIGHT 14 133〜1980年前後の録音?よりいっそう軽快でモダーン、速いテンポですっきりとした演奏に仕上がっていますが、オーボエはゴリツキに譲ってしまって残念)

 ラストはヘンデルですが、バルビローリによるこの録音の存在は知らなかったなぁ。おそらく旧PYE録音と想像されますが、1950年代の後半の膨大な録音の一部でしょう。音質的にはまったく問題なし。豪華で壮麗な響きになっていて、ヘンデルにはこんなスケールも悪くありません。彼特有の細かな表情付けも美しい。ロスウェルとのイタリア・バロック協奏曲の録音もあったし、バルビローリはバロック音楽にも精通していたのかも。
 チャドウィックさんという名前も知らないし、もしかしてこの録音、正規CD復刻されていないんじゃないの?(あったら教えてください)


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written by wabisuke hayashi